極めに・究める・フレイルと認知症

  • ページ数 : 128頁
  • 書籍発行日 : 2023年7月
  • 電子版発売日 : 2023年12月1日
¥3,850(税込)
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商品情報

内容

超高齢社会における高齢者の自立した生活にはフレイルと認知症の早期発見、および対策(「予防」と「ケア」)が不可欠です。しかし高齢者の揺らぐ病態評価は難しく、高齢者の個別性を踏まえたケアの実践を解説します。学生や若手リハ従事者に最適の教材です。

序文

監修者序文


「フレイル」とは,わかりやすくいうと高齢になり,あらかじめ備えておきたい(おくべき)能力が低下し,さまざまなストレスに弱くなっている状態です.近い将来,機能障害,要介護状態,ひいては死亡などに陥りやすい状態ともいえます.

「認知症」とは,さまざまな脳の病気により,脳の神経細胞の働きが徐々に低下し,記憶や判断力に問題が生じて,社会生活に支障をきたした状態をいいます.本文にもありますが,認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)と合わせると本邦では数百万人を超えて,さらに増えていくと見込まれています.

高齢者の健康寿命を延ばし,社会の幸福や資源の持続可能性を保つためには,「フレイル」と「認知症」に詳しいリハビリテーション専門職の重要性は高まっていくことでしょう.一方で,これらを正しくとらえ,実際に予防や改善ができる技量のある専門職が不足していることは否めません.これらの分野の重要性を改めて認識して自分自身でスキルアップするか,既に指導的な立場にいる方は使命感をもって育成やシステム構築に関わることが求められるでしょう.

「フレイル」や「認知症」は専門職でもないと一見しただけでは健常に近い高齢者と区別がつきません.それだけに問題点をいち早くピックアップして根拠と実経験をベースに絶妙な技量で効果を引きだし近い将来発生するであろう問題を予防することは意外に難しい面があるのです.しかも,対象となる高齢者は多くの社会経験・貢献を積んできた大先輩ですから,医療者や介護者側にリスペクトの気持ちや人格が備わっていないと話になりません.

言葉遣いとその抑揚,表情,立ち居振る舞い,距離感,雰囲気・環境づくり,動じない姿勢などが求められるのです.エキスパートや指導者になるためには,成功,失敗を含めてたくさんの場数が必要で,「要はこうでしょ」のようなコメンテーターでは実際の現場では役に立ちません.

例えば,経験と技量のある専門職からビギナーに引き継がれたとたん,高齢者が拒否的になり,トラブルに発展することは珍しくありません.逆に,問題行動のあった高齢者に専門職が対応し始めたとたん行動が変容することはよくあるのです.

丸善出版より【極めに・究める・リハビリテーション】シリーズの監修を依頼され,第7弾は「フレイルと認知症」と相談されたとき,真っ先に頭に浮かんだのが國枝洋太先生でした.國枝先生は理学療法士として主に認知症高齢者への医療を専門とする大学病院で活動されています.神経や脳の障害に関する専門・認定理学療法士の資格をお持ちで,さらに,なんと博士号も取得されています.学会発表,学術論文,著書も多数で誰がどう見てもエキスパートといえます.

私が知人や家族から「フレイルや認知症の分野で頼れる専門家はいませんか?」と聞かれたら真っ先に國枝先生を紹介するでしょう.

本書では,「フレイル」や「認知症」へのリハビリテーションについて,科学的根拠はもちろん,國枝先生の知識や経験,技量に裏付けされた実践的な内容がふんだんに盛り込まれています.手元に置き,どのページからでも気軽に読んで,日々の臨床や社会活動に活かしていただければと思います.

最後にわれわれに素晴らしい企画を提案し,出版まで導いてくれた丸善出版の渡邉さん,古閑さんをはじめとするスタッフの方々にお礼を添えて,監修の序とします.


