初期臨床研修指導の実践ガイド

  • ページ数 : 157頁
  • 書籍発行日 : 2006年1月
  • 電子版発売日 : 2014年5月2日
¥4,180(税込)
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商品情報

内容

指導医がしっかりしなければ、日本の医療に未来はない!

臨床研修の礎を築き、良医の育成に情熱を注ぐ「宮城征四郎先生」待望の書き下ろし!沖縄県立中部病院・群星沖縄を人気・実力ともに日本が誇るトップ臨床研修指定病院に育て上げた著者が、良医育成のノウハウを初めて語ります。指導医、後輩をもつ先輩医師必見!

序文

平成17年10月27日,恒例の日本医師臨床研修マッチングプログラム結果が発表された.医師臨床研修マッチング協議会による事業としては平成17年が3回目に当たる.そこで際立ったことは大学と学外臨床研修指定病院へのマッチ者数が,遂に逆転(48.3% vs 51.7%)したことである.初期臨床研修必修化が導入される以前には学内,学外の比率が73% vs 27%であったことを思えば,医学生による臨床研修病院選択の方向性が大きく変革してきたことを意味する.

翻って地域別のマッチ者数や定員に対するマッチ率を比較すると,当然のことながら,東京を中心とする大都会優位の中にあって,沖縄県だけが地方都市としては唯一,大健闘を果たしている.すなわち,県単位比較によれば,同年のマッチ数は沖縄県は145人と全国13位に位置し,マッチ率では92.4%(145人/157人)を誇り,2位の東京の88.4%を大きく引き離して第1位を占めている.沖縄県立病院群(定員40人),群星沖縄プロジェクト(同61人),琉球大学を中心としたRyu-Micプロジェクト(同57人),各々が好成績を挙げた結果である.沖縄県立中部病院38年に及ぶユニークな米国型臨床研修事業のこれまでの実績が,「臨床研修のメッカ沖縄」と言われるまでに成長した沖縄県内の研修事業の今日の実態を反映していることは論をまたない.

筆者は31年間にわたり在籍した沖縄県立中部病院を辞し,平成15年3月に民間病院主体の臨床研修病院群「群星沖縄」プロジェクトに臨床研修センター長兼リーダーとして招かれた.以来,新規参入の臨床研修事業に携わる楽しい日々を享受している.

ある東京での臨床研修研究会に呼ばれて,「初期臨床研修における指導医の役割」と題する講演をした際,聴衆の中におられたある医療関係出版社の編集者から,講演終了後に声をかけられた.非常に興味深い話で大切な内容が含まれており,できれば今のような内容で本を出版できないかとのお誘いを受けた.大変にありがたいお話であり,かねて,長年の臨床研修医相手の教育指導経験を生かして,まとまった見解を上梓してみたいという考えを抱いていたところでもあった.

早速,お受けして本の企画を相談し,書き下ろし風に原稿を綴って提出したうえで,ご検討をお願いした.制作が急速に進み,遂に陽の目を見たのが本書である.

初期臨床研修必修化を迎え,日本の医療地図は大きく変容している.日本の医学部卒業生の大半が出身大学の医局に入局し,医局講座の中で卒後臨床研修を行うという従来のパターンが,今回の研修必修化により,学外の臨床研修指定病院へと大きくシフトした.新規導入のマッチングを通じて,また,幅広い選択肢の中から研修病院を自由に自ら選択できるシステムが確立し,母校を離れても生活が保障されたうえでの研修がどこでも享受できるようになったことが大きな変革であったと言えよう.

しかし,その陰では学内,学外の研修医の争奪や,大学の医師引き上げによる中小病院の医師不足問題が大きな社会問題に発展するなど,負の波紋を投げかけた事実も無視できない.全国医学部長病院長会議による必修化廃止あるいは見直し要求が早々に厚生労働省に提出されるなど,早くも物議を醸している.結論を出すには,しかし,それでは余りにも短兵急に過ぎよう.アウトカムは5年~10年のタイムスパンで見る必要があろう.

従来,卒後臨床研修を大学側にほぼ全面的に依存してきた学外の病院では,今,新たに臨床研修事業に参入し,多くの研修医を迎えはしたものの,その指導体制作りや指導医の役割に大きな戸惑いを覚えているというのが実情かと思われる. 大学人とて,研究指導には堪能であっても,臨床指導となると雲を掴むような思いで必修化されたカリキュラムの指導に,学外の指導医たちに劣らない程の焦りと戸惑いを経験しているであろうことは想像に難くない.

教育・指導にはどんな分野であれ,まず,情熱が要求される.学内外を問わず,情熱のない指導医には研修医は付いていかない.また,指導医自身が臨床の面白さ,大切さ,奥深さを知らなければ,研修医は楽しく学べない.臨床指導は先ず,臨床の面白さを教えることから始めることが大事なのである.臨床の面白さを知った情熱的な研修医の向こうには,受療者である国民の幸せが見え隠れする.知識や技量の指導はその次である.

すべてを知っていることが良い指導医とは限らない.知らないことははっきりと知らないと言い,研修医とともに悩み,研修医とともに学び合って,日々成長する医師こそ真の指導医である.常に研修医を鼓舞し,士気を削がないように気を配る医師こそ良き指導医である.研修医の成長を妨げず,むしろ支援する.自分の知識と技術を惜しみなくすべて,研修医に分け与える人こそ良き指導医である.

しかし,指導医一人ですべてのことを教えることは不可能であり,したがって,指導体制すなわち良き指導システムの構築が重要である.皆でシステム構築に協力し,研修医本位に指導体制を確立することである.

