まえがき

人は誰しも健康で、（できれば美しく）長生きしたいものです。しかし、世の中には膨大な数の疾患が存在します。ちまたでは健康で長生きする秘訣として、食事、運動、睡眠の3つのキーワードをよく耳にします。その3つのキーワードにもさまざまな方法や考え方があり、実践している方も多いことでしょう。ただ、皮肉にも、そういった“病気になりにくい” 生活を長年実践あるいは心がけていても、病気というのは突然襲ってくるものです。病気には発生頻度の高いものから低いもの、また、治癒する可能性が高いものから治癒困難なものまで、さまざま存在します。

食生活などで明らかに病気になってしまうような日常を送り続け、案の定病気になってしまった、または事故・事件などによる外傷のような、いわゆる原因がはっきりしている病気もあれば、原因がまったくわからない病気もあります。しかし、皮肉にも、世の中に存在する疾患は後者のほうが圧倒的に多いのです。そのようなはっきりとした原因がわからない疾患にかかってしまった患者さんには罪はないのです。病気になることで、初めて健康のありがたさに気づく方もいらっしゃるかもしれません。

本書の、まさに今この文章を読んでくださっている方は、医療関係者の方でしょうか。それとも医療従事者を目指している学生の方でしょうか。あるいは、健康や病気に興味がある方でしょうか。病気は、思いもよらぬタイミングで容赦なく降り注いできます。でも、世の中には人類が長い年月をかけて発展してきた「医学」、そしてそれを応用する「医療」が存在します。病院等の医療施設や福祉施設、そしてそこで働くスタッフの方達が、先端技術を駆使して医療にあたります。仮に病気になったとしても、そういった医療が支えになってくれます。ですから、罪のない患者さんにとって、医療は非常に尊い存在となることでしょう。

本書は、現役ナースの方のご意見を聴取して、日常遭遇する頻度の高い疾患や、もう一度学びたいと思う疾患を集め、厳選に厳選を重ね選択した疾患の病態生理・症状・治療およびケアを中心に執筆したものです。

本書も、シリーズである拙著『なんでやねん！根拠がわかる解剖学・生理学 要点50』の構成を踏襲しました。3人の登場人物（医師、研修医、新人ナース）による、関西弁を交えた会話調による話の展開によって、「臨床に役立つ」、「丸暗記から“解放” される」、「教科書では書かれていない“根拠” を知ることができる」、「最後まで楽しく“読み通す” ことができる」ことを意識して執筆しました。

一人でも多くの方がこの本を読んで病態生理学に精通し、ぜひ、弱者である患者さんへのケアにあたってほしいと切に願っています。そして最後には、一度きりの人生、たとえいかなる結果になろうとも、患者さんから「あなたに診て（看て）もらえてよかった」と言ってもらえたら、医療者にとっても患者さんにとっても、とても幸せな人生となるのではないでしょうか。本書で扱う疾患・症状の数は24ですが、読者の方から、もっと知りたい・学びたいと思う疾患がありましたら、出版社へご意見などをお寄せいただけたら幸いです。

最後に、シリーズ第3弾にあたる本書の出版を快く引き受けてくださったメディカ出版の方々、引き続きインパクトある３人のキャラクターや見やすいイラストの数々を作成してくださったイラストレーターの方々に深く感謝をいたします。

それでは、ちょっと風変わりな参考書『そうやったんか！ ケアの根拠がわかる病態生理学 疾患＆症状24』の世界へとあなたをお連れしたいと思います。さっそく進んでいきましょう！

2023年3月吉日

川畑 龍史、濱路 政嗣