脳神経外科手術スキルアップガイド 改訂2版

  • ページ数 : 292頁
  • 書籍発行日 : 2024年5月
  • 電子版発売日 : 2024年5月8日
10,780
(税込)
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商品情報

内容

脳神経外科医が卒後7年目までに習得すべき手術手技のエッセンス
若手脳神経外科医に必須の手術手技を,豊富なイラストと術中写真で視覚的に解説.ベーシックな手技から基本開頭術,頭蓋底開頭,キーホール,脊椎外科や血管内治療,神経内視鏡・外視鏡など卒後7年目程度までに習得すべき手技を幅広く収録.初心者が陥りやすいピットフォールとその回避法も論理的に説明した.細分化,専門化が進む脳神経外科領域の技術のミニマムエッセンスを統合し,知識と技術のリファインに役立つ一冊.

序文

第2版の序

本書第1版を刊行した2015年は脳神経外科のサブスペシャリティー分野は脳血管内治療と脊髄脊椎外科の専門医制度が整備され、さらにてんかん、内視鏡について専門医制度が作られようとしていた時でした。

日本の脳神経外科は基本診療科のひとつであるため、その範疇は血管障害、腫瘍、脊椎脊髄、外傷、小児奇形、機能、再生とリハビリと広範です。さらに、治療手段でも頭蓋底開頭、顕微鏡手術、血管内治療に加え、近年では、内視鏡、外視鏡が出現し急速に適応が拡大しています。鍵穴開頭など低侵襲な治療も当たり前の治療となりました。また内科的治療も分子標的薬は悪性脳腫瘍に対する有効なモダリティになりました。さらに専門医も、脳卒中外科専門医、小児脳神経外科専門医、神経外傷専門医、聴神経腫瘍専門医などがどんどん出現しています。

しかし、このように専門化、細分化していく未来には何が待ち受けているでしょうか?ある人の話では「ドイツ脳神経外科は、血管内をradiologistに渡し、外傷を救急医に渡すなど分割していった。その結果、本体がなんだか何か見えなくなってしまった。この現象はFragmentationとも言え誤りであった」と専門分化に否定的な意見もあります。また本邦においても一般外科において、かつて「消化管外科」「肝胆膵外科」「内視鏡外科」など無数の専門分野ができておりましたが、結局崩壊に近い状態となり近年は大講座制に戻すような動きも出ています。つまり知識の発展のためには、選択と集中だけではダメで、統合と分散も必要なのです。『脳神経外科手術スキルアップガイド」は脳神経外科専門医として習得かつ守るべき技術のミニマムエッセンスを統合したつもりです。

本技術書はベーシックな手技から、基本開頭術、頭蓋底開頭、キーホール、脊椎外科や血管内治療まで、卒業後7 年目程度の若手脳神経外科医ができなくてはならない手術手技を概説しています。内容や術中写真、イラストは実際にその手技を行っている福井大学の若手の先生に作成をお願いし、全原稿を最後に私がチェックしました。多くのイラストとサイドメモによって、初心者が陥るピットフォールを浮き彫りにしています。またその回避法は、なぜそうなのかをできるだけ論理的に説明したつもりです。

私は、STA-MCAバイパスとマイクロサージェリーを本邦に導入した菊池晴彦先生、AVMの世界的権威橋本信夫先生を始めとする京大の名手から伝統の脳血管外科を継承し、福井に着任以来それを発展させるべく努力してまいりました。しかし2016年に福島孝徳先生の聴神経腫瘍やMVD、頭蓋底、鍵穴技術を拝見し、自分の不勉強に大変ショックを受けました。それ以来、直接手術を教わる機会を作り、学び、医局員にも伝承して参りました。本書は、これら京大流と福島流をミックスした基本技術書になっていると存じます。もちろん流儀は多数あります。また、技術は日進月歩です。本書に記述した方法はほんの1例に過ぎません。我々の施設も、また皆さんの施設も絶え間なく技術のリファインを行い続けていると存じます。本書はそのたたき台として用いていただければ幸いです。

