ICUが変わる!PICS診療実践マニュアル

  • ページ数 : 231頁
  • 書籍発行日 : 2024年2月
  • 電子版発売日 : 2024年4月12日
¥6,600(税込)
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商品情報

内容

PICSを最小限にするための実践書.評価法や先行事例も解説!
PICSを最小限にするための実践書.基礎知識から評価・予防・介入の具体的な進め方までを,根拠とともにクリアに解説.ICU退室後フォローの事例や,ダウンロードして使える各種資材データなどの特典も必見!

序文

監修にあたって

集中治療領域における比較的短期の生命予後は,集中治療医学の発展とエビデンスの集積,診療ガイドラインの普及などにより近年目覚ましく改善されてきています.一方で,ICU に長期間入室した生存者の多くは,ICU 退室後さらには退院後も長期間に及ぶ,身体障害や不安・ストレス障害・PTSD(Post-Traumatic Stress Disorder)などの精神障害,記憶・注意・実行機能といった認知機能の低下が生じ,社会復帰が困難となっていることが明らかになってきています.これらは,Post-Intensive Care Syndrome(PICS)として広く認識されるようになってきました.一方,患者家族に対しても精神的影響のみならず介護のための離職や経済的な問題もあることが明らかになり,さらに小児のPICS においては,患児の発達への影響のみならず,家族や同胞への影響は,患児と家族の双方に複雑に絡み合って,織りなすように影響を及ぼしていることも明らかになってきています.これは,もはや医学的問題にとどまらない社会的な問題であると言えます.

集中治療は,救命を第一義とした時代はすでに終えており,現代の集中治療の目的は,救命の先にある社会復帰をも視野に入れたものでなければなりません.これには,PICS の正しい理解と対策が必要です.私が理事長を務める日本集中治療医学会では,それに向けた対策をいち早くとってきました.日本版敗血症診療ガイドライン2016 においては,欧米に先駆けて,PICS を取り扱いました.2019 年には「PICS 対策・生活の質改善検討委員会」を立ち上げ,精力的に活動を行ってきています.委員会は,PICSの臨床や研究に携わる医師,看護師,理学療法士や作業療法士などの専門家からなるチームで構成されています.現在までに多くの質の高いエビデンスを発出してきており,PICS 研究では我が国は先進国と言えるほどになってきているのは喜ばしいことです.さて,日常診療の現場で,PICS の予防と対策を行うには,PICS の病態生理や発症要因を正しく理解し,多職種の連携やエビデンスに基づいた実践が必要です.しかしながら,PICS の言葉が浸透しているほどには,積極的なPICS 対策は行われていないのが現状です.これは,多くの臨床現場でPICS に関する知識や経験が不足し,どのように行っていいかがわからないことが多いことが,その原因の一つと思います.本書は,中村謙介先生の編集で,「PICS 対策・生活の質改善検討委員会」のメンバーが中心となって完成したものです.PICS に関する基本的な知識から具体的な方法までをわかりやすく提示することで,PICS 診療の普及と向上に貢献することをめざして企画編集されています.スコーピングレビューやエキスパートコンセンサスをもとに,PICS の定義,原因,診断,予防,治療などが詳細に説明されています.さらには,啓発用のパンフレット,ポスター,さまざまなチェックシートや各種用紙のフォーマットのデータがダウンロードできるなど,きわめて実践的で親切な内容に組み立てられています.後半には,PICSラウンドやPICS 外来などの実施方法や事例も十分な誌面を割いて紹介されており,本書全般にわたって,要所に適切な文献もつけられているため,さらに深掘りした学習も可能となっています.PICS に関する書物も増えてきましたが,これほどまでにアカデミックでかつ実践的,真の意味で明日からの診療に役立つように工夫された内容の書物は他に類を見ません.これは,ひとえに,筆者たちのアカデミックなレベルの高さと,自らが日常診療の中で日々,工夫を凝らしながら実際にPICS 診療を行っていることの証であると思います.

本書をバイブルに,それぞれの施設において,質の高いPICS 診療が行われ,多職種による「患者・家族本位のより質の高い集中治療」が広く実践されることを願ってやみません.


2023年12月吉日

藤田医科大学医学部麻酔・侵襲制御医学講座
西田 修


編集にあたって
PICS 診療と救急・集中治療

PICS 診療実践マニュアルを手に取ってくださりありがとうございます.本書は日本集中治療医学会PICS 対策・生活の質改善検討委員会のメンバーが中心となって執筆しました.マニュアルを提示するために特別に複数のシステマティックレビューを行い,最新のエビデンスに基づいたPICS 診療のあり方をわかりやすく1 冊の本にまとめたものとなります.本書ではPost-Intensive Care Syndrome(PICS)に関連して行うべき評価や治療,対策,ICU ケアを広く含めてPICS 診療という言葉で表現し解説させていただいております.

これまで,PICS にマニュアルと言えるようなものは存在しませんでした.それゆえに(自分も含めて)各施設では手探りにPICS 診療を行ってきたと言っても過言ではないと思います.しかし,PICS というコンセプトが提唱され10 年が経過し,PICS 診療はエビデンスや経験を蓄積することで,一定の潮流を成しながら発展を続けてきました.その結果,現在ではPICS 診療のあるべき形の方向性が提示できるようになり,本書はそれらをはじめてまとめ上げたものと言えます.そう遠くない未来にPICS フォローアップに何らかの加算がつき,国をあげてPICS 診療を行う時代が来るでしょう.それを見据えて各施設がPICS 外来やPICS ラウンドをスムーズに導入し,世界に先進するPICS 診療を展開できるようにと,メンバー一同思いを込めて作成したのが本書「PICS診療実践マニュアル」なのです.

