クリニックにおける人事・労務トラブル回避術

  • ページ数 : 240頁
  • 書籍発行日 : 2023年11月
  • 電子版発売日 : 2023年12月12日
¥3,960(税込)
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商品情報

内容

数百件のクリニックで顧問を務めた経験から、特に小規模医院で起こりがちなトラブルとその解決法を解説。法的解釈を示しつつ、自院ですぐに取り組める実践的な対応策をまとめました。
雇用契約書等、関連書式のひな形をダウンロードできます。

序文

はじめに


「ヒト、モノ、カネ」を経営の3要素(これに「情報」を加えて4要素とも)といいますが、これはクリニック経営にも当てはまります。その中でも「ヒト」は特に重要な要素です。確かに高額な医療機器や立派な施設も経営上の武器にはなりますが、それらを操る「ヒト」がいなければクリニック経営は成り立ちません。患者さんの多くは医療機器や施設を見て満足を得るのではなく、受付の接遇態度、看護師の親身な対応、そして医師の診察技術を受けて良いクリニックかどうかを判断するからです。

したがって、クリニックを永続的に発展させるために最も効果的な投資先は「ヒト」、つまり職員といえます。「職員に有効な投資をし、仕事へのモチベーションを高い状態に保つこと」こそが患者さんや地域住民から支持されるクリニックへの近道となるのです。

それでは、職員にはどのように投資すべきでしょうか。単純に給料を高くすればよいというものではありません。給料とは不思議なもので、どれだけ昇給をしたり賞与を多くしたりしてもすぐに慣れてしまい、「もらって当たり前」の感覚になるものです。つまり、投資対効果は低いのです。ですから、給料は他院と同等もしくは少し高い程度で構いません。

休みを増やすのはどうでしょうか。少なくとも週休2日制は導入しないと求人は集まりにくいでしょうが、さりとて週休3日制のニーズはそれほど高くないでしょう。また、アニバーサリー休暇やリフレッシュ休暇など、福利厚生を優遇するのも一時的には職員の士気が高まりますが、時間が経つと給料と同様にそれが当たり前となってしまいます。


適切な労務管理こそが職員のモチベーションを高める

では、職員のモチベーションを高めるには、どうすればよいのでしょうか。その答えが適切な労務管理の実現にあります。労務管理には、採用手続き、雇用契約の締結、就業規則の運用、有給休暇の管理、労働時間の管理、給与計算などが挙げられます。労務管理への投資は、さほどお金はかかりませんが、大変地道な努力を要します。その努力を通して、法律を当たり前に守るコンプライアンス意識や、職員をクリニックに欠かせない存在として敬意を払う意識、パワハラの存在しない風通しのよいコミュニケーションを取れる環境が実現できるのです。

「うちは職員間の仲が悪くて」「職員の患者への接し方がひどくて」「どうすれば職員問題が解決するのか」と嘆く院長先生がいらっしゃいますが、実は解決策は自らが握っています。労務管理には法律の知識が必要であり、診療に専念してきた院長先生には馴染みがない分野です。また、煩雑な事務的作業も求められるため、日頃診療に忙しい院長先生には敬遠されがちです。職員とコミュニケーションを取るのも正直いって面倒くさいとか、性に合わないとお感じになる方もいるかもしれません。

しかし、逆の立場になって考えてみて下さい。残業をしてもきちんと評価されない、給与計算が度々間違えられる、院長や他の職員に聞きたいことがあっても聞ける雰囲気ではない、こうした職場でどうして職員が患者さんのため、院長先生のために力を尽くそうと思えるでしょうか。職員の仕事へのモチベーションを高め、高度のパフォーマンスを発揮してもらうために本当に必要なのは適切な労務管理なのです。


クリニックが守るべき「労務コンプライアンス」とは

昨今、世の中で急速に関心を高めているのが企業コンプライアンスです。「コンプライアンス」というと、服薬コンプライアンスをまず想起される方もいらっしゃるかもしれませんが、ここでいうコンプライアンスは「法令遵守」の意味になります。

コンプライアンスに違反する企業は急激に社会的信用を低下させ、大規模な上場企業ですら存続の危機にさらされるような大打撃を受ける恐れがあります。多くのクリニックは小規模な経営体で運営されているでしょうから、ひとたびコンプライアンス違反が世間に明るみになってしまうと、その影響は計り知れません。

クリニックが守るべきコンプライアンスの大きな柱として医師法や医療法上のコンプライアンスが挙げられます。これらのコンプライアンス違反については、医師の皆様はご自身のライセンスや経営するクリニックの存続に直結する問題として、もとより深い関心をもって注意を払われていることと思います。

