実践 高次脳機能障害のみかた

  • ページ数 : 264頁
  • 書籍発行日 : 2019年11月
  • 電子版発売日 : 2019年12月4日
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商品情報

内容

本質をつかんでベッドサイドで評価
特殊なトレーニングや検査キットがなくてもここまでできる。

高次脳機能障害に出会ったら,どう評価し対応したらいいのか.難解と思われがちな領域を,その本質から理解できるよう,各エキスパートがやさしく丁寧に解説した.特殊なトレーニングや検査キッドがなくても評価ができるように,各章の冒頭にベッドサイドで把握できる評価法を紹介し,その一部は付録のonline materialとして収載.必要以上にかまえることなく,気軽に実践的な知識と技術を学べる新しいテキストである.

序文

本書はとかく難しいと思われがちな神経心理学や高次脳機能障害学と呼ばれる領域について,さまざまな症候のイメージをつかみ,その本質を理解していただくことを目指した.背景にある歴史的・理論的な枠組みについても限られたスペースの中で理解してもらえるように配慮した.対象とする読者としては神経心理学に興味のある初学者,実際に高次脳機能障害の診療をする機会がある一般臨床医などを想定して編集されている.

各章の冒頭にはベッドサイドで試してみる評価法と,言語療法士に依頼して検査室で評価してもらう検査がまとめてある.その一部は簡易検査法としてダウンロードしてすぐに使えるようonline materialとして収載している.これはあくまで簡易版だが,評価法がよくわからないという方にとって臨床場面での一助となれば幸いである.各章の本文には実際の症例が呈示されていて検査方法が解説されている.また,百聞は一見に如かずというが失語や発語失行の症例の音声データや失行の動画などをonline materialに収載している.本文の症例呈示と合わせてご覧いただければ具体的なイメージがつかめるだろう.

高次脳機能は失語,失行,失認など,認知ドメインと呼ばれる要素に分解できる.その中には階層的な関係をもつドメインもあれば並列的な関係のドメインもある.興味のある章から開いてみていただいてよいのだが,高次脳機能の全体を俯瞰して大局的な理解とアプローチをするために初学者の方にはまず第1章「認知機能の診察と所見の解釈」を読んでいただくことをお勧めする.そのうえで第2章から第15章をお好きな順番に読んでいただくと,さまざまな部位の脳損傷で出現する多彩かつ不思議な臨床症候に巡り合い,学ぶことができるだろう.

本書の執筆にご協力いただいたのは高次脳機能障害の臨床の第一線で活躍している専門家で,特に脂の乗った旬の年代の方々に執筆をお願いした.近年,神経心理学の教科書は多く出版されているが,本書は「教科書的」な記載にとどまらず,血気盛んな著者達の意気込みと思い入れが記述の隙間に垣間見られるのを感じていただけるのではないかと思う.神経心理学は生きた学問であり,症例との出会いとインスピレーションによって創造されていくべき学問だと思う.本書で「最近の研究」を取り上げたのは,伝統から学びながら力強く学問を進歩させるために,各章の著者の興味を読者に伝え,未来志向の神経心理学をイメージしていただくことを意図している.本書をきっかけに一人でも多くの読者がこの分野に興味を持っていただければ望外の喜びである.

本書は多くの方々の支えで完成した.中外医学社の鈴木真美子氏と小川孝志氏には企画から発刊まで辛抱強く励ましご尽力いただいた.二村美也子氏には言語療法士の立場から日常臨床の他に本書についても何かと相談にのって頂いた.宇川義一名誉教授には臨床,研究の両面からご指導いただいた.この場を借りて厚くお礼申し上げます.本書は企画の段階で西尾慶之氏と東山雄一氏から多くの助言を頂き,その後も担当章の執筆に加えて多くの原稿をみて頂いた.両氏の友情と熱意に深く感謝する.


2019年10月

小林 俊輔

目次

Chapter 1 認知機能の診察と所見の解釈

1.はじめに:認知機能の評価を日常診療のルーチンに加える

2.認知ドメイン(cognitive domains)

