第2版の序

本書の初版が出版されてから3 年半が経過した．この間にも検査の分野も含め，医学の進歩は目覚ましいものがあった．今回の改訂にあたっては，こうした進歩に対応するため，改善すべき箇所を加筆・修正した．また執筆者の所属が変更になったり，都合により執筆者が交代したところもあるが，基本的には初版の内容を踏襲し，さらに充実したものになるように配慮した．

本書の趣旨は，初版の序にもあるように，なるべく多くの検査項目を掲載し，事典のように使っていただくことである．「検査値事典」と銘打ったのも，そうした意味を込めて考えたものである．事典といっても，国語辞典のように単なる言葉の説明だけではなく，その検査項目を理解するために必要な知識の全体像を，コンパクトにまとめるように意図した．各項目が1 頁に収まるように配慮してあり，忙しい医療従事者でも，本書の該当項目を見れば，短時間のうちに，その検査の基準値や検査方法，鑑別診断に必要な疾患名は勿論，その検査のもつ意味や背景，さらには内容を解釈する際に必要な知識や注意点など，必要にして十分なものになるように考慮して作られている．

臨床検査に関する参考書は数多く出版されているが，あまり使用されなくなった検査項目まで含めて，なるべく多くの項目を掲載するべく意図されて作成されている参考書は極めて少ない．冒頭でも述べたように，医学・検査の進歩は目覚ましく，新しい項目が臨床現場に登場するかと思えば，それに伴い，いくつかの項目が表舞台から姿を消してゆく．とは言え，そうしたあまり使われなくなった項目や，非常にまれにしか利用されない項目でも，ときには臨床現場で，あるいは知識として必要となる場合があることは十分予想される．そうした際に，本書をひもとけば，短時間のうちに，効率的に必要な知識が得られる．勿論，先端的な項目や，臨床現場で良く利用される項目は含まれているので，本書が1冊手許にあれば，全てが解決されるわけである．本書の出版の意図はまさにその点にある．

先に出版された，本書の姉妹版ともいえる『コンパクトガイド　検査値事典』と『診断に直結する　検査値の読み方事典』は，本書とは異なり，ともに項目をしぼり，臨床で主として使用される検査項目に主眼を置いて作成してある．必要に応じて，本書と併用していただけると，より効果的な運用が出来ると思われる．

本書が医療従事者の皆さんに有効に利用され，ひいては診断や治療のお役にたてることを心から願うものである．

平成26 年6月吉日

監修者　中原 一彦
東京大学名誉教授
前東京大学医学部附属病院検査部長
現（独）大学評価・学位授与機構教授