序文

このたび，『新OS NEXUS No.6　脊椎固定術の基本手技』を上梓させていただくことになりました。『新OS NEXUS』の脊椎シリーズ第一弾『ベーシックな脊椎除圧術のすべて』（新OS NEXUS No.3）を昨年発刊いたしまして，脊椎手術の基本である脊椎除圧術にお役立ていただいていると存じます。今回は除圧術に次ぐ基本手技となる「脊椎固定術」ですが，近年の超高齢社会において脊柱変形や不安定性を伴う症例も多く，脊椎固定術の適応が増えています。近年の脊椎instrumentationの発展や術中ナビゲーションシステムなどの手術支援機器の登場も手術成績や安全性の向上につながり，現在脊椎固定術が多く実施されている大きな要因となっています。

本誌では，まず，「脊椎インプラントの設置と採骨・移植骨」として，脊椎手術で用いるインプラントの特徴を概説いただき，汎用されているスクリューの挿入法について脊椎の部位別に項を設けました。腰仙椎・骨盤固定はいくつかの手技がありますので別項で解説いただいています。また，重度の骨粗鬆症や菲薄化した椎弓根をもつ患者などではスクリューの固定性が不十分ですので，フックやワイヤー（ケーブル）の使用法についても習熟しておくと安心です。脊椎固定術の大原則は骨癒合ですので，採骨法や各種人工骨，また骨癒合達成のための骨母床作成法も解説いただいております。

続いて「頚椎，腰椎の部位別に代表的な脊椎固定術の手術手技」について，美しく一目でわかりやすいシェーマと術中動画を交え，手術手技をpointごとに解説いただいています。頚椎固定術の項では，さまざまな後方アプローチの頚椎固定術を紹介いただき，頚髄前方圧迫病変に特に有効な頚椎前方固定術についても解説いただきました。腰椎固定術は特に多く実施されており脊椎固定術の基本手技となっていますが，総論とともに，さまざまな後方アプローチによる腰椎固定術の手術手技，最近の側方経路腰椎椎体間固定術，症例に応じて大変有効な腰椎前方固定術を網羅的に執筆いただいており，本書を通読いただくことにより頚椎・腰椎固定術の基本手技が身につく内容となっております。

最後に「基本的手術手技」として，治療としても高位診断としても有効な神経根ブロックの基本手技と，脊椎圧迫骨折に対するBalloon Kyphoplasty（BKP）を取り上げました。いずれも重要な手技であり，是非ご参考にしてくだされば幸いです。

本書は，現在第一線でご活躍中の先生方にご執筆を賜りました。おかげさまで，脊椎外科医を目指す若手医師には脊椎外科の入門編としてわかりやすく，すでにご経験のある先生方には更に安全・確実な手術手技を得られるよう，とても充実した内容となりました。大変ご多忙の中，ご執筆ならびに手術動画作成をくださった諸先生方ならびに出版に関わる皆様に，心より御礼申し上げます。

2023年4月

名古屋大学大学院医学系研究科整形外科学教授
今釜史郎