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- 神経疾患治療ストラテジー<アクチュアル 脳・神経疾患の臨床>
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内容
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序文
序
神経疾患は治らないという固定観念が続いた時代があった.しかし,この20年間をみると神経疾患の治療は大きく変化した.
特に免疫性神経疾患,てんかん,頭痛などでは分子病態の理解が進むにつれて,有効性に優れた多くの新薬が次々に開発されてきており,一部では,病態の中心を担う分子を標的とするdisease modifying therapy(DMT)としての位置付けも可能な薬剤が出現してきている.また,パーキンソン病やアルツハイマー病についてもドパミン系やアセチルコリン系の補充療法に加えて新しい考え方の治療薬が開発され,脳深部刺激療法(DBS)は症例により大きな効果が期待できるようになってきている.脊髄性筋萎縮症(SMA)などでは,SMN遺伝子の機能を補う核酸治療により劇的な効果を得ることも可能になり,脳梗塞についても直接作用型経口凝固薬(DOAC)やt-PA,血管内治療デバイスの出現などで治療の体系そのものが大きく変化してきている.われわれは,これらの治療の進展による大きな恩恵を被っているが,さらに,これらの治療の進展を通してそれぞれの疾患の病態理解も進んできている.
しかし一方では解決すべき課題や,今までにない治療モダリティの開発の進展,さらには治験そのものの考え方にも若干の変化がみられてきており,神経疾患治療の考え方が重要になっている.例えば現在使用されている既存の治療についても,適応範囲,治療目的,その効果をどう期待したらよいのかなどは必ずしも明確にはなっていない.また特に神経変性疾患を中心に,まだ十分な成功例のないDMTの開発をどう進めるのか.慢性期や高齢者の治療をどう考えるのか.今後の新たな方法やモダリティによる治療の展開にどう対応したらよいのか.さらには創薬に向けた治験やレギュラトリーサイエンスそのものの考え方をどう進化させていくのか─われわれは,次の時代の治療の発展を見据えて,疾患の予防という視点を見据えて,さらには日常の診療に直接影響するインパクトを見据えて,神経疾患の治療に取り組むことが改めて問われている.
本書は「治療」という観点を軸にして神経疾患を考えるという意図で企画されたもので,現在行われている治療法の紹介とともに,開発中あるいは今後開発されると考えられる治療のストラテジーやその考え方も含めた構成となっている.わが国の各領域のエキスパートに執筆をお願いしており,神経疾患の治療あるいはその開発についての新たな流れを汲み取っていただければと考える.本書が,今日の日常診療から明日の治療開発までの幅広い領域に関わっておられる読者の皆様にとって,神経疾患の治療について改めて考えていただく糧になれば望外の喜びである.この難しい課題によく対応し,簡潔にかつわかりやすくまとめていただいた各執筆者に改めて感謝の意を表したい.
2017年8月
名古屋大学大学院医学系研究科神経変性・認知症制御研究部
祖父江元
目次
はじめに
神経疾患治療の考え方 (祖父江元)
Ⅰ.神経疾患の治療法
薬物療法
神経伝達物質補充療法-パーキンソン病などを中心に (森 聡生,波田野琢,服部信孝)
神経伝達物質補充療法─認知症などを中心に (桝田道人,勝野雅央,祖父江元)
免疫修飾治療 (松井 真,中西恵美)
酵素補充療法 (西野一三,山口浩司)
分子標的治療-脱髄疾患を中心に (荒木 学,山村 隆)
分子標的治療-てんかんを中心に (金星匡人,大野行弘,池田昭夫)
神経内科領域チャネル病の治療 (上野未貴,本村政勝)
抗酸化療法 (中野由美子,阿部康二)
抗血小板療法,抗凝固療法 (中村麻子,矢坂正弘)
ボツリヌス治療 (武内俊明,梶 龍兒)
抗菌薬治療 (亀井 聡)
グリオーマに対する抗腫瘍薬治療 (大岡史治,夏目敦至,若林俊彦)
自律神経症候の薬物治療 (渡辺宏久,中村友彦,祖父江元)
精神症候の薬物治療 (平野光彬,藤城弘樹,尾崎紀夫)
高齢者薬物療法の注意点 (冨本秀和,石川英洋)
食事・栄養指導 (片多史明)
運動療法・リハビリテーション
サイバニクス治療-HAL医療用下肢タイプの現状と今後 (中島 孝)
CI療法 (花田恵介,道免和久)
理学療法,作業療法 (寳珠山稔)
言語療法 (坪井 崇)
芸術療法と音楽療法 (平山正昭)
次世代型リハビリテーション (宮井一郎)
神経疾患・認知症に対する運動療法・予防 (島田裕之)
神経難病の緩和ケア (西澤正豊)
血液浄化療法と免疫グロブリン大量静注療法 (鈴木秀和,楠 進)
磁気刺激療法・電気けいれん療法
磁気刺激療法 (松本英之,宇川義一)
電気けいれん療法 (本橋伸高)
呼吸管理 (成田有吾,中井三智子)
外科的治療
脳深部刺激療法 (前澤 聡,中坪大輔)
脳深部刺激療法のパーキンソン病への効果 (斎木英資)
迷走神経刺激療法 (國井尚人,川合謙介)
血管内治療 (山田清文,吉村紳一)
Ⅱ.今後の治療法への展開
遺伝子・核酸治療
遺伝子治療 (中森雅之,望月秀樹)
核酸治療 (永田哲也,吉岡耕太郎,横田隆徳)
再生医療・iPS 細胞を用いた細胞移植治療 (森実飛鳥,髙橋 淳)
治療法開発に向けて
神経疾患治療薬開発の動向-神経疾患のレギュラトリーサイエンスの現状と今後 (佐久嶋研)
新規治療の開発と承認,治験のデザインと実施に向けて (中村治雅)
神経変性疾患のDMT (橋詰 淳,祖父江元)
認知症のDMT (岡澤 均)
モデル動物から治療へ (上村紀仁,髙橋良輔)
Ⅲ.ここが知りたい-─今後の治療開発に向けて
神経治療薬開発におけるレジストリ・コホート研究の意義 (熱田直樹,祖父江元)
筋ジストロフィーの核酸治療
デュシェンヌ型筋ジストロフィーのエクソン・スキップ治療 (溝部吉高,青木吉嗣,武田伸一)
福山型筋ジストロフィーのアンチセンス核酸治療 (戸田達史)
iPS細胞でのドラッグスクリーニング (伊藤卓治,岡田洋平)
HGFとALS治療 (青木正志)
自己骨髄間葉系幹細胞移植治療 (本望 修)
アルツハイマー病における抗体療法 (嶋田裕之,森 啓)
BMI (里宇明元)
神経変性疾患の蛋白質伝播・プロパゲーションに対する治療 (長谷川成人,亀谷富由樹)
基質合成抑制療法 (﨑山快夫)
TTR 四量体安定化薬 (関島良樹)
化学シャペロン療法 (檜垣克美,難波栄二)
磁気けいれん療法 (鬼頭伸輔)
糞便微生物移植療法 (南木康作,金井隆典)
脊髄性筋萎縮症のアンチセンス核酸医薬治療 (佐橋健太郎,祖父江元)
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書籍情報
- ISBN:9784521745435
- ページ数:460頁
- 書籍発行日:2017年8月
- 電子版発売日:2021年11月10日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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