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- 井上 莊一郎
- こうすればうまくいく 日帰り手術の麻酔
商品情報
内容
新しい麻酔薬や筋弛緩薬、筋弛緩を拮抗する薬の開発、また経済状況、医療政策の変化などにより日帰り手術を取り巻く環境が整ってきた近年。患者の早期社会復帰と“最新の小手術”に対する麻酔管理のノウハウ、医療現場の“リズム”をこの本から感じてください。
序文
本書は,日帰り手術に関する最新の話題を全て網羅した貴重な成書であるが,その内容のカバーする範囲は日帰り手術に留まらない,どんな麻酔科医にとっても有用な情報が詰まった本である.以下にその幾つかの理由を述べる.
長寿社会を迎えた現在の周術期医療は,病気を治すだけでなく,早期に社会復帰をさせることまでが求められている.その中で,ERAS(Enhanced Recovery After Surgery)という概念が提唱されていることは周知の通りである.早期復帰という観点からは,日帰り手術というのは究極の形であり,そのエッセンスを学び,一部でも実践することは,日帰り手術という形をとらなくても患者に与える恩恵は大きい.
また,重症患者の麻酔管理や,心臓外科や脳外科といった侵襲度が大きく複雑な,いわゆる大手術の麻酔管理に関する成書は数多く出ているが,日帰り手術に代表されるどちらかというと小手術についてまとめた本は少ない.大手術と同様に小手術の外科技術も日進月歩で進歩しているが,麻酔科医にとってその情報を得る手段は極めて限られている.本書は,「最新の小手術」に対する麻酔管理という観点で読んでいただけると,その使い勝手は倍増する.
さらに,世界共通の経済学的真実として,お金を多く生むところに多くの投資がなされ,大きな進歩が生まれるという法則がある.日本の診療報酬体系の中でお金を生むところは,出来高制の部分であり手術診療,麻酔診療はそこに含まれる.このため現在の報酬体系が続く限りは,大手術であれ小手術であれ,進歩をし続けることが予測される.患者のために最善を尽くさなければならないという使命を負った我々医師は,たとえ小手術であっても,その最新の知識を得て実践し,さらに次世代に向けてその技術や知識を進化させる役割がある.
私の浅い経験からだが,日帰り手術の麻酔とは「リズムよく踊ること」と捉えている.かつて,アメリカの小児病院にいたころ,小手術担当日は20件/日ほどの日帰り手術の麻酔をかけた.患者や家族を含む全ての医療従事者がリズムに乗ってそれぞれの務めを果たさないと,日帰り手術センターはまわらなかった.この成書から,麻酔科医の醸し出す小気味よいリズムと果たすべき務めを感じ取っていただければ幸いである.
最後に,本書の執筆および編集をしていただいた先生方,中外医学社の担当者の方々,そして構想からはや数年,本書の実現に絶大な努力とたゆまぬ根気をはらっていただいた 茂木康一 先生に感謝の辞を記したい.
