特集にあたって

急性腎障害（AKI）の概念が提唱されてから約20年が経過しましたが，集中治療領域におけるAKIの理解と取り組みは，近年，その重要性がますます高まっています。AKIは，さまざまな原因により急激に腎機能が低下する状態を指し，集中治療室での患者管理において避けて通れない課題となっています。その複雑な病態生理と治療の難しさは，集中治療医にとって常に大きな挑戦であり，適切な治療アプローチの選択は，患者の予後に直接かかわるため，正確な知識と理解が求められます。

本特集「AKIの病態の理解と集中治療」では，AKIの最新の知見と，その集中治療におけるアプローチに焦点を当てます。敗血症性AKI，薬剤性AKI，急性心不全によるAKIなど，さまざまな原因に基づくAKIの発症メカニズムと治療戦略を詳細に解説します。これらの知識は，ICUにおける複雑な病態に直面する医療従事者にとって，非常に価値のあるものです。

とくに，AKIの早期診断と治療には，腎臓内科的な洞察と，集中治療医療の経験が融合したアプローチが必要とされます。本特集では，敗血症や心不全といったAKIの主要な原因に対する最新の治療アプローチから，急性期の腎機能評価，薬剤投与設計，そして急性血液浄化の最新動向まで，幅広くカバーしています。また，ICU多職種連携によるAKI患者ケアの最適化や，AKI診断基準とガイドラインの最新動向，さらにはプレシジョン・メディシンとAKI治療の未来への展望についても触れています。

執筆にあたっては，各分野の専門家である先生方に，その豊富な臨床経験と専門知識を基に，最新のエビデンスに基づいた解説を行っていただきました。本特集を通じて，AKIの基本的な概念から最新の治療アプローチまで，包括的に理解を深めることができます。

集中治療領域でのAKIの適切な管理は，患者の生命を守るうえで非常に重要です。本特集が，AKIに直面する医療従事者にとって，最新の知識を得るための指針となり，患者ケアの質の向上に貢献することを期待しています。医療従事者が本特集を通じて得られる知識と洞察が，患者さんへのより良いケアにつながることを願ってやみません。

末筆となりましたが，ご多忙のなか，素晴らしい解説を執筆いただきました先生方に心より感謝申し上げます。

藤田医科大学医学部麻酔・侵襲制御医学講座 西田　修