3.認知ドメイン間の依存関係と症状―病巣対応

A.言語と視覚認知の関係

B.記憶と他の認知ドメインの関係

C.遂行機能

D.病変−脳部位対応のよい言語症状と悪い言語症状

E.視覚認知の障害:whatの障害とwhereの障害

F.注意

4.認知機能評価の実際:救急室における評価と一般外来/病棟における評価

Chapter 2 失語症

1.はじめに

2.言語の成り立ちについて

3.失語症とは何か

4.現在のBroca失語,Wernicke失語,伝導失語

5.概念にまつわる障害

6.症候の実際

7.診察の仕方

8.病巣の記述

Chapter 3 失読・失書

1.はじめに

2.読み書き障害の神経学的分類

A.非失語性・孤発性の失読/失書

B.失語性失読/失書

C.その他の高次脳機能障害による二次的な読み書き障害

3.読み書きの認知神経心理学的分類

A.表層失読/失書

B.音韻失読/失書

C.深層失読/失書

4.日本語の読み書きモデル

5.検査方法

6.最近の研究

Chapter 4 発語失行

1.はじめに

2.AOSの概念,症候学の特徴

3.AOSを起こす疾患,病巣対応

4.症候の実際

5.検査方法

6.最近の研究

Chapter 5 失行とその周辺症候

1.はじめに

2.症候の概念,分類,症候を起こす疾患,病巣対応

A.症候の概念

B.症候の分類

C.症候を起こす疾患

D.症候の病巣対応

3.症候の実際

4.検査方法

5.最近の研究

Chapter 6 聴覚性失認

1.はじめに

2.どのようなときに疑うか

3.両側の側頭葉に脳梗塞を発症し純粋語聾となった症例

4.聴覚性失認の検査の進め方

A.純音聴力検査と語音聴力検査

B.失語症検査

C.環境音認知検査

D.失音楽症の検査

5.聴覚性失認の分類

6.聴覚性失認の特徴

A.皮質聾

B.純粋語聾・言語性聴覚性失認

C.環境音失認・環境音認知障害

D.感覚性失音楽症

7.電気生理学・画像的検査

Chapter 7 構成障害

1.はじめに

2.症候の概念,分類,症候を起こす疾患,病巣対応

A.構成障害の概念

B.構成障害の病巣と疾患

3.検査方法

A.手指行為の模倣

B.単純な図形模写

C.複雑な図形模写

D.視覚認知の全般的な評価

E.組み立て課題

4.症候の実際

5.最近の研究

6.おわりに

Chapter 8 視覚性失認,カテゴリー特異的失認

1.はじめに

2.視覚情報処理の神経生理学

3.視覚性失認

A.統覚型(知覚型)視覚性失認

B.連合型視覚性失認

C.統合型視覚失認

D.カテゴリー特異的視覚性失認

4.視覚対象認知の評価

A.主訴,病歴の聴取

B.診察

C.検査

5.症候の実際

Chapter 9 半側空間無視

1.はじめに

2.症状の概念,分類,症状を起こす疾患,病巣対応

A.症状の概念

B.症状の分類

C.症状を起こす疾患

D.病巣対応

E.鑑別症状

3.症候の実際

4.検査方法

A.ベッドサイドでの評価

B.机上検査

C.ADL評価

5.最近の研究

A.パソコンを用いた検査方法

B.線維連絡に基づいた病巣分析

Chapter 10 地誌的失見当

1.江戸一目図

2.地誌的失見当

3.地誌的失見当にかかわる脳部位

4.楔前部と後部帯状回

5.評価方法

6.症候の実際

7.まとめと今後の展望

Chapter 11 病態失認

1.はじめに

2.症候の概念

3.片麻痺に対する病態失認

4.盲・聾に対する病態失認(Anton症候群)

5.失語に対する病態失認

6.認知症における病態失認

7.病態失認の病態

A.全般性認知機能障害説

B.感覚入力遮断説

C.注意障害説

D.運動企図仮説

8.検査方法

9.最近の研究

Chapter 12 記憶障害

1.はじめに

2.記憶・記憶障害の分類

A.保持時間の長さによる記憶の分類:短期記憶と長期記憶

B.記憶の内容による長期記憶の下位分類

C.時期によるエピソード記憶障害の分類

3.エピソード記憶の検査方法

A.記憶を評価する際の注意点

B.簡易評価

C.精査用記憶バッテリー

4.エピソード記憶障害の神経基盤と関連病態

A.海馬およびその周囲の内側側頭葉構造

B.間脳

C.前脳基底部

D.脳梁膨大部後域

5.その他の記憶障害

A.Alzheimer病における記憶障害

B.側頭葉てんかんにおける記憶障害

C.解離性健忘

D.作話

6.症候の実際

7.最近の研究

A.エピソード記憶の情報処理における海馬内の機能的差異

B.場所細胞(place cells)と格子細胞(grid cells)

Chapter 13 認知症

1.はじめに

2.症候の概念,分類

A.症候の概念

B.認知症の分類

3.検査方法

A.問診

B.スクリーニング検査

4.症候の実際

A.記憶障害が目立つ認知症

B.注意・遂行機能の障害が目立つ認知症

C.幻視が目立つ認知症

D.言語の障害が目立つ認知症

E.行動障害が目立つ認知症

5.最近の研究

Chapter 14 脳梁離断症候群

1.はじめに

2.症状の概念,分類,病巣対応,症状を起こす疾患

A.症状の概念

B.症状の分類と病巣対応

C.症状を起こす疾患

3.症候の実際

4.最近の研究

5.おわりに

Chapter 15 前頭葉症候群

1.両側前頭前野損傷例の特徴

2.症候の概念,病巣対応,症候を起こす疾患

A.前頭葉は行為・行動に関わる

B.背外側部,内側部,眼窩部にそれぞれの機能がある

C.症候を起こす疾患

3.症候の実際

A.背外側部損傷

B.内側部損傷

C.前頭葉眼窩部

4.検査

A.遂行機能障害症候群の行動評価(BADS)

B.ウィスコンシンカード分類検査

C.Frontal Assessment Battery(FAB)

D.Trail Making Test

E.Stroop Test

F.流暢性課題

5.最近の研究

Chapter 16 神経疾患に関連する情動障害および行動異常

1.はじめに

2.症候の概念と分類

3.症候を起こす疾患,病巣対応

4.症候の実際

5.情動障害・行動異常の検査法

6.最近の研究


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書籍情報

  • ISBN:9784498328440
  • ページ数:264頁
  • 書籍発行日:2019年11月
  • 電子版発売日:2019年12月4日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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