ICUとCCU 2024年2月号(Vol.48 No.2)【特集】重症患者の腸内細菌叢は制御できるか?:腸管内治療の現況と展望

  • ページ数 : 56頁
  • 書籍発行日 : 2024年2月
  • 電子版発売日 : 2024年2月22日
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内容

【特集】重症患者の腸内細菌叢は制御できるか?:腸管内治療の現況と展望
メタゲノミクスによる病態解析:病原体検出や腸内細菌叢評価/重症患者における腸内細菌叢の変化と病態との関連/プロバイオティクス・シンバイオティクス療法 ほか

序文

特集にあたって


近年の分子生物学の発展により,生体における腸内細菌叢の役割に関して解析が飛躍的に進みました。多彩な腸内細菌叢は,腸管上皮を介して膨大な遺伝子シグナルを常に発信しており,生体の健康維持に不可欠な存在であることも分かってきました。一方,腸内細菌叢の異常(Dysbiosis)は,生体の免疫・代謝能に多大な影響を及ぼし,各種感染症,代謝疾患だけでなく,脳疾患,心疾患,肝疾患,精神疾患など多様な病態との関連が報告されています。

ICUで治療を要する重症病態患者においても,早期から常在優勢菌である偏性嫌気性菌が減少し,腸内細菌叢の多様性が失われ(単純化),Dysbiosisが顕著にみられることが明らかとなり,患者の腸管環境や腸管バリア,腸管免疫を守るために腸内細菌叢をいかに制御すべきか? 臨床的にも注目される課題の1つです。

実際に,腸管は外傷,熱傷,敗血症,ショックなど侵襲時の重要な標的臓器の1つであり,“themotor of critical illness”として重症化過程で主要な役割を担うと考えられています。ICU患者においては,腸管蠕動不全や難治性下痢がしばしば認められ,腸管機能不全と予後との関連も指摘されています。また,腸管と他臓器との臓器連関も注目されており,腸管機能不全が多臓器障害進行のトリガーとなる可能性もあります。

本特集では,「重症患者の腸内細菌叢は制御できるか?:腸管内治療の現況と展望」をテーマとし,重症病態における腸内細菌叢の評価とその制御が期待される種々の腸管内治療を取り上げ,それぞれ第一線でご活躍されている先生方に最新情報と今後の展望を解説いただきました。

腸内細菌叢の評価に関しては,中村昇太先生に次世代シークエンス技術を用いたメタゲノム解析(メタゲノミクス)のTipsとピットフォールについて解説いただきました。重症病態における腸内細菌叢に関しては,小島将裕先生に侵襲時の腸内細菌叢および代謝物質の変化や内因性疾患とのかかわりについて説明いただきました。注目される腸管内治療に関しては,清水健太郎先生に「プロバイオティクス・シンバイオティクス療法」について,西田淳史先生に「糞便移植法(FMT)」について,金倫基先生,中原拓先生に「腸内細菌の生菌製剤開発の現状」について,佐藤格夫先生に「選択的消化管除菌(SDD)」について現状のエビデンスと今後の課題などを詳述いただきました。いずれも重症病態患者における適切な腸管内治療を考察する上で貴重な内容になっています。

腸内細菌叢の評価と腸管内治療は“生体内から病態を制御する新たな集中治療”として今後発展する可能性が期待されます。各種重症病態を横断的に診療する集中治療医にとって,本特集が有益なものとして役立つことを願っています。是非,ゆっくりご一読いただければ幸いです。

最後に,各領域の素晴らしい先生方に多大なお力をいただき,本特集の企画を進める機会を得ましたことに心より感謝申し上げます。大変ありがとうございました。


小倉 裕司
大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター

目次

特集:重症患者の腸内細菌叢は制御できるか?:腸管内治療の現況と展望

特集にあたって

小倉 裕司

メタゲノミクスによる病態解析:病原体検出や腸内細菌叢評価

中村 昇太・清水健太郎・小倉 裕司

重症患者における腸内細菌叢の変化と病態との関連

小島 将裕

プロバイオティクス・シンバイオティクス療法

清水健太郎

腸内細菌の生菌製剤開発の現状

金 倫基・中原 拓

糞便移植法(fecal microbiota transplantation:FMT)

西田 淳史

SDD(Selective Digestive Decontamination)療法

佐藤 格夫・斎田 真理・竹澤 光明・田邊 庸徳

沖田 光雄・福山 史郎・向井 直樹

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書籍情報

  • ISBN:9784019004802
  • ページ数:56頁
  • 書籍発行日:2024年2月
  • 電子版発売日:2024年2月22日
  • 判:A4判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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