第7版の発刊によせて

「ヒューマンボディ―からだがわかる解剖生理学」は，アメリカで“新人ナースのバイブル”といわれている原著の翻訳版であり，今回，第7版が誕生した。原書の「Human Body in Healthand Illness」は，版を重ねるごとに新しい知見や事例が掲載されている。また，時代背景を鑑みながら版を積み重ねていることから，解剖生理学の書籍でありながらも，新版ごとに，非常に新鮮な知識が得られる。そのような書籍を翻訳できることは光栄なことであり，日本の看護基礎教育にも有用であると感じる。

本書の良さは，①人体の解剖生理学だけではなく，それを理解するための生物学・化学・物理学にも触れており，基礎的知識から理解ができる点，②事例エピソードを交えながらの解説が多く掲載されている点，③要所にある“もう一度考えよう！”の内容が読者の理解を再度深めている点，④解剖生理学における重要な用語については日本語と英語の両方が掲載されており，2つの言語で理解できる点である。

特に解剖生理学の内容を基盤に書かれている事例のエピソードは，読者の想像を大いに膨らませ，複雑な解剖学と生理学の知識の理解を促してくれるに違いない。“もう一度考えよう！”の内容は，読者が本書を読むなかで，莫大な情報を整理し，各読者なりの思考で情報をまとめ理解することを助けている。グローバル教育が当たり前となった現代において，日本語だけでなく，英単語の掲載が当たり前と言っても過言ではない。しかし，すべての解剖生理学書籍がそのように構成されているわけではない。本書は日本語と英語の併記を多くの掲載単語に行っている。読者は自然と日本語と英語の両方に馴染めるであろう。

第7版の日本語翻訳にあたり，上記の魅力的な長所を活かしながら，さらにできるだけ日本の医療に即した内容とイメージができるよう事例や文章内容を工夫したつもりである。本書は，“新人ナースのバイブル”であると伝えたが，他のコメディカルスタッフにとっても有効な書籍であると考えている。多職種協働で医療を展開し，チーム医療で対象者の健康を支援していく医療従事者は，基礎的な解剖学，生理学の知識を平等に獲得すべきである。本書は，臨床に有用な基礎的な解剖学と生理学の知識を獲得できる也物になっており，この書物の情報をもとにチームメンバーである医療従事者が患者の健康について討論できることを願ってやまない。

最後に本書の出版に際して多くの方々の支援をいただいた。総監訳の坂井建雄先生，監訳を共に行った工藤宏幸先生からの助言と支援に深く感謝申し上げたい。医療関係の学生にも協力をもらいながら進めた。彼女達の情熱に敬意を表し感謝したい。また発刊に至るまでのプロセスを箔実な作業と管理で支援くださったエルゼビア・ジャパンの担当者にも深謝を述べたい。これらの人々のお陰で発刊に至ることができた。心より感謝を申し上げる。

2023年10月

聖路加国際大学大学院 看護学研究科 教授
大久保暢子