本書を故 福島孝徳先生に捧げます。


2024年4月

菊田健一郎

目次

Chapter 1 皮膚切開、硬膜切開と止血、縫合 

1. 皮膚切開と止血、縫合  【有島英孝】

皮膚切開 

止血 

縫合 

2. 硬膜および静脈洞の止血と硬膜縫合 【菊田健一郎】

皮膚からの出血 

静脈洞をまたぐ開頭 

硬膜および静脈洞からの止血 

筋肉からの出血 

骨からの出血及びオキシドール 

Chapter 2 基本開頭術の作図と皮膚切開 

1. 前頭側頭開頭(動脈瘤を題材に) 【橋本智哉】

本開頭の重要性 

術前準備 

症例1 未破裂中大脳動脈瘤における右前頭側頭開頭 

症例2 混合出血における右前頭側頭開頭 

再手術の症例 

2. 側頭開頭[浅側頭動脈中大脳動脈(STA-MCA)吻合術、浅側頭動脈上小脳動脈(STA-SCA)吻合術] 【田井克英】

解剖のメルクマール 

STA-MCAバイパスにおける側頭開頭術 

STA-MCAダブルバイパスの実際 

STA-SCAバイパスにおける側頭開頭術 

3. 頭頂開頭(上矢状静脈洞:SSS越え、傍正中髄膜腫を題材に) 【四方志昂】

術前の確認事項 

体位 

皮膚切開と開頭 

4. 正中後頭下開頭 【山内貴寛】

体位 

皮膚切開のデザイン 

皮膚および筋層切開 

大孔周囲の剥離 

開頭 

C1の切除 

硬膜切開 

5. 外側後頭下開頭 【東野芳史】

対象病変 

術前の確認事項 

開頭範囲 

開頭範囲の違い 

皮膚切開〜筋肉の剥離 

mastoid emissary veinの処理 

椎骨動脈周囲の筋肉の剥離 

mastoid air cellの処理 

硬膜内操作 

閉頭 

Chapter 3 慢性硬膜下血腫穿頭血腫洗浄術 【梅田秀人】

体位・鎮静 

バーホールの位置決め 

皮膚切開 

穿頭 

硬膜切開 

洗浄 

閉頭 

Chapter 4 脳室体外ドレナージ術 【月輪 悠】

前角穿刺 

後角穿刺 

Chapter 5 脳室腹腔シャント術(V-Pシャント術) 【山田慎太朗】

Chapter 6 腰椎腹腔シャント術(L-Pシャント術) 【萩原崚太】

術前評価 

各シャントバルブの特徴 

手術方法 

シャントトラブル 

Chapter 7 急性硬膜外血腫の手術 【大岩美都妃】

手術適応 

術前準備 

手術手技 

Chapter 8 急性硬膜下血腫に対する手術戦略 【芝池由規】

初期診療

手術適応の判断

手術室入室まで時間的猶予がない場合

症例

手術手技

Chapter 9 頚動脈の露出と内頚動脈内膜剥離術 【磯崎 誠】

皮膚切開と術野の展開(左側CEAの場合) 

1.広頚筋の切断 

2.胸鎖乳突筋前縁の剥離と術野の展開 

3.頚動脈鞘の切開と血管確保 

4.内膜剥離と縫合 

5.遮断解除 

Chapter 10 頚椎前方アプローチ 【有島英孝】

アプローチの経路 

アプローチは右側?左側? 

術前準備 

手術器具 

麻酔 

体位とセットアップ 

皮膚切開 

中・下位頚椎椎体前面へのアプローチ 

Chapter 11 頚椎後方アプローチ 【山田真輔】

体位とセットアップ 

皮膚切開 

筋層切開 

棘突起縦割 

椎弓正中縦割 

側溝の掘削,ヒンジの作成 

椎弓の挙上 

インプラントを用いた椎弓および棘突起の形成 

閉創 

Chapter 12 頭蓋底開頭・鍵穴開頭 

1. Orbitozygomatic approachの開頭 【四方志昂】

 対象病変 

 手術の実際 

2. Basal interhemispheric approachのための開頭 【磯崎 誠】

 対象病変 

 手術の実際 

3. Anterior transpetrosal approachの開頭 【川尻智士】

 対象病変 

 手術の実際 

4. Posterior transpetrosal approachの開頭 【川尻智士】

 対象病変 

 手術の実際 

5. Far lateral approachの開頭 【東野芳史】

 対象病変 

 術前の確認事項 

 実際の手術 

 大後頭三角 

6. Keyhole approach 【東野芳史】

 対象病変 

 術前の確認事項 

 準備 

 体位 

 実際の手術 

Chapter 13 血管内手術 

1. セットアップ 【木村智輝】

 術前準備 

 手術台の準備 

 圧ラインの準備 

 シース 

2. ガイディングカテーテルの誘導 【赤澤愛弓】

 ガイディングカテーテルの留置 

3. 急性脳血管閉塞に対する再開通療法の基本手技 【荒井大志】

 代表的なStent retriever(SR) 

 STEP1 ガイディングカテーテルの誘導 

 STEP2 Lesion cross 

 STEP3末梢確保の確認 

 STEP4 SRの展開 

 STEP5 再開通の確認 

4. 脳動脈瘤に対するコイル塞栓術の基本 【磯崎 誠】

 Step1 マイクロカテーテルのShaping 

 Step2 マイクロガイドワイヤーのShaping 

 Step3 マイクロカテーテルの瘤内への誘導 

 Step4 コイルの挿入 

 Step5 コイルの選択 

 コイル塞栓術におけるテクニック 

5. 頚動脈ステント留置術 【木戸口正宗】

 術前検査 

 周術期管理 

 使用デバイス 

 治療手技 

 おわりに 

6. フローダイバーターその他最新治療 【松田 謙】

 番外編.血管内治療における基本手技 【磯崎 誠】

 Yコネクターのエア抜きの仕方 

 コイル塞栓術 

Chapter 14 内視鏡手術 

1. セットアップ 【山内貴寛】

 神経内視鏡の種類 

 神経内視鏡手術におけるセットアップ 

 第三脳室底開窓術および松果体部腫瘍生検術 

 血腫除去術 

 下垂体部腫瘍摘出術 

2. 第3脳室底開窓術 【山内貴寛】

 適応疾患 

 術前効果予測と解剖学的評価 

 必要な解剖 

 道具の選択 

 セットアップから手術開始まで 

 皮膚切開から穿頭まで 

 シースの挿入 

 脳室内の観察 

 第三脳室底開窓 

 腫瘍生検 

 シースの抜去と閉創 

3. 下垂体腺腫に対する内視鏡手術 【山内貴寛】

 適応 

 解剖 

 術前診断 

 セットアップと道具の選択 

 手術開始 

4. 脳内血腫除去術 【山内貴寛】

 適応 

 診断と画像評価 

 道具の選択 

 セットアップから手術開始まで 

 穿頭と硬膜切開 

 穿刺とシースの挿入 

 血腫除去 

 止血 

 血腫除去後の止血 

Chapter 15 外視鏡【四方志昂 東野芳史 山田真輔】 

1. 外視鏡のメリットと課題 

2.当院でのセットアップ

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書籍情報

  • ISBN:9784498228436
  • ページ数:292頁
  • 書籍発行日:2024年5月
  • 電子版発売日:2024年5月8日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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