特集にあたって

清野　精彦

2020 年3 月11 日，WHO テドロス事務局長はCOVID-19 のパンデミックを宣言しました。3 月11 日現在， 感染者数の90 ％ は中国（ 感染者80,778：死亡者3,158），イタリア（12,462：827），イラン（9,000：34），韓国（7,755：63）であり，わが国では日本国内感染（616：15），クルーズ船（707：7）と集計されています。

3 月中旬に上記の序文を用意し，特集を企画したのですが，3 密（Three C’s）を避けるべく編集委員会が延期されるうちに，6 月19 日テドロス事務局長は「パンデミックは加速し，世界は危険な新局面に突入」と最大限の警戒を呼び掛けました。6 月のオンライン編集委員会で初めて本特集の企画が決定され，COVID-19 パンデミック第一線で診療・研究に取り組んでいらっしゃるわが国を代表する先生方にご執筆を依頼させていただきました。

世界の感染状況が加速度的に拡大しているなかですが，パンデミック宣言までの経緯とわが国の対応，SARS，MERS との比較，COVID-19 の病態と臨床像，SARS-CoV-2 ウイルスの特徴，CRS，SIRS と脳心血管合併症早期診断法（画像診断，PCR，抗原検査，抗体検査など），重症例に対するECMO の適応・効果，そして院内感染の予防と疾病管理などについてご執筆いただきました。なお，薬物治療・ワクチン治療については，10月現在世界的にもon going の状況であり，日本集中治療医学会のステートメント1），NIH COVID-19 treatment guideline2）などをご参照いただきたいと思います。

10 月29 日（3 日前）わが国の感染者は延べ10万人に到達し，死亡者数は1,760 人に至っています。一方，世界の感染者数は4,550 万人，死亡者数は118 万人と爆発的に増加しています。わが国ではGo to travel，Go to eat キャンペーンなどの経済活動が推進されていますが，ヨーロッパ各国は第二波の爆発的拡大のなかにあり，第一波の規模を大きく超える感染者が出ています。新規感染者数はドイツ，スペイン，イギリス，イタリア，フランス各国では連日1 万人を超え，再び外出禁止やロックダウンの措置が取られています。10月末のわが国の第二波の感染者数のトレンドは上昇に転じてきており，今後の爆発的感染拡大，医療崩壊の予兆にならないよう，心して備えなければなりません。

日本医科大学名誉教授，前日本医科大学千葉北総病院病院長（〒270-1694 印西市鎌苅1715） ICU とCCU 44（11）：651，2020