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- 大島 猛史
- よくわかる耳管開放症~診断から耳管ピンまで
商品情報
内容
耳管開放症とは何か…病態や症状、検査、診断に留まらず、耳管の構造、動物差まで、現在までに行われている本症の研究の全てと世界初の耳管開放症治療機器「耳管ピン」の手術やその他治療法についても紹介しました。
目の前の患者が耳管開放症なのか、そして治療が必要な症状なのか、診療所での鑑別のためにぜひお役立てください。
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序文
序文
本書は耳管開放症の実践的解説書ですが,併せて「耳管開放症の物語」としての性格も持っていますので,多くの方々に楽しんでいただけるものと思います.
本書出版のモチベーションとなったのは,数年前の小さな出来事でした.中国の某市に招かれ,耳管開放症の講演を行ったのですが,講演終了後に,1人の医師がサインを求めて一冊の本を私に差し出しました.驚いたことに,筆者が2005年の日本耳鼻咽喉科学会宿題報告時に作成したモノグラフ「耳管閉鎖障害の臨床」でした.なぜここ中国に,という疑念が湧いた次の瞬間,私製のいわば海賊版とわかり,さすが中国と苦笑したものでしたが,同モノグラフが海外でも高い評価を得ていることを知ったのは,予期せぬ嬉しい事件でした.
その宿題報告は,東北大学耳鼻咽喉・頭頸部外科の教授在任中に,教室の諸君と一丸となって,2年間心血を注いで研究を進め,準備したものでした.耳管開放症の主要症状としての自声強聴に焦点を当てて,工学や音響学の専門家との共同研究を行い,耳管開放症の臨床に,科学的な解釈を可能な限り加えました.
モノグラフ刊行から15年以上の歳月が流れました.この間,わが国では,関連する学会の努力によって耳管診療の標準化が進められ,耳管開放症診断基準案,耳管機能検査マニュアル,耳管狭窄症診断基準,バルーンによる耳管開大術の適応指針など,多くのガイドラインが整備されました.また,治療面では,2020年5月に難治例耳管開放症に対して耳管ピンが薬事承認され,2021年から,日本耳科学会認定の実施医により,耳管ピン挿入術が保険診療として開始されています.
本書は,前述したモノグラフの科学的精神を踏襲しつつ,耳管診療の進歩に対応し,全面的な見直しを加えて完成したものです.第一線の開業医から,鼓膜形成術や真珠腫などの耳科手術を専門とする医師,研修医,耳鼻咽喉科専攻医,言語聴覚士まで,幅広く役立つ最新情報を満載しています.
本書の刊行にあたり,共著者各位に感謝致します.池田怜吉博士は仙塩利府病院耳科手術センターで筆者と共に勤務する中で,耳管開放症に興味を持ち,多くの英文論文を執筆し,我々の耳管臨床を国際的に発信し続けています.川瀬哲明教授,菊地俊晶博士,大島猛史教授,香取幸夫教授は宿題報告でも主要な役割を果たした方々です.小池卓二教授と坂本修一教授はそれぞれ工学,音響学の立場から共同研究に関与した方々です.これらの方々の尽力が,本書に心地よいサイエンスの香りを与えていると思います.
本書の出版を快諾し,辛抱強い編集作業をしてくださった全日本病院出版会の加藤百恵さん,小林玲子さん,末定広光社長に著者を代表して御礼を申し上げます.
本書が,皆様の耳管臨床および耳科学に新たな視点と潤いを与えることを期待します.
2022年4月吉日
著者を代表して 小林 俊光
目次
Ⅰ.耳管閉鎖障害とは?
(1) 耳管閉鎖障害の分類
(2) 耳管閉鎖障害における自声強聴の苦痛
Ⅱ.耳管の動物差
(1) 耳管開放の観点から;in vivoでの計測結果を含めて
Ⅲ.耳管閉鎖障害の疫学
(1) 一般人口における耳管開放症の頻度
(2) 東北大学における耳管開放症の外来統計
(3) 開業医における耳管閉鎖障害の頻度
(4) 「耳管開放症・耳管閉鎖不全の診療の実態ならびに耳鼻科医の意識」に関する全国アンケート調査
Ⅳ.耳管開放症の診断法
(1) はじめに
(2) 問 診
(3) 鼓膜所見
(4) オトスコープによる患者発声の外耳道からの聴取
(5) 耳管機能検査装置を用いた検査
(6) 内視鏡的診断法
(7) 新しい音響学的診断法の考案と臨床応用
(8) 耳管の新しい画像診断法
Ⅴ.耳管開放症の症状に関する研究
(1) はじめに
(2) 自声強聴に関する研究
(3) 耳管開放症の症状としての鼻声についての研究
Ⅵ.耳管開放症の原因
(1) はじめに
(2) 体重減少に伴う耳管開放症
(3) 妊娠と耳管開放症
(4) 成長ホルモン欠乏と耳管開放症
(5) 低血圧と耳管開放症
(6) 透析・脱水と関連した耳管開放症
(7) シェーグレン症候群と耳管開放症
(8) 上顎前方延長術に伴う耳管開放症
(9) 顔面外傷に伴う耳管開放症
(10) 三叉神経障害による耳管開放症
(11) 上咽頭がんに対する放射線療法後の耳管開放症
(12) 急性中耳炎後に一過性に発症した耳管開放症
Ⅶ.体位変化と耳管開放症
(1) はじめに
(2) 体位変化に伴う耳管機能変化―ヒトにおける計測―
(3) 体位変化に伴う耳管機能の変化―動物実験―
(4) 体位変化および頸部圧迫時の耳管の変化(内視鏡所見)
(5) 体位変化の耳管および周囲構造への影響(画像解析)
Ⅷ.鼻すすり型耳管開放症
(1) はじめに
(2) “鼻すすりロック”による耳管開放症状の軽減
(3) 鼻すすり型耳管開放症が引き起こす中耳病変
(4) 鼻すすり型耳管開放症の取り扱い
(5) 鼻すすり型耳管開放症と真珠腫
(6) 鼻すすりロック時の耳管咽頭口所見
(7) 耳管の鼻すすりロック現象―CT,MRIによる観察―
(8) 鼻すすりによる耳管の変形―有限要素モデルを用いた解析―
Ⅸ.耳管開放症の隠蔽(masked patulous Eustachian tube)
(1) はじめに
(2) 鼓膜形成術後に顕在化した耳管開放症
(3) 耳硬化症に合併した隠蔽性耳管開放症
(4) 慢性穿孔性中耳炎における隠蔽性耳管開放症
(5) 真珠腫における隠蔽性耳管開放症
Ⅹ.耳管開放症診断基準
(1) 耳管開放症診断基準案2016
(2) 耳管開放症診断基準に則った診断の実際
(3) 耳管開放症確実例における自覚症状と検査陽性率
Ⅺ.耳管閉鎖障害の治療
(1) 総説―本邦および世界における耳管閉鎖障害治療の現況―
(2) 我々の治療方針(生活指導/生理食塩水点鼻療法/ルゴールジェル注入療法/鼓膜への操作による治療/耳管ピンによる治療)
参考文献
付録
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書籍情報
- ISBN:9784865198126
- ページ数:284頁
- 書籍発行日:2022年5月
- 電子版発売日:2023年4月26日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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