総合内科流 一歩上を行くための内科病棟診療の極意

  • ページ数 : 364頁
  • 書籍発行日 : 2024年3月
  • 電子版発売日 : 2024年3月29日
5,940
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商品情報

内容

ジェネラリストとしてのマインドをもって診療にあたる!
日本は高齢化率が高く、現在、世界に先駆け、超高齢社会に突入しています。それを表すかのように内科病棟では、高齢者が目立ちます。診療にあたる医師の皆さんも、「高齢者が多いなぁ」という印象を持っているのではないでしょうか。そこで本書では、実務経験の豊富な内科医として、定義やガイドライン通りに治療するだけでなく、一歩上を目指すための総合内科流の診断のコツを紹介しました。入院前と入院時の対応、入院後のマネジメントを円滑に進めるための準備、心不全、心房細動、尿路感染、誤嚥性肺炎、偽痛風、肝硬変、認知症、血糖異常、不明熱などの治療各論から、最後は退院後を見据えどのように対応すればよいかを詳述しました。また、今後需要が高まるホスピタリストの実務も知ることができます。本書を読んで内科病棟診療の醍醐味を一緒に味わってみませんか?

序文

序文

内科病棟を見回すと、高齢者ばかりというのが今の日本の現状だと思います。多疾患併存の高齢者診療では、内科医として、ただガイドライン通りに治療するというだけでは、立ちいかなくなっているように感じます。そんな現代の日本社会において、一歩上を目指すための総合内科流のエッセンスを皆様にお伝えしたいと思います。

筆者は卒後14 年目の総合診療医です。後期研修医までは急性期の病棟診療および救急診療に携わり、どっぷりと急性期医療をしていました。転機は、医師7 年目に家庭医療学を病院で実践することを意識し始め、さらに地域包括ケア病棟での診療に従事しました。その際は、他の急性期病院からの転院症例を受け入れ亜急性期から慢性期にかけたケアを実践しました。その中で、地域包括ケア病棟および在宅医療で高齢者を診療するためには急性期の内科診療の知識のみでは不十分であり、老年医学、栄養学、リハビリテーション、緩和ケア、臨床倫理、精神医学などの多種多様な分野について自分なりに深める必要がありました。この際に、家庭医療学の基本原則であるBPS モデルの応用としてこれらの領域を深めていくという考え方がとても有効でした。この頃は急性期医療に、ほとんど従事していませんでした。

しかし、医師9 年目に実家の奈良に帰ることになり、再度、急性期病院の総合診療科で急性期病棟および救急医療に従事するようになったことが転機となりました。久しぶりに従事した急性期医療は充実したものでしたが、以前は見えてこなかった風景が見えてきました。それは急性期病棟でこそ、その後の地域包括ケア病棟や在宅医療を見据えたケアを、BPS モデルをベースに行うことが重要ではないかという気づきでした。

浄土真宗では娑婆世界から浄土に行くことを「往相」、浄土から娑婆世界に戻ることを「還相」と呼びます。急性期から慢性期に行くことを「往相」慢性期から急性期に戻ることも「還相」と筆者は勝手に呼んでいます。総合診療や家庭医療の後期研修では急性期病棟と在宅医療を交互に研修するので「往相」と「還相」の気づきは得やすいですが、急性期の内科病棟や救急診療のみでは、「往相」と「還相」の気づきは得られにくいように感じます。

内科のガイドライン通りに診療しているにもかかわらず高齢者診療や複雑困難症例がうまくいかないと感じることはないでしょうか? その究極の解決策は「往相」と「還相」の実践だと思います。しかし、多くの内科医は急性期病院から動くことは難しいというのが現状です。

そこで、本書の意義があります。急性期病院でどのように慢性期で重要となる概念を活かすかが本書の主な主題です。また各論では還相として再び急性期病棟に戻りBPS モデルをベースとした視点で内科疾患をどう深めるかについて記載してみました。

日々の内科臨床を深めようと考える若手の内科医や総合診療医にぜひ、本書を手にとっていただければと考えています。この本が急性期と慢性期のケアの架け橋になることを祈っています。


2024年1月20日

市立奈良病院総合診療科
森川 暢
大寒を迎える日に

目次

序章 病棟診療の目的とは?

1 入院前の日常生活により近い状態で退院することである!