2017年4月 手術室を臨む麻酔科記録室にて
大嶽 浩司
目次
第1章 日帰り手術とは,そのメリット
A 日帰り手術とは
B 日帰り手術のメリット
C 具体的な日帰り手術(短期滞在手術のスケジュール)(症例1例)
1.手術前日まで
2.手術当日
3.手術翌日
第2章 日帰り手術の選択
A 適応術式
1.日帰り手術の適応手術
2.日帰り手術の適応にならない手術
B 患者特性
1.心理的・社会的状況
2.米国麻酔科学会術前全身状態分類(ASA-PS)
3.年齢
4.基礎疾患
C 術前検査および評価
1.患者評価
2.術前検査
3.術当日
D 日帰り手術の麻酔における絶飲食に関して
1.日帰り手術の麻酔において,術前絶飲食の基準を設定する目的
2.術前絶飲食に関するガイドライン
3.安全,快適,効果的な術前補水の提案
4.日帰り麻酔における術前飲食管理の実際
5.現状の問題点と課題
第3章 麻酔方法
A 全身麻酔,局所/区域麻酔,MAC
1.全身麻酔
2.局所/区域麻酔
3.MAC(monitored anesthesia care)
B 静脈麻酔薬
1.プロポフォール
2.チオペンタール
3.ミダゾラム
4.ケタミン
5.オピオイド
6.レミフェンタニル
7.フェンタニル
8.モルヒネ
C 吸入麻酔薬
1.歴史
2.作用
3.薬物動態
4.分布
5.代謝
6.排泄
7.副作用
8.薬剤の特長
D 筋弛緩薬
1.筋収縮
2.筋弛緩薬の作用
3.非脱分極性筋弛緩作用の拮抗
E 気道確保
1.気道の評価
2.手技
3.気管挿管
4.ラリンジアルマスク(LMA)
5.外科的気道確保
F 脊髄くも膜下麻酔
1.解剖
2.適応と禁忌
3.手技
4.薬剤
5.合併症
G 局所麻酔薬
1.作用機序
2.薬物動態
3.副作用
H 末梢神経ブロック
1.超音波ガイド下神経ブロックの基礎
2.上肢の神経ブロック
3.下肢の神経ブロック
4.体幹の神経ブロック
I 周術期合併症,危険性
1.死亡率と重篤な合併症
2.一般的な合併症
3.麻酔薬・脊椎くも膜下麻酔
第4章 覚醒および帰宅準備
A 麻酔からの覚醒
1.麻酔からの覚醒のために確認しておくこと
2.全身麻酔から覚醒に影響する因子
3.気道確保に使用していた器具の抜去
B 術後悪心・嘔吐対策
1.PONVのメカニズム
2.成人のPONVのリスク因子
3.小児のPONVのリスク因子
4.PONVの予防方法
5.PONVの予防・治療に用いる薬剤
6.非薬物療法による予防
C 術後鎮痛
1.日帰り手術の術後鎮痛の目標と基本的な考え方
2.術前の説明
3.鎮痛薬の種類と位置づけ
4.術後鎮痛での経口鎮痛薬の活用
5.術後鎮痛の実際
6.局所麻酔で行われた手術の術後鎮痛
7.日帰り手術における術後鎮痛の注意点
第5章 帰宅後の対応
1.注意点,術後合併症,再受診の理由,minor complication,follow up
第6章 小児の日帰り手術
1.小児日帰り手術の特徴,対象(肉体的,疾患別,家庭・社会的)
2.術前,術中,術後,帰宅について
第7章 日帰り手術の看護ケアとその特徴
1.手術前日の看護
2.手術当日から退院までの看護
第8章 日帰り手術の費用
1.日帰り手術の診療報酬
2.公的医療保険と自治体による医療費助成
3.民間医療保険
4.日本における日帰り手術の普及
第9章 各種疾患における,日帰り手術の実際
A 鼠径ヘルニア
1.麻酔法
2.術中術後の鎮痛
3.PONV対策
4.注意すべき点
B 外来眼科手術
1.対象疾患
2.麻酔法
3.斜視手術
4.眼瞼手術
5.注意すべき点
C 整形外科手術
1.本邦における整形外科手術の日帰り手術の現状
2.日帰り手術の対象症例
3.整形外科日帰り手術の麻酔法
4.上肢の日帰り手術に用いられる麻酔法
5.下肢の手術
6.実際の麻酔法の選択について
7.術後鎮痛について
D 耳鼻科手術
1.対象疾患
2.麻酔法
3.口蓋扁桃摘出術・アデノイド摘出術の麻酔管理
E 下肢静脈瘤手術
1.下肢静脈瘤の主な日帰り手術法とそれに対する麻酔法
第10章 保険制度,医療行政との関わり
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書籍情報
- ISBN:9784498055308
- ページ数:240頁
- 書籍発行日:2017年6月
- 電子版発売日:2017年9月29日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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