急性中毒診療実践ルール16~当直・ER・ICUで役立つハーバード式クリニカルパール

  • ページ数 : 208頁
  • 書籍発行日 : 2022年2月
  • 電子版発売日 : 2022年2月18日
4,180
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商品情報

内容

これで中毒革命だ!
闇雲な中毒診療から卒業し、病態生理に基づいた診療へ


世界標準の診療指針や基準,実情も踏まえた中毒診療の考え方を16の実践ルールとして紹介!

Dr.千葉が当直医,救急&集中治療医向けにやさしく手引するハーバード仕込みの中毒診療講義。薬毒物,拮抗薬と患者の「何を,どのように,いつモニタリングするか」について,単なる暗記ではなく薬物動態と病態生理に基づいて理解できる書籍。
この本でしか得られない指導医・上級医クラスも目からウロコのピットフォールも織り交ぜ,世界標準の診療指針や基準,実情も踏まえた中毒診療の土台となる考え方がわかる。

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序文

はじめに


皆さんは中毒というとどんなイメージをもっていますか?中毒というと,「なんだかよくわからない」「精神疾患も持っていてケアが大変」「胃洗浄や活性炭の投与に清潔感がなく好きになれない」というようなネガティブなイメージがないでしょうか?この本はそんな中毒の負のイメージを払拭して,「そんなこと知らなかった」「なんでそうなるんだろう」と感じていただき,中毒に関心と興味をもっていただきたいという気持ちから執筆しました。目次を見ていただくと,「え!? そうなの?」という項目もちらほら見つかりませんか?もしそうなら,あなたも筆者と同じで中毒の中毒になる道の入り口に立っています。

かく言う筆者も,ほんの7~8年前まで中毒なんてまったく興味がありませんでした。筆者はハーバードの臨床中毒学フェローシップを2019年に卒業したのですが,フェローシップの話をすると必ずと言っていいほど「どうしてアメリカで中毒学のフェローになろうと思ったのですか?」と聞かれます。渡米前の筆者も含めて多くの方にとって,アメリカの中毒=違法薬物中毒で,日本では遭遇する機会に乏しく役に立たないと考えるからだと思います。ところが,実際にアメリカで臨床中毒専門医の先生たちと働いて大きくイメージが変わったのです。救急の研修をしたマサチューセッツ大学はたまたま中毒の専門医が大勢いました。その先生たちは救急医だからこそ患者の様子を瞬時に察して手がパッと動くのですが,落ち着いたところでなぜそういうアクションを取ったのか聞いてみると文献的裏付けを話してくれるだけでなく,薬理学や生理学,生化学といった基礎医学の知識から病態生理の説明をしてくれるという非常にアカデミックな一面を見せてくれました。そのような救急医かつ臨床中毒医の姿をみて,中毒学って面白そうだなと思ったのが臨床中毒学に進んだきっかけです。

中毒の専門医制度が確立していない日本では,救急医が中毒をある程度知っているのが当然で,院内で中毒患者に遭遇すれば救急の先生に相談していると思います。ところが,中毒学を学ぶ前に救急医として働いていた筆者自身を振り返ってみると「中毒患者は,なんだかよくわからないけれど,胃洗浄して活性炭投与して入院させて経過観察すればよい」という認識をもっていたように思います。「とりあえずビール」ならぬ「とりあえず胃洗浄と活性炭」です。実際に中毒を学んでみると,そんな「とりあえず」では対応できない目から鱗が落ちるようなことがたくさんあり,中毒の面白さに虜になりました。中毒は病態生理に基づいて理解すると,これ以上ないほどエキサイティングな内容がたくさん詰まっています。フェローシップを経て,中毒を専門としていくなかで感じた面白さを是非皆さんとシェアしたい,それが筆者の思いです。

筆者もまだまだ臨床中毒学のさわりを勉強した程度ですが,この本では臨床中毒学の奥深い世界のなかから皆さんに興味をもってもらえるのではと考えたテーマを16 個取り上げました。網羅的ではない点についてはご容赦ください。あまり複雑になりすぎないように,ただし,病態生理にも踏み込んで,わかっている範囲のエビデンスを含み,そして楽しんで読んでいただけるように工夫してみたので,興味が出たところから読んでみてください。筆者が感じた驚きと興奮を皆さんにも感じてもらえたら,そして皆さんのなかから臨床中毒学をもっと勉強してみたいという方が現れてくれたら,これ以上ない喜びです。


2022年1月

千葉拓世

目次

導入編

Chapter①

[実践ルール1]中毒診療の基本と実際の流れ

どんなときに中毒を疑うか?