病棟と日常生活のギャップを意識する

真のゴールとは

入院日からゴール設定を意識する

第1章 入院前に考えること

1 高齢者の入院後のマネジメントを意識した病歴聴取

食事形態

日常生活動作(ADL)

居住環境

介護保険・サービス

認知症・せん妄リスク

キーパーソン

Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)

2 高齢者の入院後のマネジメントを意識した身体診察

脱水の診察

心不全の診察

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診察

パーキンソン病の診察

肝硬変の診察

口腔衛生

嚥下スクリーニング

認知機能評価

サルコペニア

フォローとしての身体診察

3 高齢者の入院後のマネジメントを意識したルーチン採血検査

血算

ナトリウム

カリウム

カルシウム・マグネシウム

腎機能

肝機能

検査のフォロー

4 マネジメントを意識した入院時サマリーの書き方

現病歴

その他の病歴

既往歴

内服薬

嗜好歴

生活歴

DNAR

アレルギー

身体所見と検査

プロブレムリスト

退院時サマリーを入院時に書けるか

第2章 入院時に考えること

1 入院時や入院前から退院後のことを考える

Sub-Acute

Post-Acute

Pre-Acute

Post-Dischange Care

2 タイムマネジメント

重要度:大 緊急度:大

重要度:大 緊急度:小

重要度:小 緊急度:大

重要度:小 緊急度:小

3 一歩進んだ入院指示

発熱時

疼痛時

不眠時

不穏時

安静度

入浴

血糖測定

バイタルサイン・モニター管理

尿量測定

体重測定

便秘時

4 一歩進んだ輸液の考え方

輸液を決める際のポイント

輸液速度と持続点滴

維持液の離脱

5 食事オーダーについて

嚥下食

制限食

嗜好

6 薬剤オーダーの考え方

薬剤性有害事象

薬剤性有害事象とポリファーマシー

ポリドクターの問題

薬剤性有害事象のリスト

ここまでを踏まえて、持参薬をどうするのか?

高齢者で入院後に積極的に導入する薬剤

薬剤プロブレムリストの提唱

退院後のフォローを意識する

7 看護記録および熱型表、コメディカルの記録について

看護記録

熱型表

コメディカルの記録

8 せん妄

せん妄の3つの因子

せん妄をいつ疑うか?

せん妄の診断

せん妄への包括的介入

不快なものを取り除く

せん妄の薬物介入

睡眠リズムを作る

奥の手

9 深部静脈血栓症(DVT)予防について

DVTリスクの評価

DVT予防方法

抗凝固療法

早期離床の大切さ

DVT予防診療のステップ

10 超高齢化社会における感染症のTips

抗菌薬に慣れる

広域抗菌薬は医療介護関連肺炎では全例必要?

広域抗菌薬は尿路感染症でも必要?

血液培養の重要性

経口抗菌薬について

皮下注射

11 BPSプロブレムリスト

プロブレムリストの書き方

BPSプロブレムリスト

心理的・精神的問題のプロブレムリストの挙げ方

社会的問題のプロブレムリストの挙げ方

BPSプロブレムリストの使い方

BPSプロブレムリストと多職種連携

12 一歩進んだリハビリオーダー

ICFとは

「機能」について

「活動」とその評価について

「参加」について

ゴール設定について

早期リハビリテーションについて

セラピストの種類

病棟でのリハビリについて

リハビリの中止基準とは

リハビリ栄養とサルコペニア

13 高齢者への対応 高齢者総合的機能評価(CGA)プロブレムリスト

CGAとは?

CGAプロブレムリストについて

CGAフレームワークとICFの関係

CGAプロブレムリストの実際

CGAプロブレムリストからどのようにするか?

14 多疾患併存への対応

マルチモビディティとは?

「慢性臓器障害」とマルチモビディティ

マルチモビディティとガイドライン

マルチモビディティとBPSモデル、バランスモデル

マルチモビディティのバランスモデル

バランスモデルとBPSモデル、多職種連携、ケア移行

15 急性期病院での緩和ケア・ACP、特に非癌について

緩和ケアについて

緩和ケアのプロブレムリスト

Ethical(ACP・倫理)

在宅医との連携について

緩和ケアのトータルペイン

16 精神疾患の対応

統合失調症と内科的疾患

高齢者のうつ合併

Column. 1 神経性食思不振症と中毒

第3章 治療各論

1 心不全について

適切な心不全のマネジメント

原因検索と増悪因子の検索

患者指導など

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)

