序

本書の第1 版は，1966 年に出版され単純Ｘ線撮影法のバイブルとして長年放射線科医，技師，そして学生に親しまれた名著『図説骨Ｘ線撮影法』を基に，著者らがさまざまな工夫や新たな内容などの多くの改訂を加え1999 年に『図説単純X 線撮影法』として改めて出版されたものです。頭部，筋骨格系に加えて胸部，腹部やその他の軟部組織などほとんど全ての領域の単純X 線撮影法が画像アトラスをふんだんに使用しつつ，わかりやすい文章によって解説されており，好評を得ました。そして第1 版も10 年以上にわたって出版し続けられることとなり，単純X 線撮影法解説書のスタンダードとして前書に優るとも劣らない評価を確立したと言っても過言ではありません。

このたび出版される改訂第2 版『新・図説単純Ｘ線撮影法』は，第1 版の「イラストを主体とした目で見てわかる単純X 線撮影法の解説書」という基本方針を踏襲しつつ，従来見開き2 ページに2 から４種の撮影法が解説されていたものを1 撮影法1 ページを基本とし，記述を簡明な箇条書きとすることで，よりわかりやすい解説書となることを目指しています。また，現状に合わせて新しい撮影法17 を加えると共に使われなくなった撮影法を削除し，最終的に171 の撮影法，さらに体位や入射角度の違いによる変化を修正するための修正用９パターン像12 種，を収載することで，ほぼ全ての領域の単純X 線撮影法を網羅しています。そして何より今回の改訂版の最大の特徴は，各分野の第一線で活躍している臨床医の執筆による「診断・読影のポイント」の項を設け，医師が何を目的にその撮影法をオーダーするか，画像のどこに注目するか，画像から判ることは何かを簡潔に解説している点です。このように「医師が画像検査からどのような情報を得たいか」との視点から書かれたX 線撮影法の解説書は類をみない初めてのものでしょう。

近年，高磁場のMRI，多列検出CT やPET など画像診断技術の進歩は著しく，単純X 線の役割は縮少しているとの意見もありますが果たしてそうでしょうか。こうした新たな画像診断法の出現，進歩により単純X 線撮影の意義，目的がより明確となりむしろその重要性が見直されているとは言えないでしょうか。単なる技術の解説だけで無く，医師が画像からどのような情報を得て，それがその後の診療にどのように役立つかを理解した上で撮影をすることで診断の精度が向上する事は間違いありません。国民の目が放射線被曝に極めて敏感になっている現在，最小限の被曝量で最大限の情報を得る必要性はかつて無いほど高まっています。本書はこうした要求に応える必携の書と言えます。

今回，判型を従来のA4 からB5 判に小型化し，携帯しやすくしたことからも，全ての放射線技師そして放射線技師学校で学ぶ学生の方々が常に本書を身近に置き，参考にして，今後の医学，医療の発展に貢献される事を切に願っております。

平成24 年1 月

慶應義塾大学医学部整形外科学教室　千葉一裕