地域理学療法にこだわる

  • ページ数 : 428頁
  • 書籍発行日 : 2010年3月
  • 電子版発売日 : 2021年10月6日
¥7,150(税込)
ポイント : 130 pt (2%)
今すぐ立ち読み
今すぐ立ち読み

商品情報

内容

超高齢化社会を目前にして,地域理学療法にどうこだわるか?そして理学療法士は地域で何をなすべきか? を提示する1冊!

本書は,団塊の世代が後期高齢者となる超高齢化社会の到来を見据え,介護領域で理学療法士の果たす役割について,現状のみならず,理想をも含めて論じた1冊.今から取り組んでおきたいこと,地域で生活する方を対象としたときに理学療法士が何をなすべきか,そのために必要な知識は何か,などについて徹底解説.近未来社会の地域理学療法の理念,マインド,行動を解明せんとする新しい理学療法=地域理学療法黎明の書.

※本製品はPCでの閲覧も可能です。
製品のご購入後、「購入済ライセンス一覧」より、オンライン環境で閲覧可能なPDF版をご覧いただけます。詳細はこちらでご確認ください。
推奨ブラウザ: Firefox 最新版 / Google Chrome 最新版 / Safari 最新版

序文

序文


[1.これから迎えようとする社会]

わが国はほかに例をみない速さで高齢化が進み,人口構造の面からは超高齢化社会を迎えようとしている.また,出生数の減少によって少子化が進み,さらに世界的な経済のマイナス成長によって,社会保険などの社会保障に費やせる財源も底をつき始めている.しかしそのような中でも,前を向いて歩んでいかなければならない.団塊の世代が後期高齢者の枠組みに入る約15年後を見据えたとき,そのときになって慌てるというのではなく,「超高齢者でも普通にできる生活」を支えうる理学療法を提供したいという視点をもって準備していくことが今の私たちに課せられた課題だと考える.また,理学療法士は量的には急速に充足してきているものの,質の面ではどうだろうかという疑問が投げかけられている.質の面でも大丈夫と胸を張れるようにしていくことも大切な課題である.本書は15年後を視野に入れ,15年後に地域理学療法の現場での実践にかかわっているであろう若い世代の理学療法士を中心に執筆している.15年後がどのような時代になっているのかを明確に予想することは難しいが,それぞれの想いや夢が具現化し,また,こだわりが更なる発展を遂げている時代の到来を期待したい.


[2.今,理学療法にこだわる必要性は]

診療報酬の体系において「リハビリテーション料」と包括化され,理学療法と作業療法の区別がなくなったことや,理学療法士自らも「リハビリを」と言うなど,理学療法自体への想いが薄らいできている.理学療法士のidentityを確立していくためにも,なぜ理学療法を提供することが必要なのか,理学療法学としての視点はどのようなものかを明確にしていくことが重要である.そのための第一歩は,理学療法という視点でいかにこだわって日頃から実践しているのかということに尽きる.そこで,本書は,種々の理学療法士がこれまでに実践してきたこだわりにとどまらず,そのこだわりの延長にある夢を言語化してもらうことをねらいとしている.大きな夢を持つことが実現に向けた一歩を踏み出すための原動力となり,そして,理学療法界の発展に繋がっていくものと考える.


[3.地域理学療法をとらえる視点]

地域理学療法は時・空のそれぞれの軸を統合し多方面から考えていくことが大切だと考えている.そこで,時間軸,場面軸,技術軸,対象軸,政策軸の5つの軸から本書は構成し,複眼的に地域理学療法をとらえられるようにしている.時間軸は,医療施設での急性期治療から在宅での生活に至るまでの時間的な流れの面から考えることである.在宅や施設での生活時期のみではなく,スタートとしての「退院を考えるとき」,そして亡くなられる「終末期」までを含めている.場面軸は,種々の介入を提供するための基盤となる場所の面から考えている.地域理学療法の展開において,治療の側面が強い医療機関での役割や取り組みは他書に譲るとして,退院後に利用する施設や在宅ケアの場において理学療法士が専門性を発揮するためにはどのようにしていくべきかという視点からとらえている.

技術軸は,対象者の状態のとらえ方から介入内容に至るまでである.特に地域理学療法においては身体機能面の回復という理学療法だけではなく,環境面や生活の質の面での介入も重要である.そこで,住環境や福祉用具,さらにレクリエーション活動と旅行・外出について盛り込んでいる.これらは理学療法士にとって学際的な領域であり,関連職種と意見交換ができる技術につながるものである.

対象軸は,どのような状態に対して向き合うのかということである.そこで,個々の疾患については他書に譲り,二次的な問題をとりあげるとともに,対象者とともに対応が必要となる介護者に対する役割として介護者指導を含めている.最後の政策軸では,理学療法の効果判定,そして,開業権に向けた経営的側面,さらに教育や行政機関での役割,また,社会資源への働きかけ,他職種からの求めをまとめることにした.同じことを異なった軸でとらえてみることで複眼的な見方になればと考える.


