難治性不整脈診療 エキスパートのアプローチ

  • ページ数 : 332頁
  • 書籍発行日 : 2016年3月
  • 電子版発売日 : 2016年11月11日
¥12,100(税込)
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商品情報

内容

本書の99%は、エキスパートたちの汗と努力の結晶でできています。

難治性不整脈における「診療の考え方と実際」をエキスパートが己の知識と経験に基づき実践的に解説。 「自分で考え」「自分で解決する」力が身に付きます。

序文

私たちの世代が臨床心臓電気生理を勉強し始めた1990年ごろは,日本語で書かれた教科書は少数しかなかった上,Josephson 先生の教科書も第1版が絶版となっている時期であった.筆者は,推薦の辞をいただいた相澤義房先生に貴重な原書第1版をお借りして,全ページコピーしてハードカバーの製本を施し,薄暗いCCUのモニターの前でむさぼるように読んだころのことを今でも時々思い出す.アブレーションのエネルギーが直流通電から高周波通電に移行する時期で,まだ保険承認が得られていないこともあって国内でも少数の施設が取り組みを始めたいわゆる黎明期であった.

治療手段,特に非薬物的な治療が導入されるとその分野は大いに活気づいて,多くのやる気にあふれた若い医師が集まってくる.頻脈性不整脈治療のカテーテルアブレーションが保険承認されてから20年余りが経過した.心房細動症例でのアブレーション治療が行われるようになったこの10年での賑わいは以前には想像できなかったほどである.多くの医師が多くの患者さんに治療を行い,生活の質の向上につながる結果となっている.それに合わせて様々な切り口,範囲での教科書や解説本がたくさん出版されている.また医学雑誌には不整脈分野での新しい方法や発見に関する論文が毎号のように掲載されている.

情報過多になりかねないこの時代に我々は本書『難治性不整脈診療 エキスパートのアプローチ』を出版する機会に恵まれた.本書はいくつもの特徴を備えており,必ずや何らかの有益な情報や考え方を得ることができると思う.その特徴をいくつか挙げたい.まず関西で毎年2回開催されている"臨床難治性不整脈研究会"の世話人,一般演題・特別講演発表者が執筆している点が大きな特徴である.本会は数題の一般演題の発表と討論に続いて,最新の研究についての特別講演を拝聴するというものである.毎回活発な討論がなされ,スライドにされて止まっているはずの心内心電図が動いているかのような活気あふれた会となっており,その臨場感が紙面から感じ取ってもらえるのではないかと思う.紹介されている症例は,巻末に提示した全発表リストの中から厳選されたものであり,いわゆるリアルワールドの症例である.また様々な"困る状況"を解説した部分も通り一遍の解説にとどまらず,各執筆者の経験に基づく確固たるメッセージが散りばめられている.またトピックとして,今後発展が期待される事柄について最前線の研究者に最新情報を提供していただいた.これも読み通す際の一服の清涼剤となるとともに新たな研究へのヒントとなるだろう.本書は関西での研究会が基盤となったと書いた.地域にこだわる必要はないかもしれないが,どんな分野でも首都東京が情報発信源となることが多いのが実情である.大阪,関西が政治的副都心となれるかどうかはわからないが,不整脈領域では少なくとも副都心でありたいと思う.

今後も医学,不整脈領域の新たな知見,従来の見解を変えるような研究が行われるであろうし,そうあらねばならない.本書に記載されていることも例外ではなく,書き換えられる事柄もあるだろう.そのような制限があったとしても,実際に悩み,懸命に治療してきた難治性不整脈へのアプローチから普遍的ななんらかのメッセージを掴み取っていただければ,執筆者・編者としてこの上ない幸せである.


2016年 2月

執筆者を代表して
臨床難治性不整脈研究会代表世話人
奥山 裕司


追記: 幸いなことに臨床難治性不整脈研究会は,日本不整脈心電学会認定不整 脈専門医の資格更新に使用できる更新単位が得られる研究会として公認された.
研究会に興味を持たれた方は,日本不整脈心電学会ホームページに掲載される開 催情報をご確認いただき,ぜひ熱い議論に加わっていただければと思う.

目次

Ch. 1心房細動:リズムコントロール,レートコントロール

1心房細動の成因・機序

心房細動の発症機序:基本は心房の老化現象

心房細動と高血圧の疫学研究

いわゆる"upstream治療"と真の"upstream治療"

そのほかの危険因子への介入

2心房細動をどうとらえるか?─落とし穴に陥ってはならない─

心房細動は最もありふれた不整脈ではあるが...