緩和ケア

ケア移行

Column. 2 フレイルの高齢者における心不全治療の悩ましさ

2 心房細動について

Rate controlとRhythm control

抗凝固療法の適応を考える

合併症の治療を行う

アブレーションの適応を判断する

3 尿路感染について

膀胱炎について

無症候性細菌尿について

腎盂腎炎

急性前立腺炎

4 市中肺炎について

患者背景

肺結核を考えるとき

抗菌薬選択と微生物

尿中迅速検査について

抗菌薬選択について【内服編】

抗菌薬選択について【点滴編】

肺炎が良くならないときに考えること

Column. 3 原因不明の肺炎や間質性肺炎疑いで考えること

5 誤嚥性肺炎について

誤嚥性肺炎で介入可能なABCDEアプローチ

6 蜂窩織炎について

診断

壊死性筋膜炎を見逃さない

蜂窩織炎と抗菌薬、効果判定

蜂窩織炎とリハビリ

再発予防

7 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

抗菌薬

急性増悪での治療

酸素・人工呼吸

禁煙、ワクチン、酸素

リハビリ栄養と吸入薬

気管支拡張薬

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)

緩和ケア

8 上部消化管出血

上部消化管出血を疑う状況

Glasgow-Blatchfordスコア

Rockallスコア

上部消化管内視鏡検査を行うべきタイミング

病棟で上部消化管出血を見逃さないために

トラネキサム酸(トランサミンⓇ)の効果

ピロリ菌除菌

逆流性食道炎+食道裂孔ヘルニア

9 偽痛風(CPPD)

偽痛風のリスク

偽痛風をいつ疑うか?

急性単関節炎としての偽痛風

多関節炎としての偽痛風

診断におけるスコアリングの有用性

診断的治療としてのNSAIDs

偽痛風急性期におけるその他の治療

偽痛風におけるコルヒチン

リハビリテーション

10 急性腎不全

急性腎不全の診断

緊急透析の適応

急性腎不全のフレームワーク

急性腎後性腎不全

急性腎前性腎不全

急性腎性腎不全

透析のタイミング

ピットフォール

11 肝硬変

肝硬変の合併症

肝硬変患者の食事について

12 認知症

認知症の診断

治療可能な認知症(treatable dementia)

認知症の4病型

認知症の薬物療法

認知症周辺症状(BPSD)

BPS(生物・心理・社会)モデル、介護保険、非薬物療法

アドバンス・ケア・プラニング(ACP)

13 高齢者の食欲低下

食欲不振のフレームワーク

消化器、肝胆膵疾患

内分泌代謝疾患・電解質

心肺疾患

薬剤副作用

精神疾患

悪性腫瘍

炎症性疾患・感染症

神経疾患

低栄養の評価と対応

包括的介入とリハビリ栄養

14 電解質異常

低ナトリウム血症

高ナトリウム血症

低カリウム血症

高カリウム血症

低カルシウム血症

高カルシウム血症

低マグネシウム血症

高マグネシウム血症

低リン血症

高リン血症

15 血糖異常(血糖管理、高血糖緊急症、低血糖)

血糖の目標値

集中治療室での血糖コントロールの実際

持効型インスリンの有効利用

スライディングスケール

食事量による超速効型インスリンのスライディング投与(食後打ち)

スライディングスケールの有効利用

低血糖への対応

低血糖の原因

原因不明の入院中の低血糖

高浸透圧性高血糖症候群

糖尿病性ケトアシドーシス

16 入院中のトラブル(発熱、下痢、便秘、尿閉、血球異常)

入院患者の発熱

下痢

便秘

排尿障害

貧血

血小板低下

好中球減少

17 不明熱へのアプローチ

不明熱の定義

CRPが上昇しにくい発熱

CRPが上昇した不明熱

不明熱の前提としての血液培養、NSAIDsチャレンジ

それでも診断が難しい不明熱

解剖と病態

所見の解釈

第4章 退院後を見据えたケア

1 病状説明とshared decision making

病状説明におけるインフォームドコンセントの問題

Shared decision makingを病棟で効率よく行うための注意点

家族会議

ナッジとリバタリアン・パターナリズム

2 多職種連携

多職種連携とは

多職種連携のコンピテンシー

多職種カンファレンスのコツと臨床倫理

3 ケアの移行

ケアの移行とは

ケアの分断

包括的評価

主治医意見書と訪問看護指示書

診療情報提供書

退院療養計画書

ケアの移行の重要拠点としての地域包括ケア病棟


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書籍情報

  • ISBN:9784765319843
  • ページ数:364頁
  • 書籍発行日:2024年3月
  • 電子版発売日:2024年3月29日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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