2023年5月吉日

相澤 純也



著者序文


私は大学病院に勤務する普通の理学療法士です.理学療法士の養成校を卒業してから,ずっと急性期病院に勤務し,患者の治療に邁進してきました.では,なぜ本書のテーマである地域をフィールドとした「フレイルと認知症」を執筆することになったのか,疑問に思う方も多いかもしれません.

急性期でのリハビリテーション治療では,エビデンスを用いて最大限の試行錯誤を繰り返し,患者の機能回復に尽力しています.しかしながら脳卒中や運動器疾患,内部障害などのリハビリテーション治療後であっても,完全に入院前の機能レベルに戻らないことはあります.

リハビリテーション専門職として,入院での機能回復を促すリハビリテーション治療技術や知識をより高めていくことは重要です.

それと同時に,高齢者が少しでも元気な状態で住み慣れた地域で暮らすためには,元気なうちから生活状況の改善や予防活動を実践しフレイルの回復を促して認知症や疾患の発症を予防することも非常に重要だと気づきました.

現在,医療機関で入院患者のリハビリテーション治療に奔走されている方々のなかには,高齢患者の入院前の生活状況が気になったり,自分が入院中に運動指導をした患者が退院後に運動を継続できているのか不安になる方もいるでしょう.高齢者の介護予防のための地域活動に興味があったとしても,所属施設ではなかなか実践の機会がなく,実体験ができない方も多いと思います.本書は,地域でのフレイルや認知症予防に関わる活動や事業に興味はあるものの,なかなか実践へ踏み出せずにいる…,そのような方々の手に届くことを願って執筆しました.

高齢者の健康増進や機能改善を目指すリハビリテーション専門職は,多職種で連携し,高齢者の介護予防を企画・実践していく地域活動において重要なピースです.少しでも入院治療の枠を超えて地域での介護予防事業のイメージが湧く一助となれば嬉しく思います.

私が理学療法士になったのは,介護予防の地域活動をしたかったからではありません.入院患者の治療や機能回復に試行錯誤するなかで,多くの有識者の先生方と出会い,さまざまな領域の知識や技術を試しながら,高齢者の介護予防の重要性に気づき,この領域に足を踏み入れました.

フレイルや認知症などの高齢者特有の症状は,高齢者医療に携わ4る皆さん,すなわち本書を手にしていただいた皆さんにとって切っ4ても切り離せない存在です.本書で私が実践させていただいている活動は,広大な介護予防領域のなかのごく一部ですが,皆さんの臨床に少しでも生かせることを願っています.


謝辞


本書の執筆機会をくださった順天堂大学保健医療学部 相澤純也先生, 素敵なイラストを描いてくださった株式会社Globalgrowth筋膜カッパ整体院松本店の近田光明先生.病院外の地域活動実施をバックアップしてくださる順天堂大学大学院医学研究科リハビリテーション医学 藤原俊之先生および髙倉朋和先生,東京都江東区での地域活動を積極的に展開している社会福祉法人奉優会瀬藤尚文さん,高齢者の地域測定会を共に企画した順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センターリハビリテーション科小山真吾先生,大和大学保健医療学部 鈴木瑞恵先生.支援いただいた丸善出版の渡邉美幸さんおよび古閑理恵子さん.そして土日に実施することが多い地域活動にも文句を言わずいつも近くで支えてくれる家族と,ともに介護予防や機能回復を目指してリハビリテーションを続けている地域在住の高齢者の皆様に,心より感謝の意を述べさせていただきます.


