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臨牀消化器内科 Vol.39 No.4 特集「内科医が知っておくべき,肛門疾患の基礎知識」

  • ページ数 : 120頁
  • 書籍発行日 : 2024年3月
  • 電子版発売日 : 2024年3月20日
¥3,300(税込)
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商品情報

内容

今回の特集は,非常に読みやすい論文となっている.「検査・診かた」では問診のポイントや診察の実際が詳しく述べられており,肛門診察の際の手引きとなる.「痔核」「痔瘻」「裂肛」の3大肛門疾患や「直腸脱」では疾患の写真がふんだんに盛り込まれており,すぐに診断に役立つ内容である.

序文

―本特集を企画して―


肛門疾患とは消化管の最終器官である肛門管およびその周囲に発症する疾患の総称である.一般的には痔疾患と称される痔核(いぼ痔),裂肛(切れ痔),痔瘻がその代表である.それ以外にも膿皮症や毛巣洞といった肛門周囲の皮膚に発症する慢性化膿性皮膚疾患や,尖圭コンジローマのような肛門周囲皮膚のウイルス性感染症なども含まれる.肛門そう痒症のように,原因は多岐にわたるが「そう痒」という症状でくくられる疾患もある.骨盤臓器脱の一つである直腸脱も肛門から直腸が全周性に脱出してくる病態であるため,広い意味で肛門疾患の一つとして扱われる.炎症性腸疾患の一つであるクローン病では,痔瘻,肛門潰瘍,スキンタッグ,肛門狭窄など多彩な肛門病変が出現することがあり,その特徴的な外観から肛門病変をきっかけに腸管精査を行うことで,クローン病の診断がつく症例も少なくない.

肛門部の悪性疾患としては,肛門管内の肛門上皮および肛門周囲の皮膚に発症した肛門癌があげられる.これは直腸癌が腺癌であるのに対して,肛門部の皮膚に由来する扁平上皮癌であり,放射線治療が奏効することから治療方針も直腸癌とは大きく異なる.前癌状態として上皮内に限局している扁平上皮癌は,過去にはBowen病と呼ばれていたが,現在ではhigh grade squamous intraepitheliallesion(またはanal intraepithelial neoplasia)と呼ばれ,拡大鏡やルゴール散布など子宮頸癌の診断を応用した診断検査が海外では普及している.そのほかにも肛門周囲の皮膚に発症する上皮内腺癌であるPaget病も乳房外Paget病の一つとして忘れてはならない疾患である.まれではあるが悪性黒色腫も肛門周囲の皮膚や肛門上皮に発症し,予後がきわめて不良なため肛門部の悪性疾患の一つとして留意しておかなければならない.

便秘,便排出困難,頻回排便,便失禁などの排便障害の症状を訴えて外来を受診する患者も多い.排便障害は狭い意味では肛門疾患の範疇には入らないが,直腸疾患や肛門疾患に起因する症状との鑑別を要する.たとえば裂肛では肛門狭窄を伴うことが多いため,便排出困難の症状を訴えるが,大腸通過遅延型の慢性便秘症で直腸内の便が硬いだけでも便排出困難をきたす.また骨盤臓器脱の一つである直腸瘤は怒責時に直腸が膣内に膨隆する病態であるが,便排出困難の症状を訴えるのが特徴的である.便失禁は肛門括約筋の機能不全とされ,分娩時の会陰裂傷や複雑痔瘻の手術後遺症として括約筋が大きく損傷された場合に生じることがあるが,実際には分娩や肛門手術の既往歴のない高齢者が便失禁を訴える場合が多い.これには内外肛門括約筋の加齢による機能低下や肛門管の感覚低下などが関与しているが,軟便などの便性状そのものが影響している場合も多い.また高齢者や小児では直腸内に便塊が貯留したときに反射的に内肛門括約筋が弛緩して便失禁をきたす溢流性便失禁という状態もみられることがある.これらの排便障害に対しては,投薬などの対症療法に加えて,近年では直腸瘤に対する後膣壁形成術,便失禁に対する括約筋形成術や仙骨神経刺激療法などの外科的治療も適応に応じて推奨される.

消化器内科医や一般内科医にとって肛門疾患は専門外の疾患とみなされがちであるが,専門医でなくてもちょっとした知識があれば問診や肛門診察だけでほとんどの肛門疾患を外来で診断できる.かかりつけの患者が肛門や排便に関する症状を訴えたとき,本特集を参考にして適切な診断や薬物療法などの初期診療を行うことができるようになることを期待している.初期診療だけで症状が改善すれば,かかりつけの患者は大いに喜ぶであろう.肛門疾患だからといって最初から診察せずに紹介状を書くよりも,自身で確診または疑い診断をつけたうえで,初診時または初期診療でしばらく経過を見てから外科や肛門科へ紹介していただくほうが,かかりつけの患者からの信頼も増すのではないかと思う.ぜひ本特集に目を通していただき,肛門疾患に少しでも興味をもっていただければ,本特集を企画した意義が達せられる.


Guest editor 山名 哲郎

目次

【特集目次】「内科医が知っておくべき,肛門疾患の基礎知識」

巻頭言 本特集を企画して /山名 哲郎

1.検査・診かた/小野朋二郎 他

2.痔核/高野 正太

3.痔瘻/松田 聡 他

4.裂肛/石山元太郎

5.直腸脱/大橋 勝久 他

6.臀部膿皮症/岩川 和秀 他

7.毛巣洞/仕垣幸太郎 他

8.肛門そう痒症/高橋 里奈 他

9.クローン病の肛門病変/山岡健太郎 他

10.尖圭コンジローマ/日高 仁 他

11.肛門癌

(1)扁平上皮癌/三浦 卓也,諸橋 一 他

(2)その他の悪性疾患/佐々木みのり,佐々木 巌

12.排便困難―とくに直腸瘤について/松村奈緒美

13.便失禁(肛門括約筋不全など)/高橋 知子

連載

内視鏡の読み方

潰瘍性大腸炎を背景とした隆起性病変―腫瘍と非腫瘍病変の鑑別/城山真美子,坂本 琢 他

「胃炎の京都分類」の使い方

第19回 PPI胃症とP-CAB胃症に違いがあるのか/久保 公利 他

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書籍情報

  • ISBN:9784004003904
  • ページ数:120頁
  • 書籍発行日:2024年3月
  • 電子版発売日:2024年3月20日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:2

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