しかし、クリニックが守るべきコンプライアンスにはもう一つ大きな柱が存在します。それが「労務コンプライアンス」です。リストラ、過労死、サービス残業、セクハラ、以前から問題視されていた労働問題に加えて、昨今ではブラック企業、パワハラ、男性育休、働き方改革、と新たな労働問題が次々と噴出しています。ひと昔前までは「赤信号みんなで渡れば怖くない」とばかりに労働法が軽視される風潮もありましたが、現在はとても労働法違反が許される状況にはありません。

さて、ここまで述べてきた労務管理と労務コンプライアンスには専門知識も要求されるため極めようとすると奥の深い分野です。しかし、クリニック経営者がこれらを極める必要はありません。基本の部分だけ押さえていただければ十分に経営は可能です。本書はこうした労務管理や労務コンプライアンスの基本を分かりやすく学びたい方に向けられています。

私は10年以上前に医療専門の社会保険労務士事務所を開設し、数百件の病院・クリニックの労務管理指導をしてまいりました。これまでの経験をもとに、クリニックの院長先生が自院ですぐに取り組める対応策をまとめ、実践的な内容となるよう本書を執筆いたしました。クリニック経営に携わる多くの方々の参考になれば幸いです。


2023年10月

社会保険労務士 長友 秀樹

目次

第1章 募集・採用

求人広告の条件より安い給与で職員を採用したい

在職中の職員より高い給与での求人

面接での虚偽回答による解雇

試用期間中の職員を解雇したい

雇用契約書の結び方を知りたい

第2章 就業規則

クリニックの就業規則を作りたい

クリニックの就業時間をどのように定めればよいのか

1か月単位の変形労働時間制を導入したい

夏休みを有給休暇で取らせたい(年次有給休暇の計画的付与)

36(サブロク)協定について教えてほしい

クリニックは医師の働き方改革のために何をすればよいか

研修時間は労働時間にあたるのか

第3章 勤務

タトゥーを入れた職員を注意したい

患者からの苦情が多い職員を注意したい

仕事を覚えない職員を辞めさせたい

SNSで院内情報を流出させた職員をどうすればよいのか

勤務態度が悪い職員を辞めさせたい

年次有給休暇を買い取っても問題ないか

大型台風接近が予想されるため職員を休ませたい

新型コロナに感染した職員への対応

職員の副業を禁止したい

新人いじめをする職員に対してどのように対処すべきか

職員が起こしたセクハラ問題の責任を負いたくない

職員がパワハラで訴えられた

職員の長時間労働をどのようにして減らすべきか

人手不足を理由にして有給休暇の申請を断りたい

年次有給休暇は年に5日間与えなければならないのか

人事評価をつけて職員のやる気を高めたい

第4章 退職・解雇

解雇する時は給与を1か月分支払わなければならないのか

業績が悪化したので職員を解雇したい

退職が決まった職員にまとまった有給休暇を与えたくない

競業他院に転職した職員に退職金を払いたくない

退職する職員から研修費用を返還させたい

第5章 メンタルヘルス

ストレスチェックについて教えてほしい

採用内定者にメンタルヘルス不調が発覚した時の対応

遅刻・欠勤を繰り返すメンタルヘルス不調者への対応

休職と復職を繰り返す職員への対応

第6章 給与

残業代の正しい計算方法

仕事が遅い職員に残業代を払いたくない

管理職には残業代を払わなくてもよいのか

年俸制にすれば残業代を支払わなくてもよいのか

残業代は1分単位で計算して支払わなければならないのか

残業代を固定払いにして、残業代の削減につなげたい

第7章 産休・育休・介護

少人数のクリニックなので育児休業を取られるのは困る

育児休業から復職した職員の昇給や賞与はどうすればよいのか

育児休業から復職した職員から短時間勤務の希望を受けた

男性職員から育児休業を取りたいと言われ困っている

第8章 パートタイマー

勤続の長い非常勤職員を辞めさせたい

有期雇用を5年継続したら常勤職員にしなければならないのか

非常勤職員にも有給休暇を与えなければならないのか

同一労働同一賃金に対してクリニックは何をすべきか

第9章 社会保険制度

社会保険制度について教えてほしい

社会保険と医師国保の特徴

パートタイマーの社会保険加入要件

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  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

  • ISBN:9784784968558
  • ページ数:240頁
  • 書籍発行日:2023年11月
  • 電子版発売日:2023年12月12日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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