明日からできるエビデンス構築 スコーピングレビューが短期間で読める・書ける本

  • ページ数 : 216頁
  • 書籍発行日 : 2024年2月
  • 電子版発売日 : 2024年2月6日
4,180
(税込)
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商品情報

内容

近年注目が集まっている“スコーピングレビュー”の医療従事者向け入門ガイド。
主に論文の知識はあるが執筆経験は浅い研究初心者を対象に,エビデンスギャップを特定して次に研究が求められる臨床疑問を明らかにするスコーピングレビューの手法やその意味/読み方,日常業務に活かす方法,さらには実施するにあたってのポイント,英語で論文を書いてアクセプトにこぎつけるまでの各種ツールの使い方までを丁寧に解説。

序文

監修の序


本書は,医療従事者がスコーピングレビューの基本を理解し,実際にスコーピングレビュー論文を書いて投稿するまでの理想的なガイドブックです。スコーピングレビューは,読者の皆さんに馴染みのある,どの治療がよいかを明らかにすることなどに役立つシステマティックレビューとは少し異なった,エビデンスギャップを特定するような疑問に答える文献レビューの一種です。私は研究初心者の方に,文献レビューをすることで,文献の調べ方,読み方について学んでいただく取り組みをしています。しかしながら,よくあるA薬とB薬の比較をするようなタイプのシステマティックレビューについては,競争相手が多く,新規性のある臨床疑問を見出すことは難しくなってきています。一方でスコーピングレビューは,ここ20年ほどで新しく進歩してきた方法でもあり,まだまだ新規性のある研究をする余地があります。またスコーピングレビューによって,次に必要な研究を明らかにすることは,皆さん自身が実施する次の研究の指針となってくれます。

理学療法士であり,本書の主筆である北川 孝先生は,自身で投稿される以外にも多くのほかの医療者とともにスコーピングレビューを実施された経験があります。世界標準の方法論とご自身の経験を元に,初心者に向けた読み方,書き方について余すところなく解説いただきました。本書を読むことで,スコーピングレビューの意味,実施するに当たって注意すべきポイント,結果をわかりやすくビジュアル化する方法,英語が苦手でも各種ツールを使いながら論文執筆を行いアクセプトにこぎつける方法,といった知識を身につけることができます。

本書を読まれた皆さんが,スコーピングレビューの読み方を身につけ,そして実際に書いて世に問うことで,次の一次研究に結びつけていくことを期待しております。そこから始まる日本発の臨床研究の増加は,患者ケアの向上につながると確信しております。


2024年1月

片岡裕貴



編集の序


私はこれまで,いくつかの市中病院や大学病院で,理学療法士として臨床業務に約15年携わってきました。キャリアの序盤は臨床技術の向上を追い求め,中盤からは学術的な能力とのバランスの重要さを感じ,日常業務と並行してリハビリテーション関連領域を中心としたさまざまなテーマにおける臨床研究の実施から論文執筆にチャレンジしてきました。その経験のなかで,リハビリテーション領域では多様な要因から,エビデンスの確実性が相対的に臨床医学全般よりも低くなりがちになることを感じ,もどかしい思いをしてきました。

大学の教員として着任した約4年前からも,それまで行ってきた臨床研究を腰を据えて発展させていこうと,研究費を獲得し新たな研究・プロジェクトの計画を立てていきました。しかしながらいざ研究を進めていくと,途中で類似の研究が報告され始め,そもそも自分自身が明らかにしたい・明らかにすべき問いについて,どこまで学術的に本当に明らかになっていて,何が明らかになっていないかの差が不明確であることを痛感しました。

