胃拡大内視鏡

  • ページ数 : 230頁
  • 書籍発行日 : 2009年5月
  • 電子版発売日 : 2022年2月9日
13,200
(税込)
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商品情報

内容

本分野のパイオニアが,一貫した信念のもとにまとめた

本書が目指すのは,
(1) 論理的根拠に基づいた標準的な観察法を呈示する.
(2) 観察条件を統一して得られる診断に有用な指標(解剖学的所見)を明確にする.
(3) それらの指標を用いて,内視鏡所見を解析し,一定の診断基準に基づき病変の質的診断を行うことができる診断体系を提唱する
ことである.

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序文


著者は,2000年5月から胃拡大内視鏡をはじめた.人体における血管の最小単位である毛細血管レベルの微細診断が可能となり,さまざまな新しい知見を得ることができ,一研究者・一臨床家として幸運であった.とりわけ,世界に先駆けて,早期胃癌に特徴的な微小血管構築像を発見した時は,「科学の女神が,神秘のヴェールをめくり,真理をかいまみせてくれた!」と感動に震えた.それ以来,胃拡大内視鏡のさまざまな臨床的有用性を検討し,発表しているうちに,またたく間に10年が過ぎてしまった.

その間,国内外を問わず,原著論文・総説・著書の分担執筆や講演において,著者がこれまで捉えた知見や考えを発表する多くの機会を得ることができた.しかしながら,それぞれの機会で,発表できる内容は限られていた.

一方,近年,機器開発の進歩により,胃の拡大観察が容易になった反面,自然科学の基本である観察条件が研究者により異なり,診断の拠り所となる用語も統一されず,胃拡大内視鏡の診断体系を確立するには,ほど遠い現状がある.

以上の背景と経緯を鑑み,著者が本書を出版する目的は,(1)科学的・生物学的根拠を前提とした再現性が高い胃拡大内視鏡の標準的観察法を呈示する,(2)観察条件を統一して得られる解剖学的指標を明確にする,(3)それらの指標を用いて,胃粘膜の拡大内視鏡所見を解析し,一定の診断基準に基づき病変の診断をするという診断体系を提唱することである.そのためには,一人の著者が一貫した信念のもとに著書を執筆し,単著で出版する必要があった.

20世紀は色素内視鏡が全盛の時代であり,先人の業績により内視鏡診断学は,完成されたかのように思えた.しかし,21世紀に入り,状況は一変した.

本書に示した知見は,人体に,色素など人工の物質をいっさい加えず,光を,半透明の粘膜や天然の色素(ヘモグロビン)に投射したときに起こる現象を,拠り所としている.そして,拡大内視鏡は,一般臨床においても,小さく平坦な癌を診断するために,良性粘膜から無数に採取されてきた無駄な生検を無くすことに貢献できるであろう.本書が,「何も足さない,そして何も引かない」単純で美しい内視鏡診断学の序章になればよいと考えている.

本書は,結論ではない.著者は目の前に広がった大海へこぎだしたばかりであり,本書は大海で迷わないための羅針盤と位置づけている.出版するにあたり,お世話になった諸氏に心から感謝の意を表したい.


2009年5月

八尾 建史

目次

第1章 拡大内視鏡所見を解釈する原則と診断体系

1.1 拡大内視鏡所見を解釈する原則

1.2 VS classification systemを用いる理由

1.3 解剖学的根拠に基づいた新しい診断体系の構築

第2章 微小血管構築像をターゲットとした胃拡大内視鏡観察法

2.1 上部消化管拡大内視鏡

2.2 電子内視鏡システムの設定─ビデオプロセッサーのセッティングと手元操作部スイッチの割り付け

2.2.1 構造強調機能とNBI

2.2.2 適応型IHb(index of hemoglobin)色彩強調機能

2.2.3 手元操作部のスイッチへの機能割り付け

2.3 Black soft hoodの使用

2.3.1 拡大観察用フードの必要性

2.3.2 Black soft hoodを使用する理由

2.3.3 検査前の確認

2.4 観察法(1):非拡大観察から拡大内視鏡観察へ

2.4.1 前 処 置

2.4.2 内視鏡検査

2.4.3 観察目的別胃粘膜拡大観察法

2.5 観察法(2):フードを使用した観察部位別アプローチ

2.5.1 噴門部から体部の小弯

2.5.2 胃角部小弯

2.5.3 胃体部大弯

2.6 浸水法water immersion technique

第3章 電子内視鏡の拡大倍率と分解能

3.1 拡大倍率magnifying ratioの定義

3.2 最大倍率maximal magnifying ratioの定義

3.3 分解能(解像力)resolutionの定義

3.4 分解能の計測・表記法

3.5 水平分解能と垂直分解能

3.6 最大分解能maximal resolutionの定義

3.7 拡大内視鏡magnifying endoscopyの定義と倍率・分解能

第4章 正常胃粘膜像の拡大内視鏡所見

4.1 胃体部gastric body mucosa

4.1.1 微小血管構築像(V)

