子どもたちの笑顔を支える小児緩和ケア

  • ページ数 : 218頁
  • 書籍発行日 : 2016年12月
  • 電子版発売日 : 2017年7月7日
¥3,960(税込)
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商品情報

内容

読み物として気軽に読み通せるよう構成された小児緩和ケアの入門書。

「小児緩和ケアのアウトライン」「小児緩和ケアをめぐる倫理的課題」「子どもの痛みを和らげる」など、8つのグループ・34のストーリーで小児緩和ケアへの理解を深めることができます。

序文

序文

英国オックスフォードの地に,世界で最初の子どものホスピス「ヘレンハウス」を訪れたのは2005年夏のことでした.

そのころ,すでに小児医療の進歩によってかつては救えなかった多くの子どもの命を救うことができるようになってきていましたが,それでもなお,残念ながら早期の死を余儀なくされる子どもたちも存在していました(もちろん,現在も存在します).このような生命を脅かす病気とともに暮らす子どもたちとその家族のQOL の向上を目指す取り組みとして,「小児緩和ケア」がヨーロッパ,北米,オセアニアなどの欧米先進諸国においてこの四半世紀余りの間に広く発展してきました.なかでも驚かされたのは,英国ではすでに子どものホスピスが40 施設近く活動していることでした.

一方,10年余り前の日本では,まだ「子どものホスピス」という言葉すら全く知られておらず,ましてや組織的,体系的な小児緩和ケアの提供体制は皆無に等しい状況でした.私自身,痛みに苦しむ子どもや呼吸苦に喘ぐ子ども,そして子どもの死が間近に迫りベッドサイドで悲しみに打ちひしがれる両親など,死を避けられない子どもや家族の方たちの苦痛や困難に間近に接してきました.しかし,当時の私にはその苦しみを和らげるための十分な知識も技術も持ち合わせていませんでしたので,適切な緩和ができないまま看取らざるをえない現実に,忸怩たる思いを抱くよりほかありませんでした.

そのような折に,オックスフォードで過ごした10日間,子どものホスピスをはじめとする,小児緩和ケアの実践とそれを社会全体で支える精神に圧倒された私は,小児緩和ケアの専門家を目指して英国で学ぼうと決心しました.とはいうものの,なにしろ未知の領域でしたので何から始めればいいのか右も左もわからず,将来の具体的な計画どころか帰るところも定まらないまま,何はともあれ英国に向かったというのが実情でした.英国では,ロンドンとリバプールの小児病院の緩和ケアチーム,最後はMarie Curie HospiceLiverpool で成人の緩和ケアについても研修させていただきながら,Cardiff大学の緩和ケアディプロマ・コース(世界でもっとも歴史のある緩和ケア教育プログラム)の履修を通じて,緩和ケアの基礎から応用まで勉強する機会を得ました.こうして,最初はどうなることかと思いましたが,たくさんの方々のご厚意に助けられながら,苦しくも充実した時間を英国で過ごすことができました.

帰国した当初は,小児緩和ケアを始動することは容易ではありませんでしたが,おりしも2007年のがん対策推進基本計画において緩和ケアが重要課題になったこともあり,小児医療の現場でも少しずつ緩和ケアの重要性が理解されるようになってきました.さらに2012年の第2期がん対策推進基本計画では,小児がん拠点病院の施設要件として小児緩和ケアの実践が義務づけられ,小児緩和ケアの研修会が国の事業として展開されるなど政策的な後押しもあり,この10年の間に小児緩和ケアも少しずつ発展してきたことを実感しています.

そして2016年春,10年前には「子どものホスピス」という言葉すら耳にすることがなかったわが国において,はじめての子ども専用のホスピス施設「TSURUMI こどもホスピス」が多くの人たちの協力によって大阪市鶴見区に誕生しました.医療や福祉の制度から独立したフリースタンディング・スタイルでの寄付に基づくホスピス運営は,欧米では標準的であるものの,わが国ではこれまで例のない画期的な取り組みです.社会全体で子どものホスピスなど小児緩和ケアの活動を支えていくことが当たり前の世の中を夢見ながら,その端緒となることを大いに期待しています.

このように,これから小児緩和ケアがより一層,医療現場はもとより社会全体に浸透し,組織的,包括的,かつ重層的な提供体制を構築していくことが期待されるこの折に,本書を通じて,私が学んできたこと,考えてきたこと,そして実践してきたことをお伝えできる機会をいただけましたことをとてもうれしく,そしてありがたく思っています.

本書を通じて,一人でも多くの小児医療に携わる皆さんがこれまで以上に小児緩和ケアに興味を持ってくださり,より良い実践に向けて少しでもお役に立つことができることを願っております.そしてなにより,病気と共に暮らす子どもたちとその家族が様々な苦痛・困難から解放され,よりよい生活の質を得られることにわずかながらでも貢献できましたらそれに勝る喜びはございません.

最後になりましたが,私に多くの学びと大きな力を与え続けてくれている,天国の子どもたちに心より感謝しています.そして,本書の出版にあたりお世話になった金芳堂の皆様にも感謝の意を表します.

2016年10月

多田羅 竜平

目次

1 小児緩和ケアの理念と定義

2 緩和ケアの対象となる子どもたち

3 病気による緩和ケアのニーズや倫理的課題の違い

4 成人と小児の違い

5 小児緩和ケアチームの働き方

6 子どもたちにどこまで真実を話せばいいのだろうか

7 子どもたちに自己決定権はあるのだろうか

8 生命維持治療の差し控えと中止は何が違うのだろうか

9 痛みについて尋ねる

10 痛みの程度を測る

11 言葉で表現できない子どもの痛みを推し測る

12 非オピオイド鎮痛薬の使い方

13 オピオイド開始時の選択

14 オピオイドのタイトレーション

15 オピオイドの副作用

16 オピオイドの呼吸抑制

17 オピオイドの変更

18 PCAの管理

19 神経障害性疼痛

20 呼吸困難への対処

21 呼吸困難に対するモルヒネの使い方

22 夜間の不眠

23 せん妄

24 嘔気,嘔吐

25 倦怠感

26 安らかな死の看取り

27 グリーフ理論の変遷

28 子どもを亡くした遺族の「複雑なグリーフ」

29 3人の女性医師の功績

30 在宅ケアを支える人たち

31 子どものホスピスってどんな施設?

32 生命維持治療の差し控え・中止のガイドライン

33 慈悲的な抜管(Compassionate Extubation)

34 ビリーブメント・ケアの実践(リバプールの活動を中心に)

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書籍情報

  • ISBN:9784765317054
  • ページ数:218頁
  • 書籍発行日:2016年12月
  • 電子版発売日:2017年7月7日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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