医学論文執筆のための30の訓え 研究ではなく物語

  • ページ数 : 288頁
  • 書籍発行日 : 2024年1月
  • 電子版発売日 : 2024年1月20日
4,620
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内容



初めて医学論文を書く人はどう勉強すればいいのか? 医学論文執筆の修得は模倣から始まり、指導医のチェック、書き直しと体得まで試行錯誤の連続です。メンターも体系的な指導法がなく「手探り」が実情です。優れた研究も書き方を損なえばアクセプトされません。論文執筆には「お作法」があります!読み手を意識した物語性のある論文スタイルです。

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序文

原書序文

私は,休暇を貴い時間だと考えています.多くの学術的な人たちは,ノンストップで働くことにプライドを持っているようで,自分はこの仕事が好きだ,だから働くことは仕事と感じないと嬉しそうに(必ずしも説得力があるわけではありませんが)主張します.その気持ちは理解できますが,そのような考え方を維持するためには,機会があれば休息をとり,その間に何か楽しみを与えることが必要だという考え方もあります.

私は,2020 年後半を期待に胸を膨らませながら,休暇をとれるような年にしておきました.私は,どうしても断れない仕事が舞い込んできた時,その場しのぎの(つまり社会的に距離を置いた)自宅のオフィスで,休暇前にやるべきことのリストが減っていくのを楽しみながら,ほかのことは帰国まで待てると確信していました.

私の苦境に共感する前に,この話は,不機嫌な上司が劣悪な環境で長時間デスクに座ることを従業員に強いるという古典的なストーリーからは最もかけ離れていることを知っておいてください.私の自宅のオフィスは理想とかけ離れているのかもしれませんが,そんな中で,「Story, Not Study」の原文を読んでコメントするという名誉を与えられたことは,嫌な雑用ではなく,嬉しい贈り物でした.

私は,あまりにも短い休暇の一部を,本当に論文執筆に関する書籍を読むことに費やすつもりだったのでしょうか?  間違いなくそうですよ! この「Story, NotStudy」は,実践的なアドバイスが満載ではありますが,論文を執筆するための教科書ではなく,それ自体が物語になっているのです.それは,私たち学術的な人間が生きなければならない,苦痛と挑戦と忍耐の物語です.また,主人公であるあなたが,どのように行動するかを決める選択式の冒険小説でもあります.その結果,物語がどのように解決するかは,あなた次第です.

つまり,Lingard とWatling が本書を「30 の訓え」として構成したことで,どのような順番でも読むことができ,特に関連性の高い部分をピックアップし,賢明なアドバイスを素早く理解できるように(恐らく頻繁に)本書のコンテンツを往来することが可能です.

しかし,これは比喩的な意味でもあり,医療分野の研究を職業として選択した我々は,明白な選択を迫られています.(a) 何かについて書くべきことがある専門家になるために投資するのと同じように,よりよい論文を執筆する方法を学ぶために必要な時間とエネルギーを投資するのか,(b) X4ページに明確に書かれていることを見逃す査読者や編集者(特に編集者)の明らかに愚かな行為や,我々が執筆する論文の重要4性を理解していない読者の不適切な取り上げ方にずっとイライラし続けるかのどちらかです.

私自身,編集者や査読者として,このような役割を担う者が間違いを犯すことは十分に承知しています.医療分野の研究者として,我々の時間は限られており,たとえ同じようなデータが提供されていたとしても,科学的な客観性の概念にとらわれず,魅力的な論文のほうが,あまりよく書かれていない論文よりも読まれ,記憶に残る可能性が高いことも同様に理解しています.しかし,著者としての私は,読者の方に伝えたいことが伝わらないことを責めるのではなく,読者が私の伝えたいことを理解できるようにする責任があることも,十分承知しています.

この点についてのポイントは何でしょうか?  論文執筆はとても大変なことであり,メッセージが届かないのは自分自身のせいであり,その運命を回避するためには,「Story, Not Study」が提唱するスキル向上のための献身的な努力が必要になります.結局,論文執筆はほかの専門知識と同じような意味合いを持つ,特別なスキルなのです.意図的な練習が必要であり,習得には時間と経験が必要であり,洞察力のあるコーチングが有効であり,解決策のアルゴリズムを無闇に適用することはできません.そして,おそらく最も重要なことは,完璧にできるものではないということです.

効果的な文章を書くには,どんなに長くやっていたとしても,数え切れないほどの決断と試行錯誤が必要です.その判断は,ミクロなもの(例:コンマの配置によって,文調,意味,文法にどのような影響があるか)からマクロなもの(例:この議論は,私が届けようとしている読者にとって意味があるか)まであり,その間のもの(例:キーメッセージが見えるように論理的にパラグラフを構成できたか)にも及びます.ある決断は個人的なスタイルの問題であり,ある決断は(現在ではまだ不安定な)言葉の規則や専門分野の期待に応えるための試みであり,またある決断は,誰とどのように執筆するのかを選択する問題です.

私は,Lingard とWatling が,このようなさまざまな問題に対するガイダンスを提供することによって達成しようとしたことを,結果として「inspire」という動詞を選択することにより(いうまでもなく,それを原書のタイトルに埋め込むことによって)要約していることが好きです.著者らは,単に文章を上手に書く方法を教えるだけでなく,論文執筆という知的作業に夢中になることが可能であることを示し,言葉を単に道具としてではなく,言葉で遊ぶというモチベーションを高めるよう促しているの


Medical Education 編集長 Kevin Eva
バンクーバー,カナダ

目次

1章 はじめに

第1部 物語

2章 問題・ギャップ・着眼点の紹介

3章 ギャップの示し方

4章 引用の技術

5章 方法:物語と研究が出会う場所

6章 質的研究における引用の効果的な使い方

7章 潜在能力を引き出す考察の書き方

8章 限界の技術

9章 焚きつけるタイトル

10章 一語一句を大切にする: 強力な研究要旨(抄録)の鍵

第2部 技術

11章 文章を使いこなす

12章 動詞の力を引き出す

13章 並列構造の力

14章 コンマを使いこなす

15章 前置詞の積み重ねを避ける

16章 乱雑さを避ける:形容詞と副詞の賢明な使い方

17章 潜在的な段落構成から戦略的な段落構成へ

18章 一貫性:読者を脱線させない

19章 編集の3つの「S」:Story(物語),Structure(構造),Style(文体)

20章 ペース,間(ま),沈黙:文章に強調や緊張感を生み出す

21章 学術的垣根表現I:論文執筆における形式調整

22章 学術的垣根表現II:論文執筆における礼儀作法

23章 無声から聞き取れる声へ: 論文執筆における音域,態度,論調の調整

第3部 共同

24章 共同執筆:戦略と行動

25章 共同執筆:役割,著者資格,倫理

26章 共著論文でフィードバックを行う

27章 執筆コーチングI:執筆プロセスへの配慮

28章 執筆コーチングII:関係性とアイデンティティ

29章 論文執筆コミュニティの醸成

30章 査読プロセスを成功に導く

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書籍情報

  • ISBN:9784621308868
  • ページ数:288頁
  • 書籍発行日:2024年1月
  • 電子版発売日:2024年1月20日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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