はじめに

私は、さまざまな場面で看護管理者の皆さんから話を聞く機会があります。その中で、看護師長となって「自分なりに管理を楽しんでいる人」と「うまくいかずに思い悩んでいる人」がいることに気づきました。昨今は看護基礎教育の一つとして看護管理を学ぶ機会があります。また、世の中にはさまざまなリーダーシップ本や看護マネジメント本が出版されています。一方で、新任の看護師長として初めて病棟のトップに抜擢された際に、どのような心がまえで臨み、どんな立ち居振る舞いをしていけばよいのか、どういった将来ビジョンを描いて病棟マネジメントをしていけばよいのかといったことを具体的に記したものは少ないようです。そこで「看護師長としての所作」をまとめたものがあれば、新人の看護師長や、今まさに悩んでいる看護師長の背中を後押しできるのではないかと考えて、自らの経験をもとにまとめたものが本書です。

本書では、看護師長として必須の心がまえや、日々の管理業務におけるポイント、さらに就任初日の振る舞い方に至るまでを解説しています。以下に少し引用しましょう。

就任初日の朝、最も大切なことは「明るく元気にあいさつする」ことです。（中略）「本日から師長になりました○○です」「頑張っていきますのでよろしくお願いします！」と、笑顔で元気よくあいさつしましょう。

「そんなこと？」と思われたかもしれません。“そんなこと”がなぜ大切なのか、まずはページをめくって読んでみてください。本書を読み、「看護師長としての所作」を実践していくうちに、看護管理の面白さや醍醐味がじわじわと実感できるようになっていくはずです。

突然内示が出されて「やっていけるだろうか」と不安に思っている人も、看護師長となって数年経つけれど「これでよいのだろうか」と日々悩んでばかりという人も、選ばれたからには看護師長という仕事を楽しんでやってもらえたらと思います。実際に、看護師長の仕事は面白いものです。私も長年、看護管理者を経験してきましたが、振り返って考えてみると最も楽しかったのは看護師長時代でした。病棟のトップとして30〜40人のスタッフから成るチームを率いて目標に向かっていくさまは、まさに体育会系のノリでした。スタッフにも患者にも直に接し、「これをやろう」と声を上げるとスタッフも「やろう」という気になってくれ、病棟が変わったりよくなったりという結果が見えることに本当にわくわくしました。

リーダーとして病棟マネジメントを担い、未来を切り開いていこうとしている皆さんにとって、本書が少しでもお役に立てればと願ってやみません。

2023年2月

坂本 すが