[4.用語におけるこだわりについて]

本書は理学療法にこだわった書籍である.「理学療法」と「リハビリテーション」とは本来異なるものであるが,理学療法士自身が混同して使用していることも少なくない.したがって,本書では制度や概念として「リハビリテーション」を用いているところ以外では,理学療法士が介入すべき事項については「理学療法」としている.

また,理学療法士が対応する方については,文脈として,介護老人保健施設や介護サービスを利用している方に限定される部分は「利用者」としているが,基本的に「対象者」として統一している.サービスや制度は利用するものであるが,理学療法士が向き合うという点からは利用者ではなく対象者として対等に向き合うことが必要であるという意図からである.


[さいごに]

本書が理学療法士にとって種々のこだわりを持ち,かかわることで,社会の中で有益性を発揮し,さらに社会の隅々にまで貢献できる地域理学療法の展開を目指していくための一助となれば幸いである.また読者にとっても地域理学療法へのアプローチと深化の書になれば望外の喜びである.


2010年3月

兵庫医療大学  日髙 正巳

目次

第1部 背景

1 そもそも地域とは?─ Life Based Physical Therapy への志向

2 これから迎えようとする社会とは? ─「 質の向上」を意識する

3 歴史に学ぶ─歴史,社会福祉政策,体制

4 介護予防から自立支援へ─自立支援と「社会生活力サポートプログラム」の実

5 チームでかかわる─対象者を主役とするチームアプローチ

第2部 時間軸

6 退院支援を考える─チーム力,総合力が問われる

7 退院後早期にすべきこと─一生活者へのスタートライン

8 生活安定期にすること─対象者の自己実現を!

9 ターミナル期を演出する─対象者の物語に向き合い,寄り添い,支援する

第3部 場面軸

10 介護老人保健施設で地域とつながり,つなげる─施設視点から在宅視点へ

11 介護老人福祉施設での役割と実践─地域理学療法を模索する

12 通所ケア施設では?─何が求められ,どのような能力が必要になるのか?

13 訪問理学療法にて─一期一会の精神にこだわる

14 ところ変われば…,寒冷地編─寒冷地仕様の訪問理学療法

15 ところ変われば…,温暖地編─居住環境,生活環境などの違いでわかる

16 ところ変われば…,海外編─障がいを持って生活する

第4部 技術軸

17 障害像をとらえる─解決すべき課題を明確にしよう

18 住宅改修サービスでの役割とは?─「住めば都」ではなく

19 福祉用具を活用するための役割とは? ─福祉用具の選定基準と考え方

20 活動的な生活を演出する─実践的なレクリエーション支援の極意

21 外出する・旅行する ─1人ひとりの想いと勇気が大きな輪に,大旅行を実現

第5部 対象軸

22 就学前から学童期─広い視点とさまざまな援助で役割を担う

23 転倒予防─転ばずに活き活きとした生活づくりを支援する

24 理学療法士にとってのフットケア─靴を考える

25 褥瘡を予防する─その理解と治療の取り組み

26 介護者指導のポイントと実際─介護環境と介護場面での応用

第6部 政策軸

27 効果判定をしよう─目に見える効果,見えない効果

28 経営者の視点─起業の実像と形態を分析する

29 教育する─自立した学びのために

30 行政機関において─体験から,可能性と必置性を訴える

31 社会へ働きかける─論点と企業の取り組み事例

32 他職種から求められる―1.ケアマネジャーから─「生活がある」を意識して

32 他職種から求められる―2.保健師から─「今,」を問い続けて

32 他職種から求められる―3.作業療法士から─チャレンジ精神を一緒に楽しむ

33 展望─活躍の場の拡大と環境変化に対応し,夢を育む職業へ


索引

便利機能

  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応
便利機能アイコン説明
  • 全文・
    串刺検索
  • 目次・
    索引リンク
  • PCブラウザ閲覧
  • メモ・付箋
  • PubMed
    リンク
  • 動画再生
  • 音声再生
  • 今日の治療薬リンク
  • イヤーノートリンク
  • 南山堂医学
    大辞典
    リンク
  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応

対応機種

  • ios icon

    iOS 10.0 以降

    外部メモリ:19.1MB以上(インストール時:49.4MB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:76.5MB以上

  • android icon

    AndroidOS 5.0 以降

    外部メモリ:19.1MB以上(インストール時:49.4MB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:76.5MB以上

  • コンテンツのインストールにあたり、無線LANへの接続環境が必要です(3G回線によるインストールも可能ですが、データ量の多い通信のため、通信料が高額となりますので、無線LANを推奨しております)。
  • コンテンツの使用にあたり、M2Plus Launcherが必要です。 導入方法の詳細はこちら
  • Appleロゴは、Apple Inc.の商標です。
  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

  • ISBN:9784830643811
  • ページ数:428頁
  • 書籍発行日:2010年3月
  • 電子版発売日:2021年10月6日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

まだ投稿されていません

特記事項

※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。

※コンテンツの使用にあたり、M2Plus Launcherが必要です。

※eBook版は、書籍の体裁そのままで表示しますので、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。