心房細動は生命を脅かす危険な不整脈ではあるが...

3レートコントロールの方法と効果

レートコントロールにおける薬物療法

レートコントロールにおける非薬物療法

4リズムコントロール(薬物)の方法と効果

心房細動に対するリズムコントロールとレートコントロール

レートコントロール治療の問題点

リズムコントロールの薬物治療

アミオダロン投与時の注意点

Topic 1心房特異的抗不整脈薬への期待

5 心房細動アブレーションの問題点(目的,評価法,結果の整合性など)

心房細動患者でのカテーテルアブレーションの目的

心房細動の根治とは?

Holter心電図でどれくらいの心房細動が捉えられるか?

アブレーション後の再発について─評価法による違い─

WPW症候群が根治するのだからAFも根治する?

心房細動患者で"心電図を治療する"意味があるのか?

6持続性,長期持続性心房細動への挑戦(beyond PVIを含めて)

AFアブレーションの成績が不良な持続性AF患者像

beyond PVIの各論

7CKDおよび透析患者の心房細動

CKDとAFの関係

レートコントロール

リズムコントロール

アブレーションに関して

8心筋症合併症例(HCM,DCMなど)

拡張型心筋症

肥大型心筋症

催不整脈性右室心筋症

心サルコイドーシス

線維性心房性心筋症

抗凝固療法について

9 再発を繰り返す症例への適応と戦略(薬物併用などの工夫を含めて)

再発の頻度

再発のリスクファクター

再発の機序

再発症例への対応

症例

10遠隔期ATの問題

アブレーション術後ATの分類

術後ATの診断

マクロリエントリー性AT

巣状興奮性AT

マイクロリエントリー性AT

11心不全(左心機能低下)合併例

発生率と有病率

急性期管理

慢性期管理

リズムコントロール vs レートコントロール

12高齢者

高齢者の心房細動

高齢者における心房細動の臨床的特徴,合併疾患およびその予後

高齢者心房細動におけるレートコントロールとリズムコントロール

高齢者におけるカテーテルアブレーション

13植え込みデバイスによるモニタリングのAF診断・治療への影響・効果

植え込みデバイスによるAFの検出

"AF"持続時間と血栓塞栓症

Topic 2心房細動抑制におけるペーシングの意義

14心房細動の外科治療

MAZE手術開発の歴史

1990年代の数々の改良手術

2000年以降の各種デバイスの開発と手術の低侵襲化など

心房細動手術の成績

左心耳閉鎖手術

Topic 3腎動脈内アブレーションと不整脈

Ch. 2心房細動:抗凝固療法

1心原性塞栓予防におけるワルファリンを総括する

ワルファリンの作用機序と"過凝固状態"の問題

ワルファリン治療の質と心原性塞栓予防

臨床的有益性(net clinical benefit)について

ワルファリンによる脳卒中予防

ワルファリン治療中の出血性合併症

出血合併症の対処法

手術時などの対処法,内視鏡検査などに関連して

現段階でNOACよりもワルファリンが選択される状況

2新規経口抗凝固薬概説

新規抗凝固薬の特徴と大規模試験の評価ポイント

直接トロンビン阻害薬:ダビガトラン

第Xa因子阻害薬?:リバーロキサバン

第Xa因子阻害薬?:アピキサバン

第Xa因子阻害薬?:エドキサバン

3高齢者における抗凝固療法

ワルファリン治療におけるnet clinical benefitと年齢

新規抗凝固薬の特徴とnet clinical benefit

高齢者での抗凝固療法の使い分け

4腎機能障害合併時の抗凝固療法

CKD患者での抗凝固療法

透析患者における抗凝固療法

5抗血小板薬併用時の抗凝固薬

心房細動と動脈硬化性疾患の合併

心房細動患者でPCIの適応を考える場合

PCI後の患者で抗凝固療法を開始する場合

6抗凝固療法の将来展望

新規機序の抗凝固薬

左心耳への介入

Ch. 3上室性頻拍:AP, AVNRT, SANRT, inappropriate sinus tachycardiaなど

1副伝導路:焼灼困難あるいはセッション内再発を繰り返す場合

WPW症候群(Kent束)に対するカテーテルアブレーション

Mahaim線維束に対するカテーテルアブレーション

Case 1診断・治療の難渋したlong RP'頻拍の一例

2 房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)─アブレーション困難例─

房室結節の解剖

AVNRTの診断

slow pathwayのバリエーション

稀有型AVNRT

slow-slow AVNRTの診断

洞調律時I度房室ブロックを合併したAVNRTのアブレーション

頻拍が誘発されない場合

Case 2洞調律時に著明なPQ延長を伴う房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)に対しCARTO

