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- 西島 翔太
- 研修医・総合診療医のための 産婦人科ファーストタッチ
商品情報
内容
◆“いざ”というときのためにポケットに忍ばせたい産婦人科研修マニュアル
「小児科ファーストタッチ」に続く、産婦人科版がシリーズ第2弾として登場!女性診療といえば、産科では妊婦や胎児、婦人科では思春期から更年期、そして最近話題の緊急避妊薬や経口中絶薬、不妊症……と守備範囲の広さに苦手意識を感じる人も多いのではないでしょうか?
本書は、症状からの鑑別・診断や妊婦健診・胎児モニタリングの注意点、周産期の急変への対応法はもちろん、患者への説明例や処方例なども掲載し、見落としのない診療をサポートします。“複数の命”を守り、女性の生涯の健康を守る大切な1冊です。
あわせて読む → 初期研修医・総合診療医のための 小児科ファーストタッチ
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序文
序
アメリカのテレビドラマ「ER」をご覧になったことはあるだろうか。シーズン1第19話「Love’s Labor Lost」についてお話しさせていただきたい。
ERで働く内科医グリーンは、胃痛を訴える妊娠38週の妊婦を診察する。蛋白尿は陽性、血算は正常のため、グリーン医師は膀胱炎と診断しいったん帰宅させる。ところが、妊婦は病院駐車場で子癇を起こす(時刻は19:15)。妊婦は再度ERへ運ばれ、硫酸マグネシウムを静注されるも再度子癇を起こし、ジアゼパムを投与される。
その後妊婦の容体は落ち着き、グリーン医師は経腹超音波でbiophysical profile score 8点以上を確認し、胎盤に関し問題ないと判断する(19:40)。内診では子宮頸管は熟化していたため、産婦人科専門医と電話で相談のうえオキシトシンによる誘発分娩が必要と判断し、妊婦と夫から同意を得る。以下、その後の時系列である。
22:12 内診で子宮口5cm、展退度90%、station -2、CTGで遅発一過性徐脈を確認。
0:45 産婦が硬膜外麻酔を希望し処置を施す。このときも遅発一過性徐脈あり。
2:30 内診で子宮口8cm、展退度100%を確認。胎児徐脈であったため、子宮内へ生食を注入する。
3:15 分娩が近づき産婦人科専門医を何度もコールするも、応援がないまま子宮口全開大となったため、児の娩出を試みる。
4:13 専門医が来ないまま肩甲難産となりHELPERR手技を実施するも児の娩出には至らず。Zavanelli手技を行い、帝王切開を決定する。血圧は170/120mmHg。その後手術室で子癇を起こしたため気道確保し、血圧200/130mmHgに対しヒドララジンを投与。周囲のスタッフがパニックになっていたため、グリーン医師はいま起こっている状況を評価したうえでメンタルモデルの共有をスタッフと行い、帝王切開を開始。その後児を娩出するも、胎盤剥離後に大量出血に気付く。
4:42 新生児蘇生を行い、新生児科医到着後、蘇生成功。
4:45 産婦人科専門医が手術室に到着し手術に加わる。
5:30 閉腹する。
5:35 褥婦が再度急変。
5:42 除細動施行。グリーン医師は延々と救命処置を続ける。6:46 産婦人科専門医が褥婦の死亡を宣言。
周産期における急変が幾度となく出現するので壮絶な展開だが、本書で扱う項目が幅広く扱われているストーリーである。近年、ご存じのとおり産婦人科を目指す研修医は他科より少数といわれつづけているが、日本でもプライマリケア医が周産期医療に関わる施設もあるし、general physicianを目指すのであれば女性の一生を扱う産婦人科の研修は避けて通れない。このストーリーの細かなアセスメントは置いといて、グリーン医師はなかなか応援に来ない産婦人科医へ“CUS”のメッセージを送っている。CUSとは、
I am Concerned! 「気になります、心配です」
I am Uncomfortable! 「不安です」
This is a Safety issue! 「安全の問題です」
のことで、確固とした態度で、かつ相手に敬意をもって是正措置を主張(アサーション)する方法である。
産婦人科はチーム体制が最も大切な診療科と考える。共同執筆者の石田と私は海外医療に従事していた時期があるが、さまざまな国からやってきたスタッフと強固なチームを形成する苦労を経験している。しかしそこから逃げ、独りよがりの医療提供をしてしまえば、それは必ず医療事故の元となる。
