講座 精神疾患の臨床 8 物質使用症又は嗜癖行動症群 性別不合

  • ページ数 : 616頁
  • 書籍発行日 : 2023年6月
  • 電子版発売日 : 2023年7月28日
¥19,800(税込)
ポイント : 360 pt (2%)
今すぐ立ち読み
今すぐ立ち読み

商品情報

内容

ゲーム耽溺や性の多様性など新しい概念をICD-11に即して徹底解説!

アルコールやニコチンなどの嗜好品や薬物による依存,ゲームやギャンブルなどの嗜癖行動,放火・窃盗などの衝動制御の障害,小児性愛やのぞき・盗撮・痴漢などいわゆる性嗜好の障害であるパラフィリア症のほか,これまで「性同一性障害」として知られていた概念を一新した「性別不合」についても詳述.ICD-11に準拠した解説に加え,社会制度や実地臨床等について,症例呈示もまじえてわかりやすく紹介している.

※本製品はPCでの閲覧も可能です。
製品のご購入後、「購入済ライセンス一覧」より、オンライン環境で閲覧可能なPDF版をご覧いただけます。詳細はこちらでご確認ください。
推奨ブラウザ: Firefox 最新版 / Google Chrome 最新版 / Safari 最新版

序文

本書では,いわゆる依存または嗜癖に関係する物質使用症又は嗜癖行動症群(disordersdue to substance use or addictive behaviours) とそれに関連する衝動制御症群(impulse control disorders)およびパラフィリア症群(paraphilic disorders)を取り上げている.また,これらの症群とは別に性別不合(gender incongruence)に関する諸項目も収載している.

それぞれの症群および性別不合は,日々の臨床で使用されている現行の国際疾病分類第10版(ICD‒10)から第11版(ICD‒11)で大きく変貌を遂げた.本書は,本シリーズの他巻と同様にICD‒11の分類や診断要件に従って執筆されている.もちろん,ICD‒10からの変化や,米国精神医学会によるDSM‒5の診断基準との関係も必要に応じて解説している.

物質使用症又は嗜癖行動症群に関してICD‒10からの最も大きな変化は,この疾患群に嗜癖行動症が加わったことである.ICD‒10では[成人のパーソナリティおよび行動の障害]カテゴリーの「習慣および衝動の障害」に分類されていた「病的賭博」が,ICD‒11では「ギャンブル行動症」と名称を変更して,この症群に分類された.「ゲーム行動症」は,新規に疾病化され,同じくこの症群に分類された.

一方,物質使用症群の変化としては,まず,精神作用物質の「有害な使用エピソード」のような新しいカテゴリーが収載された.また,ICD‒10までは,診断は本人が示す症状等によって下されていたが,ICD‒11では,物質使用による他者への健康面での害も,本人の診断対象となった.さらに,物質依存の診断要件が大幅に簡素化されている.本書では,両症群の概念,疫学,病態,診断,治療の総論に加えて,個々の疾患に関する解説がなされている.物質使用症群の各論に関しては,ICD‒11に収載されている物質の中で,日常臨床で遭遇する可能性の大きい物質を選択して解説した.衝動制御症群では,既述の通り病的賭博が嗜癖行動症群に分類された.また,「強迫的性行動症」が新規に収載された.後者はDSM‒5での収載が見送られた経緯があり,一方で,将来的に嗜癖行動症に再分類される可能性も指摘されている.本書3章では,衝動制御症群と近縁の嗜癖行動症との関係についても論じられている.さらに薬物治療も含めて治療法が確立されていない中で,本症群の臨床に取り組んでいる現状からの報告も収載されている.

パラフィリア症とは,非定型的な性的興奮のパターンが持続的かつ強烈であることを特徴とする疾患であり,ICD‒10では「性嗜好障害」と呼ばれている.ICD‒10では,特定の性的逸脱行動の記述に終わっていたが,ICD‒11では特定の性行動が非定型的であるという観点だけでなく,持続的で強烈な性的興奮のパターンが存在することが診断の必須要件となっている.それにより,ICD‒10に収載されていたフェティシズム,フェティシズム的服装倒錯症等がICD‒11で削除されている.本書4章では,他の症群と同様に本症群に分類されている各症の診断や様々な治療の試みが記載されている.

既述の通り,性別不合は上記の4症群とは性質を異にしている.ICD‒10における「性同一性障害」は前述の「性嗜好障害」や「習慣および衝動の障害」と同様に[成人のパーソナリティおよび行動の障害]カテゴリーに分類されていた.「性別不合」はICD‒11で導入された性のあり方に関する診断概念であり,その特徴は実感する性別と割り当てられた性との間の著しい持続的な不一致である.性別不合はICD‒10の性同一性障害と異なり,名称に「障害」がついておらず,定型的な男女を超えた多様な性のあり方を含んでおり,そして何より精神疾患に分類されなくなっている.一方で,性別不合においては,ホルモン治療や手術など精神科の枠を超えた治療が求められる場合がある.さらに,日常生活において本人が遭遇する様々な問題や社会制度が抱える課題も多い.本書5章では,これらの現状を,症例を示しながら分かりやすく解説している.

最後に,本書の企画に協力をいただいた,齋藤利和先生,村松太郎先生,原田隆之先生にお礼を申し上げる.先生方の優れた見識と献身的なご協力がなければ本書は完成しなかった.また,実際に各項目の執筆を担当された多くの先生方にも感謝したい.自画自賛のようであるが,お陰様で最新の知見を盛り込んだ情報量の多い一冊を世に送り出すことができた.本書が,多くの先生方の臨床や研究に貢献できることを願う.