MATTERS,TOXIDROME

検査

治療

Chapter②

[実践ルール2]TOX ACLS~中毒診療最初の15分(ACLS+α)

Airway(気道)

Breathing(呼吸)

Circulation(循環)

Dysfunction of CNS(意識)

Exposure(体温)

診断編

Chapter③

[実践ルール3]トキシドロームを使いこなす

トキシドロームとは?

アッパー系

ダウナー系

ポイントが見抜けるトキシドローム

Chapter④

[実践ルール4]心電図は役に立つtox screen! 中毒患者ではほぼ全例で行う

尿の中毒スクリーニングはよく考えて行おう

尿中薬物スクリーニング(誤解の原因)

尿中薬物スクリーニングが役に立つ場面

心電図はpoor man’s tox screen!

QT 延長作用のある中毒の探し方

Chapter⑤

[実践ルール5]中毒患者の診察では必ずクローヌスをチェック!

セロトニン症候群は意外と多い

医療システムにも影響を与えたリビー・ザイオン事件

意外な薬でセロトニン症候群

クローヌスが診断の鍵

セロトニン症候群の治療

Chapter⑥

[実践ルール6]要注意! 高体温は超危険な中毒のサイン

体温は中毒で最も大事なバイタルサイン?

中毒で高体温になるメカニズム

中毒による高体温は熱中症と同じ?

治療も熱中症と同じ?

知っておきたいexcited delirium

Chapter⑦

[実践ルール7]ギャップを使いこなせ! 浸透圧ギャップの意義

アニオンギャップ開大は中毒を疑う鍵

ギャップはあると萌えるけれど,なくても…浸透圧ギャップの使い方

隠れたギャップに要注意(lactate gap・saturation gap)

Chapter⑧

[実践ルール8]中毒患者では半減期を無視する

半減期は中毒では意味をなさない

半減期が無効になる理由

中毒患者の脳死判定は慎重に

治療編

Chapter⑨

[実践ルール9]“活性炭投与は1時間以内”に惑わされない

まずは覚えよう1 時間の壁

活性炭投与は場合によっては1時間を越えていても行う(一歩先に)

禁忌と適応外

投与の目的と投与法

Chapter⑩

[実践ルール10]意外な拮抗薬,β遮断薬を使いこなす

意外に多いカフェイン中毒,頻脈・低血圧にβ遮断薬を使おう

Sudden sniffing death syndrome

Chapter⑪

[実践ルール11]血液透析の始めどきを見極める

血液透析を考えるときの3 条件

そのほかに考えるべきポイント~常に臨床症状を考える

血液透析を実際に行うことが多い中毒は?

EXTRIP working group

Chapter⑫

[実践ルール12]いまをときめく脂肪製剤の使い方

脂肪製剤はなぜ効くの?

血液透析vs 脂肪製剤

使用製剤と使用量

副作用に注意

原因物質編

Chapter⑬

[実践ルール13]アスピリン中毒患者に挿管してはいけない

日常に潜むサリチル酸

押さえておきたい基礎

挿管したら呼吸器設定で1 回換気量と呼吸数を高くする

挿管されたサリチル酸中毒の患者はすぐに血液透析を

尿のアルカリ化の実際

慢性中毒にだまされない

Chapter⑭

[実践ルール14]三環系抗うつ薬の負のスパイラルに注意!

三環系抗うつ薬の作用はさまざま

重症度の評価は心電図で

痙攣は死の序章

重炭酸ナトリウムは積極的に使う~2 つの作用機序

重炭酸ナトリウムの投与方法

Chapter⑮

[実践ルール15]カルシウムチャネル拮抗薬では血糖値をモニタリング

血圧も脈拍も低いときは中毒を考える

2 種類のカルシウムチャネル拮抗薬。違いは?

血糖値がなぜ大事?

カルシウムチャネル拮抗薬中毒への対応

その他の治療

Chapter⑯

[実践ルール16]意外に知らないアセトアミノフェンのノモグラムの使い方

アセトアミノフェン中毒が重要な理由

アセトアミノフェン中毒の基本

ノモグラムの使い方

ラインクロッサーの存在

ノモグラムが使えるときと使えないとき

意識障害…これはアセトアミノフェン中毒じゃない?

Column

医師の通報義務

中毒コントロールセンター

大麻は安全?

毒キノコ

アメリカ社会の闇(麻薬依存)

アメリカの臨床中毒学フェロー,臨床中毒医

万能解毒薬(universal antidote)

新型コロナウィルスと臨床中毒学

one pill killer(ごくわずかでも危険な薬)

付録

知っておきたい事件・事故FILES

秘伝! いざというときの拮抗薬リスト

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書籍情報

  • ISBN:9784758322300
  • ページ数:208頁
  • 書籍発行日:2022年2月
  • 電子版発売日:2022年2月18日
  • 判:A5変型
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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