チームとして動くとき、目の前で起きている事象を認知・評価・判断するために頭の中に形成される思考の流れ(メンタルモデル)は、他のスタッフへ共有する必要がある。このときに欠かせないのがCUSをアサーションすることである。また、安全で質の高い医療を提供するためには、エビデンスに基づいたツールである「チームSTEPPS」を活用することも重要である。チームSTEPPSはコミュニケーション、リーダーシップ、状況モニター、相互支援の4つのスキルを柱としているが、このうち相互支援をするうえでもCUSは重要な役割を果たす。
どの科で研修していても、立場の弱い研修医は上級医にアサーションをしにくいかもしれないが、もし本書を確認し、“I am Concerned”なら是非とも報告してもらいたい。それはあなたがチーム医療に加わると同時に、複数の命を守ることにもつながるからだ。
産婦人科は自身のモチベーションがあれば真のgeneral physicianを目指すことができる。是非本書を利用して日々の診療の研鑽を積んでいただきたい。
にしじまクリニック院長
西島 翔太
目次
第1章 総論
症状からみたプライマリケア
1 下腹部痛 ★★★★★
2 不正性器出血 ★★★★★
3 外陰部潰瘍 ★★★
4 尿失禁 ★★★
妊婦健診とコンサルテーション
5 妊婦健康診査 ★★★★★
6 未受診妊婦への対応 ★★
第2章 妊娠期
第1三半期の出血
7 流産 ★★★★★
8 異所性妊娠 ★★★
9 絨毛性疾患 ★★
第2・第3三半期の出血
10 前置胎盤 ★★★★
11 常位胎盤早期剥離 ★★★
妊娠に関わる疾患と病態
12 妊娠と貧血 ★★★★★
13 妊娠悪阻 ★★★★★
14 妊娠と甲状腺機能異常症 ★★★★
15 胎動回数減少 ★★★★
16 子宮内胎児死亡 ★★
17 静脈血栓塞栓症 ★★
18 妊産褥婦の頭痛とけいれん ★★★★
19 妊娠高血圧症候群 ★★★★★
20 糖代謝異常合併妊娠 ★★★★★
21 前期破水 ★★★★★
22 切迫早産 ★★★★★
23 頸管無力症 ★★★★
24 超音波による胎児評価と胎児発育不全 ★★★★★
細菌感染症
25 妊娠中の細菌性腟症 ★★★★
26 妊娠中の尿路感染症 ★★★★
27 B群溶連菌感染症 ★★★★★
28 劇症型A群溶連菌感染症 ★
ウイルス感染症
29 妊娠とHBV感染症 ★★
30 妊娠とHCV感染症 ★★
31 妊婦のHIV感染症 ★
32 TORCH症候群 ★★
第3章 分娩期
正常分娩
33 正常分娩の経過 ★★★★★
34 分娩中の胎児監視 ★★★★★
35 器械分娩 ★★★★
36 会陰切開 ★★★★
37 会陰裂傷縫合 ★★★★
専門的知識
38 骨盤位 ★★★★
39 双胎妊娠 ★★★
40 帝王切開 ★★★★
難産
41 遷延分娩 ★★★
42 分娩停止・閉塞性分娩 ★★★
43 分娩誘発 ★★★★
44 肩甲難産 ★★★
45 回旋異常 ★★★
分娩第3期
46 分娩第3期以降とその管理 ★★★★★
47 産後異常出血(PPH) ★★★
48 胎盤遺残と用手剥離術 ★
49 子宮内手技 ★★
第4章 新生児
50 出生後新生児のルーチンケア ★★★★★
51 新生児蘇生法(NCPR) ★★★★
52 新生児の紹介・搬送の目安 ★★★
第5章 産褥期
53 産婦健康診査と産褥合併症 ★★★★
54 産褥熱 ★
55 乳房トラブル ★★★
第6章 婦人科
56 月経困難症 ★★★★★
57 無月経 ★★★★
58 性交痛 ★★★
59 不妊症 ★★★
60 人工妊娠中絶と性暴力対応 ★★★
61 更年期障害 ★★★★★
62 骨盤臓器脱 ★★★★
婦人科腫瘍
63 子宮筋腫(平滑筋腫) ★★★★
64 子宮肉腫 ★
65 子宮内膜症 ★★★
66 子宮腺筋症 ★★★
67 子宮頸癌 ★★★
68 子宮体癌(子宮内膜癌) ★★
69 卵巣腫瘍・卵巣癌 ★★★
感染症
70 クラミジア感染症 ★★★★
71 淋病 ★★★
72 性器ヘルペス ★★★
73 尖圭コンジローマ ★★★
74 腟カンジダ症 ★★★★★
75 梅毒 ★★
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書籍情報
- ISBN:9784840754453
- ページ数:504頁
- 書籍発行日:2022年7月
- 電子版発売日:2022年8月26日
- 判:B6変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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