近年,学術論文の報告数は指数関数的に増加しています。日常診療やさまざまなタスクにより限られる時間のなかで最新のエビデンスを収集していくには,さまざまな工夫が必要です。伝統的に以前から数多くの臨床研究などにより豊富な知見が蓄積されてきた領域では,システマティックレビューや個々のランダム化比較試験の論文を複数読むことで,もっともらしい情報を掌握することはできます。しかし,日進月歩であるさまざまな最新テクノロジー・デバイスを活用した研究報告や,希少疾患あるいは比較的新しい疾患概念などを対象としたエビデンスは,質・量ともに十分な報告がなく,それらの学術的知見の概要をつかむにも苦労することがあります。

スコーピングレビューは,特定の研究分野やテーマに関する既存の知識や情報を網羅的に収集し,分析・要約する文献レビューの手法の一つです。昨今の激しい変化に対する学術的情報をとらえるべく,近年大変注目が高まってきているとともに,報告数が非常に増えてきているレビュー手法です。私自身,スコーピングレビューを実際に行ったテーマに対しては,その学術的情報を国内の(あるいは世界の)誰よりも掌握しているというゆるぎない自信が身につき,その後の臨床・研究活動の双方に大きな恩恵を得ることができました。スコーピングレビューは,これから新しい研究テーマに着手してみたいと考えていらっしゃる大学院生や駆け出しの研究者の方々にはもちろん,現在日常的に行っている診療行為に,エビデンスがどこまであるのか疑問に感じている臨床家の方々にも大変有意義なレビュー手法・研究デザインであると思っております。

本書は,そのスコーピングレビューの論文をスピーディに読み解くための具体的な方法の解説のみにとどまらず,レビュー研究をまったくやったことがない人でも,この本を読めば明日から実際に読者自身がスコーピングレビューを実践することでエビデンスを構築していくことができるようなわかりやすさを重視したコンテンツを,余すことなく盛り込みました。また本書は,教科書的な理論や知識のみならず,筆者らが実際に多くのスコーピングレビューを実践していくなかで得られた,実用的な情報を多く解説していることが大きな特徴かと思います。これまで私たちのグループでクローズド(秘匿的)に用いていた,インターネットやSNSでは得ることのできない有益な情報を出し惜しみなく込めておりますので,レビュー研究初学者には大変参考になる一次情報・実践知が多々得られる仕上がりになっているかと思います。

最後にこの書籍の執筆に当たり,監修において多大なご助言をいただきました片岡裕貴 先生,本書の発刊に向けて多くの苦労をともにしてくださった髙橋祐太朗 氏,間宮卓治 氏,多忙ななかご協力いただきました多くの執筆者の方々,そして休日を執筆に費やすことを理解してくれた妻および子ども達に,この場を借りて感謝申し上げます。


2024年1月

北川 孝

目次

1章 スコーピングレビューとは何か

……北川 孝,林 昌輝

1 スコーピングレビューの歴史とその他のレビュー研究との違い

2章 スコーピングレビューの読み方

1 背景の読み方……奥山 航,北川 孝

2 方法の読み方……小野田祐紀,北川 孝

3 結果の読み方……奥山 航,北川 孝

4 考察の読み方……小野田祐紀,北川 孝

3章 スコーピングレビューの書き方

1 スコーピングレビュー作成の全体像……北川 孝

2 予備検索……前田大忠,北川 孝

3 レビューテーマの協議/レビュークエスチョンの決定

4 適格基準の確立……槶原勇人,北川 孝

5 データベースの検索……倉澤康之,北川 孝

6 灰色文献の検索……池田朋大,北川 孝

7 プロトコルの作成と登録……金子隆生,北川 孝

8 1次スクリーニング

9 2次スクリーニング

10 データ抽出……近 裕介,佐々木康貴,北川 孝

11 結果の提示

12 考察の書き方……納土真幸,北川 孝

13 結論の書き方……北川 孝,納土真幸

4章 スコーピングレビューの公表から出版まで

……北川 孝,林 昌輝

1 初学者向け 学会発表のストラテジー

2 初学者向け 論文執筆のストラテジー

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書籍情報

  • ISBN:9784758322584
  • ページ数:216頁
  • 書籍発行日:2024年2月
  • 電子版発売日:2024年2月6日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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