理学療法における歩行

  • ページ数 : 290頁
  • 書籍発行日 : 2023年7月
  • 電子版発売日 : 2023年8月1日
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商品情報

内容

「歩ける」を目指す。

人間だけに与えられた二足による「歩行」という特殊な移動・運動手段について様々な切り口より解説を行う書.歩行の定義と起源とその多様性,具体的な障害の数々とその改善,運動学・運動生理学・神経生理学それぞれの基礎知識,歩行による健康増進と障害予防など,「歩行」に関する様々な知見を凝縮した.

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序文


私たち人間は多様な環境の中で生活している.種々の環境の内外を行き来することには意味がある.「ここ」から「そこ」へ移動するということは,対象物に接近するなどの目的をもった行為である.私たちは,実に様々な手段で移動することができる.腹這い移動,四つ這い移動,膝立ち移動,車椅子駆動,歩行,走行などは能動的な移動であり,車椅子を押してもらうこと,キャスター付きのリクライニング式ベッドで隣の部屋に場所を変えてもらうことなどは受動的移動である.いずれも入力される感覚情報が変化するであろうし,能動的な移動では運動が行われる.運動を伴うにもかかわらず一所にとどまる歩行は,心肺運動負荷試験や練習のためのトレッドミル歩行であるが,これも目的があって行われる.

これら,目的のある行為はすべて価値のあるものであり,編著者はいずれの移動手段を用いる者であっても受け入れる.理学療法士は「歩行のプロフェッショナリスト」との主張もあろうかと思うが,私の考えは必ずしもそうではない.にもかかわらず,なぜ「歩行」に特化した本書の出版を考えたのかといえば,「歩行」は,人間だけに与えられた二足での移動手段であり,願わくば理学療法の目標としたい,あるいは内部障害患者や健康を求める人々の手段としたい,種々の方法で切り取ることができる移動・運動手段であるからである.

様々な切り口の中で,本書は以下のように構成されている.第Ⅰ章では歩行の定義と起源について記述されている.第Ⅱ章から第Ⅳ章では,順に運動学,運動生理学,神経生理学それぞれの基礎が述べられている.第Ⅴ章では,歩行によってその個人を特定できるような,歩行の多様性について記載されている.第Ⅵ章では私たち理学療法士が関わる,疾患と歩行について書かれている.ここでは,肢体不自由者に加えて内部障害患者における歩行の推奨や注意点について記載されている.第Ⅶ章では健康寿命の延伸を鑑み,歩行による健康増進と障害予防に言及されている.本書の特長として強調したいのは,「歩行」を多方向からとらえる試みをしていること,肢体不自由者に限らず内部障害患者の歩行にまで言及していること,健康増進や障害予防としての歩行の可能性を指し示していることである.

執筆は,編著者が信頼を置く,理学療法士養成校や理学療法現場でご活躍の先生方にお願いした.適所の執筆をお願いするよう努めたが,専門と少し違う内容の執筆をお願いした先生もいた.全執筆者の先生,および再学習していただいた先生においては,その労に感謝申し上げる.

本書は,理学療法学生ならびに新人理学療法士を読者層として想定している.網羅的であるが故に,歩行を凝縮してとらえる内容になっている.副読本として入手していただきたい1冊になると考えている.移動・運動の一手段の「歩行」であるが,理解を深め患者に還元していただければ望外の喜びである.


2023年5月

佐々木 誠

目次

I 歩行とは

1 歩行の定義 〈佐々木 誠〉

1.歩行の定義

2.歩行の臨床的および学術的意味

3.歩行の分析に先立って

4.各種障害に関わる歩行の概要

5.健康増進と障害予防における歩行の意味

2 歩行の起源 〈矢野秀典〉

1.ヒトの誕生

2.なぜ二足歩行が必要だったのか?

3.骨格の進化

4.二足歩行を支える要因

5.直立二足歩行の獲得により失ったもの

II 歩行の運動学 〈畠山和利〉

1.歩行動作の各名称

2.歩行周期と名称について

3.歩行動作の各相

4.骨盤

5.歩行時の股関節

6.歩行時の膝関節

7.歩行時の足関節

8.身体重心

9.歩行観察・分析の考え方

III 歩行の運動生理学 〈佐々木 誠〉

1.歩行の運動生理学的な見方

2.安静から最速歩行へ

3.末梢筋での代謝に関わる運動生理

4.呼吸器系における運動生理

5.心循環系における運動生理

6.酸素運搬系の視点

7.歩行の運動生理学的な分析方法

8.上り勾配と下り勾配での歩行の運動生理

IV 歩行の神経生理学 〈堀川 学〉

1.はじめに

2.姿勢制御

3.ロコモーターユニットとパッセンジャーユニット

4.内側運動制御系と外側運動制御系

5.内側運動制御系の機能

6.姿勢制御と運動制御の関連

7.運動のカテゴリー

8.歩行における中枢神経系各階層の機能

V 歩行の多様性

1 小児・成人・高齢者 〈今 直樹〉

1.新生児の運動発達

2.小児歩行の特徴と発達

3.完成形としての歩行

4.加齢による歩行の変化

2 性差 〈伊藤優也〉

1.歩行速度(gait speed)

2.歩幅(step length)

3.歩行率(cadence)

4.歩隔

5.つま先開き角(歩行角)

