ブラッシュアップ敗血症

  • ページ数 : 216頁
  • 書籍発行日 : 2019年9月
  • 電子版発売日 : 2019年9月24日
¥3,520(税込)
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商品情報

内容

敗血症について1冊で広く概観できる待望の書がついに登場!

敗血症について1冊で広く深く概観できる待望の書がついに登場! 救急・集中治療における最重要疾患の1つであるにもかかわらず,敗血症はその定義にすら,いまだ流動的な側面を残し,治療・管理においても不分明な点が多い.そのテーマに気鋭の救急救命医が挑んだ.ハーバード大学で敗血症をはじめとする救急臨床・研究に研鑽を積んだ著者がおくる,類いまれなる1冊.敗血症と闘うすべての医療者のために.

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序文

"救急医になりたい!"と思って医学生を過ごしていたが,当時の日本は救急科が診療スタイルや学問体系として確立しているとは言えなかった.そのため上級医の先生から救急をやりたければ最初は外科に行ったほうがよいとアドバイスされ,沖縄県立中部病院の外科の門を叩いた.幸いなことに沖縄県立中部病院では多くの優秀な同僚や仲間に恵まれて,日々切磋琢磨して自身の腕を磨いた.

Common disease を広く勉強し外科系の一般的な診療ができるようになったので充実感はあったものの,当時は頭で考えるよりも身体で覚えようという安易な考えがあったため,次第に自身のアカデミックな意識が薄れていった.これではいけないと思い,後期研修では聖路加国際病院に勤務することにした.豊富な症例と体系だった教育スタイルが魅力的で,救急外来,ICU,病棟に毎日通い詰めた.そこで色々な"敗血症"に遭遇した.敗血症の集中治療をやり始めたのだが,担当医によってとっている治療方針は千差万別であった."敗血症治療には正解がないんだよ"というセリフをしばしば耳にし,正解がないというのはエビデンスに乏しいということであり,治療が個人の考えに大きく左右されているという状況を知った.そのことは自分の興味をさらに深めるとともに強い探求心が芽生え,より研究ができる大学病院に行くことに決めた.

出身の琉球大学に戻り臨床と研究に没頭し,さらにトップを目指すために米国マサチューセッツ州にあるBeth Israel Deaconess Medical Center, HarvardMedical Schoolの外科学講座,Acute Care Surgery部門に籍を置き日々敗血症の学識を頭のなかに詰め込む毎日であった.米国の生活は"崖っぷち"でのチャンレジの連続であり充実感に満ちた心地よい疲労感に浸れたが,気がついてみると私も医学部卒業後11 年が経過していた.

今まで得た知識や経験を日本に還元できなければやっている意味がないと思い,日本に戻り順天堂大学大学院救急・災害医学の准教授となることに決めた.当時は縁のなかった大学であったためこの決断は医師キャリアで一番苦悩したが,いざ勤務してみると順天堂大学は三無主義(出身校,国籍,性による差別なく優秀な人材を求め活躍の機会を与える)を掲げており,とても風通しがよく,雰囲気の素晴らしい大学であった.また順天堂の救急災害医学は本院,浦安,練馬,静岡の4 病院を併せたスタッフからなる大所帯の診療科であり,首都圏内の救命救急センターということも相まって,力を発揮するには十分な環境であると思われた.赴任後は敗血症患者の予後向上のため,Acute Care Surgery チームの整備,研究グループの立ち上げ,ECMO チームの始動などに務めた.現在もなお新しい挑戦をしている最中であり,筆者は救急医として働いている間は挑戦することを止めない.

教科書的なことはもちろんであるが,筆者が今までに独自に学んだことや敗血症に対する考え方を含めて,この本で読者の皆様に紹介したい.また本書を通じて,"敗血症には正解がない"というのが真実なのかどうか皆様と一緒に議論できたらこの上ない幸せである.


2019年7月

順天堂大学大学院医学研究科 救急・災害医学研究室 准教授
近藤 豊

目次

CHAPTER 1 敗血症とは何なのか?

敗血症とは? 歴史から考える

敗血症とは? メカニズムから考える

敗血症治療とは?

敗血症とは? 簡単にまとめると

COLUMN 風邪も敗血症?

CHAPTER 2 メカニズム

敗血症に関わるDAMPsとPAMPs

SIRSとCARS

メカニズムの解明に関する未来像

CHAPTER 3 敗血症の定義

敗血症の定義の変遷

qSOFAはICUで使用可能でしょうか?

病院前診療でのqSOFA

敵か,味方か,qSOFA! qSOFAの限界と可能性とは?

COLUMN qSOFAは肺炎に有効か?

CHAPTER 4 疫学・予後・認知度

敗血症の現況を知る

敗血症は肺の病気? 世間で知られていない敗血症

敗血症の公衆衛生的課題

COLUMN 世界敗血症連盟とは?

CHAPTER 5 診療ガイドラインの比較からみる諸外国の敗血症事情

Dr近藤の視点からみたSSCG 2016(米国と欧州合同の敗血症診療ガイドライン)

Dr近藤の視点からみたJ--SSCG 2016(日本版敗血症診療ガイドライン)

その他の敗血症ガイドライン

CHAPTER 6 敗血症とメタ解析

システマティックレビューとは?

