読者の皆さんへ

本書はLinda S. Costanzo先生によるPhysiology7th editionの邦訳です．原著は4年ごとに改版を重ね世界中で読み継がれてきましたが，邦訳である「コスタンゾ明解生理学」は原著第3版が2007年，久々の新訳である第6版が2019年に出版され，多くの方々に受け入れていただきました．原著第7版ではSARS-CoV2など新しいトピックや図表が拡充されたなか，全体の分量は増えないように配慮されています．邦訳が速やかに企画され，また第6版の翻訳にあたられた先生方が皆様戻って来てくださったのも，本書の素晴らしさを関係者が共有していることを物語っています．より充実した「コスタンゾ明解生理学第7版」として，生理学を学ぶ医学，看護学，歯学，薬学，リハビリテーションなどの医療関連分野の学生の皆さんにお届けできることを嬉しく思います．

本書はいわば，Costanzo先生のツボを押さえたわかりやすい講義が臨場感豊かに繰り広げられる講堂へのフリーパスです．理論的な内容が論理の流れを明解に浮き上がらせ，つまずきやすいところでは自問自答で立ち止まり，理解できたら計算問題の練習をして，さらに応用問題として典型的な疾患でみられる症候を生理学のことばで理解することを導き，その病態を是正する考え方まで伝授してくれます．丁寧に読み込んで自ら考えれば，その学習成果は著者が述べるとおり，臨床の場に出てからの考える力の足腰の強さや，洞察の鋭さとして活きること請け合いです．

本書の構成と特徴，さらに学習における活用法や留意点は，原著者序文に明解に述べられているので，まずは序文を熟読するようお勧めします．

第1章の細胞の生理学と第2章の自律神経系は，各章で繰り返し出てくる基本原理や概念が丁寧に説明されているので，先に学習すると理解しやすいでしょう．各章の記載はそれぞれ完結しているので，もちろんどの章から学習することもできます．他章で説明される基本原理や他臓器系での類似点などには，その都度参照先が明記してあるので，あわせて勉強すると，生体の統合作用や各臓器系の連関への理解も深まります．本書を通じて生理学の基本的な考え方をじっくりと学んでほしいと思います．

本書は充実した和英併記の索引を備えており，章の中の小見出しも充実しているので，通読のみならず，短い調べ物にも便利でしょう．生理学の講義や実習の期間だけでなく，他教科や臨床実習において病態生理を基礎に立ち戻って確認するときなどに，本書を手元に置いて活用することで，より深い生理学と病態生理学の理解が得られるものと思います．

用語は「日本医学会医学用語辞典WEB版」に準拠し，各学会の用語集も参照しました．生理学はすべての臓器系にかかわるので，多分野で用いられる用語の訳語統一には困難なこともありましたが，生理学をはじめて学ぶ学生が理解しやすく臨床で使える知識を身につけることを優先し，全章を通じて訳語を統一する方向で選択にあたりました．その際には訳者の先生方にご無理をお願いすることもあり，また監訳者および編集者も努力を払いました．また，原著はCostanzo先生の単著による統一性が大きな特徴ですが，翻訳では各分野の第一線の専門家の多大なるご尽力により，わかりやすさに加えて正確性もより担保できたものと自負しています．

最後に，森美那子氏をはじめとするエルゼビア・ジャパン編集部の皆様のすばらしい教科書作りへの献身に，心から感謝申し上げます．

2023年9月

監訳者を代表して
林　俊宏