2023年5月

国立病院機構久里浜医療センター名誉院長
樋口 進

目次

1章 物質使用症群

物質使用症の概念 (齋藤利和)

物質使用症の疫学

 アルコール・タバコ(ニコチン)使用 (尾﨑米厚,金城 文)

 薬物使用 (嶋根卓也)

物質使用症の病態

 生物学的視点 (曽良一郎)

 心理社会的視点 (松本俊彦)

物質使用症の診断 (宮田久嗣)

物質使用症の治療

 心理社会的治療-アルコール使用症を中心に (角南隆史,杠 岳文)

 認知行動療法 (澤山 透)

 薬物療法 (真栄里 仁,樋口 進)

 家族支援 (森田展彰)

 アルコール使用症・薬物使用症における医療・地域連携 (太田順一郎)

Topics 自助グループ,回復施設 (吉村 淳)

物質使用症 各論

 アルコール使用症 (木村 充)

Topics 飲酒運転対策 (菅沼直樹)

 大麻使用症 (小林桜児,西村康平)

Topics 大麻合法化とその影響 (嶋根卓也)

 鎮静薬,睡眠薬又は抗不安薬使用症 (加賀谷有行)

 精神刺激薬使用症 (成瀬暢也)

 ニコチン使用症 (中村正和)

 その他の物質使用症 (宇佐美貴士,松本俊彦)

物質使用症の予防・対策

 国の予防・対策 (松井佑樹)

 地域における予防・対策 (白川教人,片山宗紀,佐々木祐子)

Topics COVID-19と物質使用 (湯本洋介)

2章 嗜癖行動症群

嗜癖行動症の概念 (樋口 進)

嗜癖行動症の疫学 (金城 文,尾﨑米厚)

嗜癖行動症の病態 (松下幸生)

嗜癖行動症の診断 (松下幸生)

嗜癖行動症の治療 (樋口 進)

 Topics 統合型リゾート (松下幸生)

嗜癖行動症 各論

 ギャンブル行動症 (蒲生裕司)

 ゲーム行動症 (松﨑尊信)

Topics eスポーツ (松﨑尊信)

 その他の嗜癖行動症 (橋本 望)

Topics ギャンブルとゲームの融合 (西村光太郎)

嗜癖行動症の予防・対策

 ギャンブル行動症の予防と対策 (小原圭司)

 ゲーム・インターネット・スマートフォン依存の予防と対策 (館農 勝)

Topics COVID-19と嗜癖行動 (中山秀紀)

3章 衝動制御症群

衝動制御症の概念 (村松太郎)

嗜癖行動症および関連疾患との関係 (村松太郎)

衝動制御症の診断・治療 (村松太郎)

衝動制御症 各論

 放火症 (西岡直也)

 窃盗症 (竹村道夫)

Topics 窃盗症の裁判の動向 (村松太郎)

 強迫的性行動症 (原田隆之)

 間欠爆発症 (村松太郎)

Topics 衝動のbiology (廣中直行)

4章 パラフィリア症群

パラフィリア症の概念 (原田隆之)

パラフィリア症の診断・治療

 診断とリスクアセスメント (深間内文彦)

 認知行動療法 (嶋田洋徳,姜 来娜)

 薬物療法 (深間内文彦)

Topics パラフィリア症治療の実践例 (斉藤章佳,深間内文彦)

パラフィリア症 各論

 露出症 (野村和孝)

 窃視症 (野村和孝)

 小児性愛症 (野村和孝)

 窃触症 (野村和孝)

 その他のパラフィリア症 (野村和孝)

Topics 性犯罪者への対策 (原田隆之)

5章 性別不合

性別不合の概念とその変遷

 ICD,DSMの診断概念の変遷と性別不合 (松永千秋)

 小児期,青年期の性別不合の特徴 (織田裕行,松岩七虹)

性別不合と医療

 精神的援助 (針間克己)

 身体的治療-ホルモン療法 (舛森直哉)

 身体的治療-手術療法 (難波祐三郎)

性別不合を持つ人々が直面する困難性とその対処

 成人期 (齋藤利和)

 小児期 (中塚幹也)

性別不合と社会制度 (康 純)

Topics 日本精神神経学会『性同一性障害(性別不合)に関する診断と治療のガイドライン』とその問題点 (松本洋輔)


索引

便利機能

  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応
便利機能アイコン説明
  • 全文・
    串刺検索
  • 目次・
    索引リンク
  • PCブラウザ閲覧
  • メモ・付箋
  • PubMed
    リンク
  • 動画再生
  • 音声再生
  • 今日の治療薬リンク
  • イヤーノートリンク
  • 南山堂医学
    大辞典
    リンク
  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応

対応機種

  • ios icon

    iOS 10.0 以降

    外部メモリ:20.3MB以上(インストール時:62.3MB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:81.3MB以上

  • android icon

    AndroidOS 5.0 以降

    外部メモリ:20.3MB以上(インストール時:62.3MB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:81.3MB以上

  • コンテンツのインストールにあたり、無線LANへの接続環境が必要です(3G回線によるインストールも可能ですが、データ量の多い通信のため、通信料が高額となりますので、無線LANを推奨しております)。
  • コンテンツの使用にあたり、M2Plus Launcherが必要です。 導入方法の詳細はこちら
  • Appleロゴは、Apple Inc.の商標です。
  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

  • ISBN:9784521748283
  • ページ数:616頁
  • 書籍発行日:2023年6月
  • 電子版発売日:2023年7月28日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

まだ投稿されていません

特記事項

※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。

※コンテンツの使用にあたり、m3.com 電子書籍が必要です。

※eBook版は、書籍の体裁そのままで表示しますので、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。