4.1.2 粘膜表面微細構造(S)

4.1.3 解剖学的裏付け

4.2 胃前庭部gastric antrum

4.2.1 微小血管構築像(V)

4.2.2 粘膜表面微細構造(S)

4.2.3 解剖学的裏付け

第5章 慢性胃炎―胃体部の拡大内視鏡観察

5.1 Yagiらの分類(2002年)

5.2 Nakagawaらの分類(2003年)

5.3 著者らの検討(2007年)

第6章 早期胃癌の微小血管構築像とその臨床応用

6.1 早期胃癌の微小血管構築像の特徴

6.1.1 分化型癌

6.1.2 未分化型癌

6.2 微小血管構築像に基づく拡大内視鏡の臨床応用

6.3 癌と非癌の鑑別診断:限局性胃炎vs. IIb, 微小IIcの鑑別診断

6.3.1 背景:通常内視鏡診断の限界

6.3.2 盲目的前向き試験とその臨床的意義,限界

6.4 小病変についての拡大内視鏡を用いたスクリーニング検査の際の観察法・鑑別診断法のポイント

6.4.1 どの病変をいつ拡大するか

6.4.2 近接して,一気に倍率を上げる

6.4.3 微小血管構築像の判定のアルゴリズム

6.4.4 最大倍率で焦点を合わせるコツ

6.4.5 拍動・呼吸の影響が大きい場合

6.5 スクリーニング検査における癌と非癌の鑑別診断の実際

6.6 早期胃癌の術前診断──癌の境界診断(白色光編)

6.6.1 原則

6.6.2 適応病変

6.6.3 限界病変

6.6.4 不能病変(適応外病変)

6.7 拡大観察による境界診断の実際

第7章 Narrow-band imaging (NBI) 併用内視鏡の原理

7.1 概  説

7.2 原理を理解するために必要な光学的知識

7.2.1 光の波長と色の関係

7.2.2 投射する光の波長による色の違い―反射と吸収

7.3 なぜNBIは415 nm(青色)と540 nm(緑色)の2波長光を用いるのか?

7.3.1 光の波長とヘモグロビンの吸収特性

7.3.2 光を半透明な媒体(粘膜)に投射すると,どのような現象が起こり何が視覚化されるのか?

7.3.3 投射する光の波長による特性と舌粘膜(生体)における血管像の特徴

7.4 なぜ,狭帯域光観察NBIなのか?

7.5 NBI併用電子内視鏡システム

第8章 NBI併用胃拡大内視鏡所見の成り立ち―腺上皮において狭帯域光は解剖学的に何をどのように視覚化するか?

8.1 概  説

8.2 光の波長による視覚化される解剖学的構造の違い

8.2.1 青色狭帯域光(415 nmの光)による白黒濃淡画像の特徴

8.2.2 緑色狭帯域光(540 nmの光)による白黒濃淡画像の特徴

8.3 色の出力への割当とカラー画像の合成

8.4 正常胃粘膜におけるNBI併用拡大内視鏡所見の成り立ち 79

8.4.1 胃体部腺粘膜

8.4.2 胃体部腺粘膜の視覚化される解剖学的構造

8.4.3 胃幽門腺粘膜

8.4.4 胃幽門腺粘膜の視覚化される解剖学的構造

第9章 VS classification systemの提唱―NBI併用拡大内視鏡所見を解析する原則

9.1 診断体系の提唱と原則

9.2 VS classification system

9.2.1 V, microvascular pattern(微小血管構築像)

9.2.2 S, microsurface pattern(表面微細構造)

9.2.3 Combined morphology of V and S(VS concordance)

第10章 Light blue crest(LBC)と White opaque substance(WOS)

10.1 Light blue crest(LBC)

10.1.1 LBCとは

10.1.2 LBCの臨床的意義

10.2 粘膜白色不透明物質white opaque substance(WOS)