日本で特にPICS 診療の必要性が認識されるようになった理由は,高齢化社会で著明なPICS をきたすICU 生存患者が多いこともありますが,PICS が「看護の目的」の中心をとらえるものであったからと自分は考えています.日本看護協会が掲示する看護師の役割は健康の増進,疾病の予防,健康の回復,苦痛の緩和の4 つにあるとし,そのホームページの中で看護の目的とは「本来その人がもつ自然治癒力に働きかけ,回復しやすい環境を整え,健康の保持増進や,病気の予防や苦痛の緩和を行い,生涯を通して,その人らしく暮らしていくことができるよう,身体的,精神的,社会的に支援すること」としています.これはPICS 診療のコンセプトそのものではないでしょうか.特に救急集中治療において,救命のみならず中盤以降の回復に向き合い支援することは,看護師のみならず急性期診療にかかわるあらゆる職種が考えねばならない重要事項と言えるでしょう.

私自身のPICS 診療はやはり前任地の日立総合病院PICS 外来とともにありました.そのきっかけとなったのは,西田修先生からPICS 委員会への参加についてお声がけいただき,その初回の委員会の際に「PICS 外来をやってみてくれないか」と指命を受けたことでした.その後の委員会や研究活動を経て,西田先生監修の下で本書の発刊に至ったことは非常に感慨深いものがあり,西田修先生にこの場を借りて謝辞を申し上げたいと思います.そして日立総合病院救命救急センターにはその土壌ができていると確信していたこともあり,理想に向けて急速に準備を進め,およそ半年ほどで始動に至ることができ,日本でも有数のPICS 外来運営施設となりました.日立総合病院救命救急センターの医療スタッフの皆様に厚く御礼申し上げます.

しかし,PICS 診療には解決すべき問題がいまだたくさんあります.すべての患者をフォローアップすることは困難であり,今後は電話や遠隔診療などのIT も駆使しながら効率的なPICS 診療の方法を開発していく必要があります.メンバー一同,そして皆様と,PICS 診療のさらなる発展をめざしていけたらと思います.その第一歩として,まずは日常臨床にPICS 診療をとりいれるため,本書をお役立ていただけましたら幸いです.


2023年12月吉日

横浜市立大学附属病院集中治療部
中村謙介

目次

第1部 PICSの基本

 第1章 PICSの基礎知識

  1.PICSとは【井上茂亮】

  2.PICSにおける障害 ~PICSの三要素およびPICS-F,PICS-p【三浦悠介,近藤 豊】

  3.PICSのリスク【柏木 静】

第2部 PICSマニュアル[基礎編]

 第2章 PICS評価マニュアル

  第2章のはじめに【劉 啓文】

  1.身体機能障害の評価【中西信人】

  2.認知機能障害の評価【中西信人】

  3.精神障害の評価【小松 守,劉 啓文】

  4.QOLの評価【中西信人】

  5.PICS-Fの評価【高橋慶彦,劉 啓文】

  6.PICS-pの評価【壷井伯彦】

  7.PICS評価のタイミングと方法【佐伯拓也】

 第3章 ICUで行うPICS対策マニュアル

  第3章のはじめに【畠山淳司】

  1.ABCDEFバンドル【河内 章,劉 啓文】

  2.早期リハビリテーション【飯田有輝】

  3.急性期栄養療法【畠山淳司】

  4.せん妄管理【福井俊輔,畠山淳司,中村謙介】

  5.鎮痛鎮静管理【河合佑亮】

  6.環境管理【小幡賢吾,大村正行】

  7.ICU日記【西田岳史】

 第4章 PICS啓発マニュアル〜役立つ資料集

  第4章のはじめに〜臨床で役立てよう!PICS予防・啓発のための資料集【曷川 元】

  1.患者・家族向けPICS啓発パンフレット,ポスター【白﨑加純,一二三 亨】

  2.院内スタッフ向けPICS啓発ポスター【川上大裕】

  3.バンドル遵守状況のチェックシート【畠山淳司】

  4.病棟,退院先・PICS外来申し送り資材【西田岳史】

  5.ICU日記のフォーマット例【西田岳史】

  6.院内向けPICS啓発勉強会スライド【谷水 愛,楠井由紀,嶋 尚哉,坂神裕子,森田英誉,白﨑加純,隅田英憲,井上茂亮】

第3部 PICSマニュアル[発展編]

 第5章 PICSラウンドマニュアル

  第5章のはじめに【一二三 亨】

  1.ICU退室後訪問とPICSラウンド(歴史と違い)【橋内伸介,田中しのぶ,牧野晃子】

  2.PICSラウンドの実際(聖路加国際病院)【白﨑加純,三原悠佑,村上 学,坂口彩子】

  3.PICSラウンドの実際(神戸市立医療センター中央市民病院)【久保田絢子,里路光太郎,森田幸子,大内謙二郎】

  4.PICSラウンドの実際(本邦における調査結果)【牧野晃子,橋内伸介,田村富美子,柳澤八恵子】

  5.PICSラウンドマニュアル【川上大裕】

 第6章 PICS外来マニュアル

  第6章のはじめに〜PICS外来の基礎知識【中村謙介】

  1.どこでPICS外来を行うか?【隅田英憲】

  2.誰がPICS外来を行うか? チーム構成,対象患者は?【隅田英憲,劉 啓文】

  3.いつ行うか? 退院後どのくらいの時期に行うか?【畠山淳司】

  4.PICS外来における診療【畠山淳司】

  5.PICS外来の実際(日立総合病院)【中村謙介】


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書籍情報

  • ISBN:9784758124126
  • ページ数:231頁
  • 書籍発行日:2024年2月
  • 電子版発売日:2024年4月12日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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