序文
2022年より日本専門医機構認定の内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医制度が発足いたしました.その理念として,「甲状腺・副甲状腺・副腎・下垂体疾患や骨粗鬆症などの内分泌疾患および糖尿病・脂質異常症・肥満症に代表される代謝疾患を診療することができる医師を養成し,国民の健康増進に貢献することを目的とする」ことが掲げられています.これから本領域を目指す先生方は,この理念を実現できる内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医取得が必須となります.
これまで糖尿病専門医と内分泌代謝科専門医はそれぞれ日本糖尿病学会,日本内分泌学会が別々に認定してきました.今回新たにできた内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医は,両学会が共同でその整備を行い,今後も共同で運用していきます.そしてそのためのガイドブックが必要となり,今回,両学会が力を合わせて本ガイドブックを作成いたしました.
作成にあたり,まず同専門医のカリキュラムを網羅するとともに,実践的に必要な知識だけではなく考え方を学べるように工夫しました.たとえば「内分泌代謝疾患エマージェンシー」のセッションを設けました.また最新のガイドラインを掲載するとともに,自分で病態を考えることができるように「ガイドラインに合わないときの考え方」という項目を入れました.
同専門医はゴールではなく,専門医としての活動の最初の足がかりです.内分泌代謝・糖尿病領域は奥が深く,病態・診断・治療についても日進月歩であり,一生学び続ける姿勢が重要です.本ガイドブックが,単に同専門医取得のためだけではなく広く日常診療で活用され,さらなる研鑽のきっかけになることを心から願っております.
最後になりましたが,本ガイドブックは下記の編集委員の先生方のご尽力のもと作成いたしました.また両学会の理事長をはじめ,多くの先生方のご協力・ご支援をいただいたことに心から感謝申し上げます.
2023年4月
内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医研修ガイドブック編集長
髙橋 裕,金藤秀明
【編集委員】
岩間信太郎,駒津光久,櫻井晃洋,田辺晶代,谷澤幸生,中西修平,西尾善彦,橋本貢士,松久宗英,綿田裕孝(五十音順)
刊行によせて
平成30年度に,日本専門医機構が専門医の認定を行う新専門医制度が開始されました.この新専門医制度では,基本的な19の診療領域(内科,外科など)を取得したうえで,サブスペシャルティ領域の専門医を取得する2段階の仕組みが基本となりました.そして,医道審議会の委員とアカデミアからなる「サブスペシャルティ領域の在り方に関するワーキンググループ」が令和2年3月5日に報告書を発表し,内分泌代謝と糖尿病については「領域として一部包含関係にあること,実態として両者を合わせて標ぼうされることが多いことを勘案し,連動研修を行い得る領域に内分泌代謝・糖尿病内科(領域)として集約」する方針が示されました.かくして内分泌代謝・糖尿病内科(領域)の専門医制度は,日本内分泌学会と日本糖尿病学会の両学会で構築,運営することとなり,新専門医制度の内科専門医の資格を取得した者を対象に,令和4年度から内分泌代謝・糖尿病内科(領域)専門医の試験が開始される運びとなりました.
前述のとおり,学会が認定する専門医から日本専門医機構が認定する専門医へと,専門医制度は大きな変革期を迎えました.しかしながら,内分泌代謝・糖尿病内科の医師に求められるものが変わるものではありません.「内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医研修ガイドブック」は,日本内分泌学会の「内分泌代謝科専門医研修ガイドブック」と日本糖尿病学会の「糖尿病専門医研修ガイドブック」を1冊にまとめ,さらには専門医を目指す専攻医が学びやすいように配慮されたものです.同領域専門医を目指す際には,ぜひこのガイドブックを用いて理解を深めていただきたい,専門医取得後も手元に置いて診療に役立てていただきたい,そして本ガイドブックによってわが国における内分泌代謝・糖尿病内科の診療レベルがさらに高まってほしいと,心から願います.
最後になりましたが,本ガイドブック刊行に際してご尽力いただきました関係者の皆様に心から感謝申し上げます.
令和5年4月
日本内分泌学会代表理事
有馬 寛
刊行によせて
この度,日本専門医機構が認定する新しい内科サブスペシャルティ領域として,内分泌代謝・糖尿病内科領域がスタートすることになりました.これまで当該領域に従事する専門医については,日本内分泌学会が内分泌代謝科専門医を,日本糖尿病学会が糖尿病専門医をおのおの育成してきました.いずれも高度の専門的知識や診療技術をもった専門医であり,わが国における当該疾患領域の診療の維持・向上に貢献してきました.今般新たに創設された内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医には,多岐にわたる当該領域の疾患について適切に診断し治療に結びつけ,必要があればより高度の診療を継続する役目を担う専門医と位置づけられるものです.本領域に興味をもっている皆さん,また研修を始めようとしている皆さんに不安なく研修をスタートしていただくために,日本糖尿病学会と日本内分泌学会は,約3年にわたり緊密に連携して制度設計・整備を続けてきました.本領域は新たに創設された領域ですので,日本専門医機構や基本領域を担当する日本内科学会の承認も受けながら,新しい領域の専門医像,研修内容,研修施設,試験や認定の手順などを整備して,このサブスペシャルティ領域のスタートの準備をしてきました.今回刊行される「内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医研修ガイドブック」には,その成果の一つとして,専攻医の皆様,これから専攻医を目指す方々にお届けするものです.このガイドブックを活用して,内分泌代謝・糖尿病内科領域の研修を実りあるものにしていただき,多くの方が本領域の新しい専門医となっていただけることを祈念しています.
最後に,本領域の整備をともに進めていただいております代表理事 有馬寛先生をはじめとする日本内分泌学会の先生方,また本書の作成に大変なご尽力をいただきました髙橋裕先生,金藤秀明先生をはじめとする両学会からの編集委員の先生方に深謝いたしますとともに,本領域の穏やかな船出と益々の発展を祈念したいと思います.
令和5年4月
日本糖尿病学会理事長
植木浩二郎