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商品情報
内容
本書は鉗子分娩の歴史的な推移や吸引分娩との使い分けのほか、回旋異常のメカニズムや、それに対する鉗子分娩の具体的な手技を、ファントーム模型を使ってわかりやすく解説。産科医が回旋異常を理解し、実際の分娩の場で、胎児の状況や今後の経過・リスクを把握したうえで回旋異常に対処するのに役立つ。
※以下の写真は許諾の関係により電子版では掲載しておりません
P14 図6 楠本イネ
序文
はじめに
筆者が鉗子分娩をはじめて意識したのは40年以上も前にさかのぼる。研修医として分娩というものが何となくわかり始め、多少の自信を付けつつあったころ、偶然、他大学の医局に所属する同学年の産婦人科医と分娩について語り合う機会があった。ところが、互いに喜々として臨床経験を自慢するうちに、自分の漠然とした自信は次第にコンプレックスへと変わっていくことになる。彼と自分との間には、お産に関する理解の深さにおいて歴然とした差があることを感じたのである。彼の所属する一門はわれわれの医局がすでに放棄していた骨盤位経腟分娩と鉗子分娩を容認していた、というよりむしろその技術習得を積極的に勧めていた。そして骨盤位経腟分娩における最大の関門である後続児頭娩出の一助となるパイパー(Piper)鉗子の存在や、難産に対する鉗子分娩の話などを聞かせてくれたのであった。さらに、その実践には児頭先進部の下降度や回旋の状況といった、分娩時の正確な所見の把握がいかに大切か、その際医師はどのように対処すべきか、少なくともそれらを深く認識していた彼は、当時の筆者の知識・技術が及ばないレベルに達していたのであった。
それまで筆者は、分娩が滞れば漫然とクリステレル胎児圧出法を助産師に指示し、無効であれば当たり前のように吸引分娩を選択し、うまくいかなければ帝王切開に切り替えればよい、と思考はそこで停止していた。そのとき生じた不快なコンプレックスは自分の分娩への理解の浅さに起因し、その源流はもしかすると鉗子分娩なるものをまったく知らないことにあるのではないか、と思い至ったのである。
その衝撃的な出会いから、分娩鉗子という器具に対する憧憬にも似た強い興味が生じたのは当然であろう。しかし、周囲を見回しても鉗子分娩を教えてくれるどころか、実際に鉗子分娩を目にしたことすらない指導者ばかりであった。初心者が頼れる文献や教科書なども見当たらず、どのように技術習得すべきか見当もつかなかった。だから海外の教科書を頼りに独学で知識を集め、はじめて鉗子分娩を実施するまで、実に5年の月日を要したのである。震える手で実践した最初の鉗子分娩以降、多くの難産の場に鉗子を使って事なきを得て、不要な帝王切開も回避することができたのは、まさに分娩鉗子のたまものであり、それを気づかせてくれたあの日の出会いに今でも感謝している。
産科医としての役目を終えようという落日に差しかかった今、あのころの筆者と同じ思いを抱いている若き産科医のために本書を書き残しておこうと思う。
2024年2月
飯田 俊彦
目次
・はじめに
【第1章 鉗子分娩の歴史-分娩鉗子の発明とその臨床的意義-】
1 チェンバレン家による発明
2 わが国への紹介-シーボルトからその娘イネへ-
【第2章 鉗子分娩の分類】
1 分娩鉗子の種類
1)一般型鉗子
2)特殊型鉗子
3)鉗子分娩の本質とは
2 児頭下降度による鉗子分娩の分類
1)鉗子分娩におけるステーションの意義
2)分娩鉗子の分類
3)ネーゲレ鉗子とキーラン鉗子の特徴とその適用
【第3章 鉗子分娩の特徴-吸引分娩、クリステレル胎児圧出法との比較-】
1 吸引分娩と鉗子分娩の長所・短所とその使い分け
1)吸引分娩の限界
2)吸引分娩と鉗子分娩の機能の違い
3)吸引分娩と鉗子分娩の合併症
2 クリステレル胎児圧出法の問題点
【第4章 鉗子分娩が可能な条件と牽引理論】
1 前方後頭位における鉗子の装着-骨盤装着とは? 児頭装着とは?-
1)骨盤装着
2)児頭装着
3)児頭骨盤装着
2 児頭下降度の表記
3 分娩鉗子の牽引における適正な児頭下降度
4 鉗子分娩の牽引理論-分娩鉗子の力学的メカニズム-
1)反屈位の矯正
2)不正軸進入の矯正
3)第2回旋異常の矯正(矢状縫合の傾斜角が45°以下のとき)
4)てこの原理による牽引抵抗の減弱化
5)分娩の3要素と産道抵抗と摩擦力
【第5章 鉗子分娩の準備】
1 鉗子分娩を回避できるDial Phone Techniqueとは
2 牽引実施の可否の評価-試験牽引、クリステレルテストとは-
3 鉗子分娩と会陰切開
【第6章 一般的な鉗子分娩の実際】
1 鉗子の挿入
2 鉗子の接合
3 鉗子の牽引
4 鉗子の解除・抜去
【第7章 特殊な鉗子分娩】
1 傾斜した前方後頭位に対する鉗子分娩-矢状縫合の傾斜角が45°を超えるとき-
2 低在横定位に対する鉗子分娩
3 後方後頭位に対する鉗子分娩
1)後方後頭位のままの娩出
2)後方後頭位に対するスカンゾーニ手技
【第8章 鉗子分娩の関連行為】
1 鉗子分娩後に必用な関連手技
1)胎盤娩出手技−ブラント・アンドリュース法
2)止血手技①:子宮双手圧迫法
3)止血手技②:子宮内ガーゼ充填手技
2 重度会陰裂傷の修復-第3度・第4度会陰裂傷の縫合-
3 鉗子分娩と無痛分娩
4 鉗子分娩における助産師との協働
・おわりに
・WEB動画一覧
・WEB動画の視聴方法
・索引
・著者紹介
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書籍情報
- ISBN:9784840484824
- ページ数:136頁
- 書籍発行日:2024年4月
- 電子版発売日:2024年4月5日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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