6.関節角度・モーメント

7.履物により生じる歩行の性差

3 正常歩行と異常歩行および正常歩行からの逸脱 〈佐々木 誠〉

1.正常歩行

2.典型的な異常歩行

3.正常歩行からの逸脱

4.異常歩行ならびに正常歩行からの逸脱に対する理学療法

VI 歩行の障害とその改善

1 脳卒中後片麻痺と歩行 〈皆方 伸〉

1.脳卒中の概要

2.脳卒中が歩行に及ぼす影響

3.評価と予後予測

4.脳卒中患者の歩行再建に対する理学療法とその効果

2 脳卒中後の高次脳機能障害と歩行 〈阿部浩明〉

1.歩行に関わる脳卒中後の高次脳機能障害の概要

2.半側空間無視の概要

3.Pusher現象

4.歩行失行

3 パーキンソン病と歩行 〈合田明生 宮?純弥〉

1.パーキンソン病の概要

2.パーキンソン病の症状が歩行に及ぼす影響

3.パーキンソン病患者の歩行の特徴

4.パーキンソン病患者の歩行に対する理学療法とその効果

5.パーキンソン病患者における転倒に対する配慮と家族指導

4 運動失調症と歩行 〈佐々木 誠〉

1.運動失調症を呈する疾患の概要

2.運動失調症の症状が歩行に及ぼす影響

3.運動失調症患者の歩行の特徴

4.運動失調症患者の歩行に対する理学療法とその効果

5.運動失調症患者における転倒に対する配慮と家族指導

5 筋ジストロフィーと歩行 〈菊地和人〉

1.筋ジストロフィーの概要

2.デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)

6 脳性麻痺と歩行 〈木元 稔〉

1.脳性麻痺の概要

2.評価

3.介入

7 脊柱後弯変形高齢者と歩行 〈佐藤大道〉

1.脊柱後弯変形の概要

2.姿勢変化と重心の変化

3.脊柱後弯変形患者の歩行の特徴

4.理学療法評価

5.脊柱後弯変形患者の歩行に対する理学療法とその効果

8 脊髄損傷と歩行 〈木村雅彦〉

1.脊髄損傷

2.脊髄損傷患者の歩行前練習と歩行練習

3.脊損損傷患者の歩行を目的とした装具療法

4.新しい歩行の獲得方法や練習方法

5.理学療法効果

9 股関節疾患と歩行 〈柴田和幸〉

1.股関節疾患の概要

2.股関節疾患が歩行に及ぼす影響

3.股関節疾患患者の歩行の特徴

4.股関節疾患患者の歩行に対する理学療法とその効果

5.歩行補助具の使用と手術適応

10 膝関節疾患と歩行 〈齊藤 明〉

1.主な膝関節疾患の概要

2.膝関節疾患の症状が歩行に及ぼす影響

3.膝関節疾患患者の歩行に対する評価

4.膝関節疾患患者の歩行に対する理学療法とその効果

5.膝関節疾患患者の歩行における歩行補助具の使い方と手術適応

11 足部疾患と歩行 〈斎藤 功〉

1.足部・足関節の機能

2.歩行周期における足部・足関節の役割

3.後足部疾患の歩行と理学療法

4.前足部疾患の歩行と理学療法

5.足部・足関節疾患の理学療法の評価および効果判定

12 整形外科手術後と歩行

1 人工股関節全置換術 〈齋藤真紀子〉

1.適応

2.手術手技

3.合併症

4.術前

5.術後

2 人工膝関節全置換術 〈齋藤真紀子〉

1.TKAの機種

2.適応

3.合併症

4.術前理学療法

5.術後

6.ROM練習の方法

7.筋力トレーニング

13 下肢切断と歩行 〈杉本 諭〉

1.下肢切断の概要

2.大腿切断と下腿切断の特徴と歩行への影響

3.義足の特徴

4.義足装着前の理学療法評価と治療

5.義足装着後の理学療法評価と治療

6.高齢者に対する義足歩行

14 循環器疾患と歩行 〈加賀屋勇気〉

1.心疾患患者の歩行と理学療法の立ち位置

2.理学療法の対象となる心血管疾患

3

(1)虚血性心疾患の病態

(2)急性心筋梗塞後の歩行負荷(急性期〜前期回復期)

4

(1)心不全の病態

(2)心不全の歩行負荷(急性期〜前期回復期)

5.退院前〜退院後初回外来

15 呼吸器疾患と歩行 〈照井佳乃〉

1.呼吸器疾患患者における歩行障害の概要

2.各種歩行試験

3.歩行試験からの運動処方

4.歩行が呼吸機能・身体機能に及ぼす影響

5.COPDのバランス障害

16 代謝疾患と歩行 〈横川正美 間所祥子〉

1.糖尿病の病態と合併症

2.糖代謝とインスリン

3.歩行をはじめとする運動が血糖コントロールに有益な効果をもたらす機序

4.運動の実際:種類,強度,時間,頻度

5.糖尿病に対する運動療法のエビデンスと歩行

6.糖尿病が歩行に与える影響

7.糖尿病足病変と歩行

VII 歩行による健康増進と障害予防

1 効果と推奨 〈渡邉基起〉

1.健康と社会

2.本邦の現状

3.生活習慣病と歩行

2 実施方法 〈高橋裕介〉

1.アメリカスポーツ医学会が推奨する運動処方(頻度,強度,時間,種類)

2.運動強度の決定法

3.運動前のメディカルチェックとリスクの層別化

4.厚生労働省が推奨する実施方法

5.正しい歩行

6.注意点(適切な靴の着用,気温など)

7.ノルディックウォーキング

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書籍情報

  • ISBN:9784498067448
  • ページ数:290頁
  • 書籍発行日:2023年7月
  • 電子版発売日:2023年8月1日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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