本書には,そのような指導医のあるべき姿を提言している.また,具体的なシステム作りのノウハウを記したつもりである.何を,どう指導したらよいのか,皆目見当がつかないという指導医や研修委員会のあり方を模索している研修病院の幹部の方々の参考になれば,筆者としては望外の喜びであり,日本の臨床研修指導のあり方に幾ばくかの貢献ができればと願うものである.


平成18年1月

宮城征四郎

目次

概論編

第1章 臨床研修の重要性

1)初期臨床研修必修化の真の目的

総合的臨床教育の不備または欠如

革新的な教育システムが成果を上げにくい理由

臨床研修必修化でプライマリ・ケア能力を培う

2)指導医の心得

研修必修化は患者のため

指導の見返りを求めない

臨床の基礎をstep by stepに指導する

指導医による討論の内容

先手必勝の医療を教育する

指導医の心得

3)研修医の心得

国民のための必修化と認識せよ

global standard medicineを身につける

研修医の心得

第2章 研修医と指導医はどう向き合うか

1)研修医は今,何を求めているか

研修医の望み

指導医に求められるもの

best teacher of the yearに選ばれる方法

2)指導医たちは今,何に戸惑っているのか

論文至上主義と臨床指導

論文至上主義の変化への戸惑い

第3章 研修指導体制をどう構築するか

1)主治医制度の利点と欠点

主治医制度の問題点

当直医のためのoff duty note

屋根瓦方式が構築されない

担当患者数が少ない

責任の所在が明確ではあるが...

2)チーム医療とは何か? その利点と欠点

チーム医療での役割分担

年次ごとの到達目標を設定する

医療過誤防止 vs. 責任の所存の希薄さ

教育システムとしても優れたチーム医療

3)臨床研修におけるチーム医療を阻むもの

他人の介入を受けつけない風土

4)臨床研修プログラムにおける研修委員会のあり方

活発な研修委員会なくして良き教育環境はなし

沖縄県立中部病院研修委員会はいかに運営されているか

群星沖縄の研修委員会はここが違う

群星沖縄における臨床研修委員長会議の実際


実践編

第4章 臨床研修における双方評価

1)指導医による研修医の評価

研修医の評価は姿勢に重点を

適性を欠く研修医

評価の低い研修医をどうするべきか

2)研修医による指導医の評価

指導医の評価対象

批判される指導医とは

指導医のあるべき姿とは

3)研修医の身分と労働環境

研修医は労働者である

米国の研修医の労働環境

4)日本の指導医の労働環境

指導医のマンパワー不足

今こそ改革のとき

第5章 ベッドサイドにおける臨床指導の実際

1)必要な基本的知識と手技の指導の実際(What to teach and How ?)

問診,身体所見,バイタルの読みおよび自覚症状の生理学的解釈法

カルテの記載方法(discharge summaryを含む)

動・静脈血採血法,血液培養法

心電図,動脈血ガス分析(ABG)の読み方

分泌物,尿,痰,便,髄液,体液(胸水,腹水など)のグラム染色,抗酸菌染色,メチレンブルー染色とその解釈

各種ラインの確保

各種単純X線の読影法とできればCTの読影法

胸水穿刺,腹水穿刺,腰椎穿刺,関節腔穿刺,ときに胸膜生検

挿管およびマスク法による人工換気

心肺蘇生法(DC shockを含む)の実施と緊急内視鏡,エコー検査

抗生物質およびその他の薬の薬理作用,使用方法,特に使用ルートと期間の検討

transient pacemakerの挿入

minor surgeryと外科的,整形外科的処置,眼科,耳鼻科的処置

簡単な皮膚科学

その他

【付録】動脈血ガス分析の臨床

2)身体所見の重要性

一般的な身体所見の取り方

呼吸器疾患における身体所見の取り方

呼吸器疾患における胸部身体所見

3)研修医ならびに指導医のメンタルケア

スーパーローテーションによる問題点

研修医のメンタルケアに向けて

指導医にも大きなストレス

第6章 ベッドサイドにおける教育回診の実際

1)患者ケアと研修医に役立つ回診法

教育回診

回診中に挿入するミニレクチャーの実例

2)呼吸器病学における問診

呼吸器病学における問診の臨床的意義

呼吸器疾患特有の病歴聴取

呼吸器疾患に特有な症状

呼吸器症状の詳細と診断学的意義

3)教育回診実録症例


実際編

第7章 日本における臨床指導医の位置付け

1)日本の医療社会における基礎医学研究偏重

医学史上,確かに基礎研究は重要だったが...

臨床医療をないがしろにしてはならない

国民のニーズに応えて臨床医を育てよう

2)指標で表し難い臨床指導評価

インパクトファクターで評価される基礎研究

評価指標のない臨床教育

3)日本人の肩書き偏重,出世主義

国の資格や肩書きは国際社会では通用しない

肩書きではない本当のプロ

医師にとって最良の資格・肩書きは患者からの高い評価

第8章 沖縄における学外臨床研修プログラムの実際

1)沖縄県立中部病院卒後臨床研修プログラム

沖縄における臨床研修の重要性

沖縄県立中部病院の実態と研修プログラムの実際

2)臨床研修病院群「群星沖縄」プロジェクト

群星沖縄プロジェクトの発足

【参考】群星沖縄立ち上げの趣意書

第9章 群星沖縄病院群プロジェクトの問いかけるもの

1)スタートした病院群「群星沖縄」臨床研修プロジェクト

沖縄での病院群臨床研修

スタートした群星沖縄プロジェクト

2)群星沖縄プロジェクトが問いかけるもの

研修病院の理念と使命

指導医講習会(FD)と日米医学交流

プライマリ・ケア研修の重視

スキル・ラボ構想

後期研修のあり方

地域医療貢献

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書籍情報

  • ISBN:9784758106054
  • ページ数:157頁
  • 書籍発行日:2006年1月
  • 電子版発売日:2014年5月2日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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