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商品情報
内容
婦人科立ち上げからわずか3年で関東屈指の腹腔鏡手術件数を誇る婦人科腹腔鏡手術センターを創設した著者が、手術をひたすらこなして培った極意を伝授。経験に基づいた認識・判断・身体の視点からアプローチすることで、術者の成長を確実に導く一流の手引き。
※都合により,紙版の誌面と異なり割愛される箇所がございます(P57 図2「SLAM DUNK」における言語化された情報の例、P61 図7「SLAM DUNK」における「境界線」についての説明、は未収載となっております).
序文
はじめに
この本は手術スキルの向上に特化したマニアックな本です。私は婦人科腹腔鏡手術の専門医なのでそれを題材に書いていますが、外科医や泌尿器科医などの腹腔鏡手術を施行する先生方や、はたまた技術向上に興味のある他科の医師や技術を生業とする他業界の先生方にも届けば幸いです。
現在、私は埼玉県の民間総合病院の婦人科腹腔鏡手術センターで手術を執刀したり、医師の教育を行ったりしています。ありがたいことに、他院で開腹手術を提案された方々の最後の砦として、腹腔鏡手術のいわゆるハイボリュームセンターを運営させてもらっています。
手術において危ないシーンというのは、術者であれば誰もが経験したことがあるはずです。ゆえに「手術技術をいかに向上させ安全な手術を行うか」は、私のかねてよりのテーマでした。しかしながら、その点においてあまり参考になる書籍は多くありません。いわゆる「術書」は存在しますが、現代の術書のほとんどは共著で執筆されているため当たり障りのない内容を書いていることが多く、それぞれの術者のこだわりや思考を書くことはアカデミックさに欠けるからか敬遠されていると感じます。また、どうすれば手術そのものがうまくなるかを書いている書籍は非常に少ないと感じます。
いわゆる名医のトップナイフにインタビューしてまとめたものや、有名外科医の生き様のようなものを書いた本はありますが、どうすれば手術が上達し、トップナイフとはいわないまでも、その施設、地域の頼られるエースぐらいにまで確実に成長できるかを具体的に書いているものはあまりありません。大学受験でたとえるなら、本書は受験参考書・問題集そのものではなく、「どうすれば無名高校から東大に行けるか」というような勉強法を解説するものです。
私は手術数だけの医者です。有名大学の所属でもなければ、有名病院での正式なトレーニング歴などもありません。ただただ手術を求めて病院を渡り、振り返れば私の後には膨大な数の術後の患者様がおられ、その方々のおかげで今の自分があります。現在の勤務先の婦人科を一人で立ち上げ、後輩もでき、大量の手術を行うなかで「私の経験を伝えていくことも価値のないものではないのではないか」と考えるようになり、執筆を開始しました。
私は研究熱心でもなく、記憶力も悪いです。ですので、ここに書いてある知識はすべて経験に基づいたものであり、この本を書くために調べたような内容は少しもありません。つまり、手術をただひたすらにこなしていくなかで残った知識です。だからこそ、すべてが重要といえるし、困難なオペを乗り切るうえで最低限必要なものであると考えています。
この本は手術技術を向上させることに特化していますので、ぜひ外科医や泌尿器科医も含め、他科の先生方のご参考になれば幸いです。「ギネごときが何を!」と思われるかもしれませんが、手を動かす以上、手術は技術的な側面から離れることはできず、解剖学的、機能的に違った臓器であっても通じる部分があると思います。
この本が読者の手術技術向上に1ミリでも寄与することがあれば、これほどの喜びはありません。
この本を、地域医療を支える無名の医師の方々と永遠の憧れであるDr.Mario Malzoniに捧げます。
2023年10月
伊藤雄二
目次
・はじめに
・手術技術向上論ロードマップ
【第1章】手術理論
1 手術技術とは何か
まずは技術について「解剖」する
2 「うまい」とは何か
熟練の術者の共通点
3 なぜ自分ではうまくできないのか
わかるとできるは違う
4 手術は動画ではなくスライドショーである
認識・判断は“画像”をもとに行われる
5 スライドとは何か
術野を知る
6 スライド(術野)をどう再現するか
手術は術野形成がすべて
7 術中の思考・我慢の時間帯
実際の手術中の思考
8 手術の本質:ゾーンとアフォーダンス的手術
「ゾーンに入る」とは何か
9 オペを支配するための“手術の3つの要素”
「毎回同じ」はありえない
10 手術の3つの要素①:「患者」
同じ患者は一人もいない
11 手術の3つの要素②:「環境」
手術環境を一定に保つのが実はいちばん大変
12 手術の3つの要素③:「自分」
いつも同じ自分で手術に臨めるわけではない
13 「解剖」は武器だがゴールにしてはいけない
解剖よりもその解剖を出す術野形成が大事
14 手術知識の扱い方:「 言語化」よりも重要なこと
言語化はスタートライン
《コラム》合併症の地獄
【第2章】手術技術向上のために
1 手術に才能は必要か
才能の話はもっと先
2 手術数を求める
最低週2件の執刀は必要
3 師を求める
芸術的な手術を行う師匠が必要
4 外科医と外来力
“戦場”はオペ室だけではない
5 術者は“プロ”か
術者の成長を妨げるプライド
6 手術技術習得の特徴
ほかの技術習得と違う点
《コラム》外科系医師とお金
【第3章】手術トレーニング
1 トレーニング開始にあたって
トレーニングがまったく足りていない
2 トレーニングにおける心構え
あなたの成長の責任をとるのはあなたしかいない
3 トレーニングのポイント
何の能力を向上させるトレーニングかが重要
4 経験的認識・判断能力トレーニング
瞬間的な画像認識トレーニング
5 経験的身体能力トレーニング
思うように身体を動かせるようにする
6 経験的身体能力トレーニングの効果を上げる①
ダニエル・コイル式トレーニングの原則
7 経験的身体能力トレーニングの効果を上げる②
私が考える練習のポイント
8 パラレル練習法
理想の手術をコピーする
9 三次元空間瞬間認識トレーニング
瞬時に点とベクトルを選ぶ
10 トレーニング(術前)
ウォーミングアップは大切
11 トレーニング(術中)
トレーニングと実際の手術はまったく別物
12 トレーニング(術後)
術後トレーニングがいちばん効果的
《コラム》術者と職人の違い
【第4章】手術の実際
1 手術準備から腹腔内操作まで
ルーティンを軽んじる術者にうまい者はいない
2 手術技術向上論における手術とは
手術技術向上論的手術
3 ケース①:子宮筋腫に対する腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)
一般的な巨大筋腫
4 ケース②:巨大筋腫に対する腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)
頚部寄りの巨大筋腫
5 ケース③:巨大筋腫+癒着に対する腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)
巨大筋腫かつ癒着のある症例
6 ケース④:高度癒着に対する腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)
番外編:スライドショー以外がほとんどの手術
《コラム》手が震える人に
・おわりに ~なぜ一流の術者を目指すのか~
【付録】
対談 手術技術の向上のために――米国心臓外科医・北原大翔先生に聞く
・索引
・WEB動画の視聴方法
・著者紹介
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書籍情報
- ISBN:9784840482097
- ページ数:200頁
- 書籍発行日:2023年12月
- 電子版発売日:2023年11月21日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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