10.2.1 WOSとは

10.2.2 表面隆起型上皮性腫瘍におけるWOSの出現頻度と組織型別形態学的特徴

10.2.3 全肉眼型別WOSの出現頻度と組織型別形態学的特徴

10.2.4 WOSとは何か?

10.3 LBCとWOSの異同について

10.3.1 光学的観点から

10.3.2 解剖学的観点から

10.3.3 上皮性腫瘍と背景粘膜におけるWOSとLCの出現様式

第11章 NBI併用拡大内視鏡の臨床効果

11.1 NBI併用拡大内視鏡による正常胃粘膜像

11.1.1 胃体部・胃底部(胃体部腺粘膜)

11.1.2 胃前庭部(胃幽門腺粘膜)

11.2 早期胃癌

11.2.1 拡大内視鏡にNBIを併用する利点

11.2.2 拡大内視鏡にNBIを併用する際の注意点

第12章 早期胃癌診断に用いるVS classification system

12.1 VS classificationの原則

12.2 V:Microvascular pattern(微小血管構築像)

12.2.1 Regular MV pattern

12.2.2 Irregular MV pattern

12.2.3 Absent MV pattern

12.3 S:Microsurface pattern(粘膜表面微細構造)

12.3.1 Regular MS pattern

12.3.2 Irregular MS pattern

12.3.3 Absent MS pattern

12.4 病変と背景粘膜の境界

12.4.1 Demarcation line(DL)

12.4.2 Intraepithelial microinvasion(IEMI)

12.5 VS concordance

12.6 VS classificationを用いた早期胃癌の診断基準

12.7 診断基準に合致する癌の頻度と限界

12.8 VS classificationを用いた早期胃癌のNBI併用拡大内視鏡所見

第13章 胃上皮性腫瘍(早期胃癌・腺腫)の肉眼型別拡大内視鏡所見の解析法とその解釈

13.1 表面陥凹(0 IIc)型

13.2 表面平坦(0 IIb)型

13.3 表面隆起(0 IIa)型

13.4 隆起(0 I)型

13.5 特異な拡大内視鏡像を呈する症例

第14章 白色光・NBI併用胃拡大内視鏡の新しい臨床応用―難易度別Categoryによる術前境界診断に対する臨床的有用性と限界,臨床的対応

14.1 概説

14.1.1 NBI併用胃拡大内視鏡の臨床的有用性

14.1.2 IIb,微小癌の診断

14.1.3 難易度別categoryによる臨床的有用性と限界,臨床的対応

14.1.4 臨床的ストラテジー

14.2 境界診断の難易度別Categoryを用いた術前境界診断

14.2.1術前境界診断の基本

14.2.2 拡大観察の通常内視鏡に対する上乗せ効果と限界

14.3 通常内視鏡と同等例

Category 1.通常観察のみで癌の境界が全周性に同定可能な場合

14.4 拡大内視鏡有用例

Category 2 通常観察で癌の境界の一部が不明瞭で拡大観察で明瞭な場合

Category 3 通常観察で癌の境界が全周にわたり不明瞭であり(IIb),

Category 3.1 拡大観察で全周性に境界を同定できる場合

Category 3.2 拡大観察でほぼ全周性に境界を同定できるが,一部が,拡大観察でも同定できない場合

Category 4 通常観察で存在診断すら不可能で,拡大観察では存在診断から境界診断まで可能な場合

Category 4.1 通常観察で境界明瞭と診断したが,拡大観察で随伴IIbを認める場合

Category 4.2 主病変の近傍に,副病変が存在する場合

Category 4.3 通常観察で癌の境界はおろか,存在すら不明な場合(occult cancer)

14.5 拡大内視鏡限界例

Category 5.1 通常観察で存在診断は不可能で,拡大観察では存在診断・質的診断は可能であるが,境界診断が不可能な場合

Category 5.2 通常観察で存在診断はできるが,質的診断・境界診断が通常観察でも拡大観察でも不可能な場合(未分化型癌)

14.6 早期胃癌の境界診断における拡大内視鏡の位置付けと臨床的対応

コラム─著者のひとりごと

20世紀まで胃拡大内視鏡が臨床応用されなかった理由と21世紀のブレークスルー

偶然と必然

英国における拡大内視鏡による慢性胃炎像のインパクト

診断過程における境界部の意義

拡大内視鏡像と病理組織像の対比

早期胃癌の肉眼像の変遷

長崎県島原市は,胃拡大内視鏡医の産地である?

付録

当科で用いているVS classification systemの所見用紙

文献

索引

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書籍情報

  • ISBN:9784888752190
  • ページ数:230頁
  • 書籍発行日:2009年5月
  • 電子版発売日:2022年2月9日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:2

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