systemを用いたablationにより房室ブロックを回避して根治しえた一例

3心臓術後の心房頻拍治療

開心術後心房頻拍の特徴

薬物治療

カテーテルアブレーション

Case 3心臓移植後に徐脈および頻脈発作を認め,治療を必要とした1例

4非通常型AFL

心房粗動の術前評価

アブレーションを行う前に知っておくこと

activation mappingの作成とablationにおけるtips and tricks

症例

Ch. 4心室頻拍,心室細動,VPCなどに対するアブレーション,外科手術

1心外膜アプローチによるアブレーション

心外膜アプローチの実態と適応

外膜アプローチの方法

外膜アブレーションの実際

Case 4心外膜アブレーションにて救命できた右室心室頻拍ストームの一例

Case 5心サルコイドーシスに合併した左室乳頭筋起源心室頻拍に対して,カテーテル

アブレーションを施行した一例

2心室頻拍の外科治療(開胸手術)

VT手術の歴史的変遷

適応

マッピングとアブレーション機器

手術のエンドポイントと術後不整脈管理

合併症

長期成績

今後の展望

Topic 4難治性不整脈治療のイノベーション実現に向けたin silico arrhythmology

3心室性頻脈性不整脈の診断・治療

心室性期外収縮,心室頻拍の分類

心室性期外収縮,心室頻拍を有する患者での検査

器質的心疾患を認めない場合の心室性期外収縮・非持続性心室頻拍

器質的心疾患を有する場合の心室性期外収縮・非持続性心室頻拍

心室性期外収縮および心室頻拍に対する薬物療法および非薬物療法

心室性不整脈に対するカテーテルアブレーション治療

Topic 5iPS細胞研究の不整脈領域における展望

Case 6左右心房中隔,大動脈弁無冠尖・右冠尖,および左室流出路からアプローチを

試みるも根治しえなかった内臓逆位(右胸心)に合併したHis束近傍心房頻拍の一例

Ch. 5心室頻拍,心室細動に対するICD治療(特にストーム)

1 ICDの適応:現状のエビデンスでは明確になっていない点,今後の適応の問題について

ICDの適応─二次予防─

ICDの適応─一次予防─

Brugada症候群に対する適応

wearable cardioverter defibrillator(着用型自動除細動器;WCD)

Topic 6 ICDの適応となる患者の自動車運転について

2ストーム症例への総合的治療戦略

ストームの定義

ストームの臨床的意義

ストームの治療

Case 7合併する心室性不整脈に対照的な反応がステロイド投与急性期に観察された心臓サルコイドーシスの2例

Case 8アミロイドーシスに合併した致死的不整脈

3植え込み型除細動器の突然死予防効果と諸問題

植え込み型除細動器の突然死予防効果

海外のデータでも未だ不足しているエビデンスがあること

ICDショックは予後を悪化させるのか?

ICDショック後の評価と対策

Case 9CRT-D植え込み時high DFTを呈した拡張型心筋症の一例

Ch. 6心不全に対するデバイス治療

1心不全に対するCRTの適応

CRTのメカニズムから適応を考える

主な無作為化比較対照試験におけるCRTの患者選択の変遷と問題点

今後の新たなCRT適応拡大または現在のCRT適応の縮小の可能性について

2 植え込み時の技術的問題(リード誘導,感染も含め),ペーシング閾値高値の場合への対処

血腫

感染

横隔膜刺激

左室リード挿入

左室ペーシング部位

左室ペーシング閾値上昇

左室リード位置移動(dislodgement)

左室リード抜去

3デバイス設定の最適化について

心エコー図によるAV・VV delayの設定

4心臓再同期療法はどれほどの効果があるのか?未解決の問題を含めて

CRT(特にペーシングのみ)の効果

洞調律・左脚ブロックパタンの低心機能・重症心不全症例以外で効果が期待できるか?

あくまで修正できるのは電気的な問題だけ

CRTにまつわるその他の問題点


付録:臨床難治性不整脈研究会,一般演題症例リスト・特別講演演題リスト

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書籍情報

  • ISBN:9784498136403
  • ページ数:332頁
  • 書籍発行日:2016年3月
  • 電子版発売日:2016年11月11日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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特記事項

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