整形外科領域の患者立脚型評価（PROMs）

医療従事者ではなく患者自身が報告した健康状態を測定できる患者立脚型評価（patient‒reported outcome measures；PROMs）は，近年国際的に重要視され，幅広い領域で利用されています。全般的な健康状態を評価する包括的尺度と，特定の疾患を評価する疾患特異的尺度に大きく分類されますが，整形外科領域では様々な疾患特異的尺度が開発されており，日本語版も数多く利用できるものがあります。「患者さんの視点」から生活の質や自覚症状，機能状態，心理的側面，治療に対する満足度などの多面的な評価を定量的に行うことは，患者と医療者がともに質の高い医療を作り上げていこうという価値共創志向の医療モデルへの国際的な転換において，必要不可欠になっています。今回，そのような背景をもとに「整形外科領域の患者立脚型評価（PROMs）」をテーマに特集を組ませていただきました。

本特集は，脊椎から手・肘関節，肩関節，股関節（股関節鏡視下手術，人工股関節全置換術），膝関節（前十字靱帯再建術，高位脛骨骨切り術・人工膝関節全置換術），足部・足関節，関節リウマチ，外傷領域を網羅しており，大変充実した読み応えのある内容となっております。第一線で活躍されている新進気鋭の先生方に執筆をお願いして，障害部位や疾患に応じた最適なPROMs とその活用方法，課題，最新の知見について，従来型の医療者報告アウトカムと対比して解説いただきました。また，PROMs を適切に利用・解釈する上で重要なポイントとして，①　申請・使用料の要不要，②　信頼性・妥当性・反応性の検証の有無，③　床効果・天井効果，④　minimalclinically important difference（MCID）・minimal important change（MIC），⑤　日本語版のcross‒cultural validation，⑥　使用頻度：先行研究との比較が容易な標準的尺度であるか否か，⑦　質問項目数と簡便性，⑧　欠測値への対処法，⑨　Patient‒ReportedOutcomes Measurements Information System（PROMIS）の特徴，⑩　客観的評価尺度との併用，などを挙げていただきました。本特集が読者の皆様にとって価値のあるものとなり，PROMs にもとづいた治療計画の改善や個別化，多職種間連携，共有意思決定，質の高い研究論文の作成，多施設共同レジストリ研究，医療経済分析などにもつながるような，本邦の整形外科領域におけるPROMs のさらなる有効活用に貢献できれば幸いです。

（濵井　敏）