2023年5月吉日

國枝 洋太

目次

第1部 高齢者の介護予防総論

Chapter 1 病院ではなく地域から始める(介護予防,疾患予防)

極める1 健康寿命を延ばすことが高齢化対策のカギ

極める2 「老年症候群」と要介護の原因疾患

極める3 高齢入院患者は多疾患,重複障害を併存している

極める4 早期の予防活動が機能低下を防ぐ

極める5 フレイルと認知症予防は地域で取り組む

Chapter 2 フレイルを知る(フレイル総論)

極める1 フレイルは健常に近い状態へ改善できる

極める2 高齢者の状態はフレイルの多面性から評価する

極める3 フレイルは機器がなくても評価できる

第2部 フレイルの各論と実践

Chapter 3 身体的フレイル:日常生活の中に運動を取り入れる

極める1 フレイルチェックで要介護リスクを見逃さない

極める2 運動プログラムは目的を明確に,「一品足し」で強度を上げる

極める3 サルコペニアなどに配慮した安全な運動の実施

極める4 動く習慣づくりで活動量を増やす

極める5 高齢者の栄養摂取状態も考慮する

Chapter 4 精神心理的フレイルと認知的フレイル:認知機能低下はしょうがない,としない

極める1 心理状態や認知機能低下をを考慮して有害事象を予防する

極める2 健常な認知機能へ回復できるMCIを見逃さない

極める3 予防の目的は認知機能低下の程度によって変わる(一次予防と二次予防)

極める4 二重課題トレーニングで脳を鍛える

Chapter 5 フレイルの社会的側面:社会交流の欠如はドミノ倒しの始まり

極める1 「外出」と「交流」が保たれているか

極める2 社会的側面から評価してフレイル・ドミノを防ぐ

極める3 「通いの場」への参加を促して外出と交流の機会を増やそう

極める4 機能レベルに合わせて社会資源を利用する

Chapter 6 地域での実践例:客観的評価を取り入れる

極める1 併存疾患や既往歴などから全体像を把握する

極める2 機能低下は実測や判定ツールによって評価する

極める3 機能評価は長期で継続的に,できるだけ同じ測定方法で比較する

極める4 目的を共有する多職種チームで地域の高齢者を支える

Chapter 7 地域での指導ポイント:機能レベルや性格は人それぞれ

極める1 集団トレーニングでは認知機能のレベル差に配慮する

極める2 医療情報を聴取して個々の状態を把握する

極める3 認知機能の評価やトレーニングで不要なストレスを与えない

第3部 認知症との共存(地域で長く暮らすために)

Chapter 8 認知症の基礎知識;認知症は他人事,ではない

極める1 日本の認知症患者数は増加傾向

極める2 認知機能低下を自覚するずっと前から,脳では変化が始まっている

極める3 治る認知症もある

極める4 遅くともMCIの段階でくい止める

Chapter 9 認知症の予防とリハビリテーション治療

極める1 認知症の重症化予防(三次予防)

極める2 認知症のリハビリテーション

極める3 バリデーション療法:認知症高齢者との接し方

極める4 脳の活性化を目指すリハビリテーション

Chapter 10 社会資源の利用に依存しない地域での自立支援

極める1 医療介護サービス導入のススメ

極める2 医療介護サービス脱却のススメ

極める3 サービスの選択と専門職からのアドバイス

極める4 「レスパイト入院」などを利用して介護者の負担を軽減する

COLUMN一覧

1 日本の「フレイル」と世界の「frailty」研究

2 地域で判定されたMCI 高齢者は回復率が高い?

3 二重課題トレーニング実践例

4 新型コロナウイルス感染拡大による影響は?

5 「社会的フレイル」という単語を使う際は要注意!

6 ICT ツールを使用した測定のメリット,デメリット

7 ヒアリングフレイルとは

8 地域測定会は高齢者と医療関係者とのコミュニケーションフィールド

9 認知症予測の課題―バイオマーカーの開発と高齢者が抱く不安

10 認知症との共存

11 かなり増えてきた「認知症カフェ」

12 「認知症高齢者の介護者負担を軽減する」というエビデンス

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書籍情報

  • ISBN:9784621308264
  • ページ数:128頁
  • 書籍発行日:2023年7月
  • 電子版発売日:2023年12月1日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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