実際にSRやメタ解析をやってみよう

敗血症とメタ解析の実例

COLUMN 重症患者における28日死亡と90日死亡の意義

CHAPTER 7 診断・重症度マーカー

CRP(C反応性タンパク)

プロカルシトニン(PCT:Procalcitonin)

プレセプシン(P--SEP:Presepsin)

インターロイキン6(IL--6)

COLUMN CRPで敗血症を診断していませんか?

CHAPTER 8 敗血症の身体所見

呼吸を評価しましょう

身体所見だけで血圧を推定する

肺の異常が推定できる身体所見とは?

肺雑音では雑音の聴こえる時期を意識する

COLUMN 敗血症の動脈圧波形

CHAPTER 9 敗血症の問診・カルテの書き方

敗血症の問診・カルテ記載で重要なポイント

敗血症における家族への問診の重要性

敗血症のカルテは"by system"で

COLUMN 妊娠と尿路感染性敗血症

CHAPTER 10 外傷後敗血症

外傷後敗血症とtwo--hit

体幹部の外傷後敗血症の予後は悪い

頭部外傷後の敗血症は?

外傷の疫学からみた敗血症

外傷後敗血症の未来

CHAPTER 11 熱傷後敗血症

熱傷の初期は敗血症にならない?

熱傷と水道水

熱傷後敗血症と栄養管理

熱傷後敗血症はなぜ治療が難しいのか?

敗血症管理を意識した熱傷のエキスパート的治療法

COLUMN 本当に熱傷の急性期には敗血症にならない?

CHAPTER 12 軟部組織感染による敗血症

軟部組織感染から敗血症に移行しやすい?

人食いバクテリアとは?

壊死性筋膜炎による敗血症

壊死性筋膜炎診断のTIPS;身体所見,finger test,そしてLRINECスコア

Fournier症候群

COLUMN Waterhouse--Friderichsen症候群を知っていますか?

CHAPTER 13 敗血症関連心停止

敗血症関連心停止の発症メカニズム

敗血症性心筋症とは?

敗血症関連心停止の治療

敗血症関連心停止の心拍再開後の治療

COLUMN 敗血症における体温

CHAPTER 14 敗血症関連脳症

敗血症関連脳症の病態

どのように診断するのか?

その治療法は?

その予後は?

敗血症関連脳症のトピックス

CHAPTER 15 モニター

モニターの特徴と弱点

血管内ボリュームの評価

目標血圧

CHAPTER 16 輸液

フルイドチャレンジは敗血症に有効か?

輸液をして血圧が上がればショック?

敗血症に適した輸液の量と種類は?

CHAPTER 17 抗菌薬治療

経験的抗菌薬投与

デエスカレーションが可能な状態を見極める

培養陰性の時にデエスカレーションは可能か?

病院前抗菌薬投与

細菌培養検査のピットフォール

COLUMN 抗菌薬投与で敗血症性ショックになる,ヤーリッシュ・へルクスハイマー反応を知っていますか?

CHAPTER 18 抗ウイルス薬治療

ウイルスによる敗血症の特徴

どのウイルスが敗血症を引き起こすのか?

各ウイルスの特徴と抗ウイルス薬

ウイルスが原因の敗血症の予後

CHAPTER 19 抗真菌薬治療

真菌による敗血症の診断

真菌の種類

侵襲性カンジダ血症

侵襲性アスペルギルス症

抗真菌薬による治療

CHAPTER 20 ドレナージ治療

膿瘍形成とドレナージ

感染性膵壊死とドレナージ

肝膿瘍とドレナージ

婦人科疾患のドレナージ

外科的ドレナージとカテーテルを用いた経皮的ドレナージ

COLUMN 不明熱と敗血症

CHAPTER 21 循環作動薬

循環作動薬の使い方

バソプレシンは使用すべきか?

腎保護目的の低用量ドパミン投与は有効か?

循環作動薬の最近のトピックス

COLUMN 敗血症で初発の心房細動の意義

CHAPTER 22 ECMO

ECMOの種類

敗血症性ショックに対するVA--ECMOの歴史

ガイドラインでの推奨

敗血症に対するECMOの適応基準

ECMOの禁忌

"これは敗血症性ショックに対するECMOでしょう!"

CHAPTER 23 敗血症性ARDSと人工呼吸管理

敗血症性ARDS

好中球エラスターゼ阻害薬

人工呼吸管理

ドライビングプレッシャー

敗血症性ARDSと気胸

CHAPTER 24 鎮痛と鎮静

鎮痛と鎮静の目的

最適な鎮静とは?

最適な鎮痛とは?

敗血症に合併するせん妄のマネジメント

新しいPADISガイドライン

CHAPTER 25 腎代替療法

RRTが敗血症にどう影響するのか?

RRTは早めにやるべきか?

High flow CHDFは有効か?

RRTは何を改善するのか?

Renal indicationにおけるRRTの日本の未来

CHAPTER 26 造影剤腎症と敗血症性腎障害

敗血症における造影CTの意義

造影CTの危険性

造影剤腎症にならないためには?

実はほとんどの敗血症は単純CTで十分?

薬物による造影剤腎症の防止は可能か?

CHAPTER 27 サイトカイン・エンドトキシン吸着

そもそもサイトカイン・エンドトキシンは吸着したほうがよいのか?

結局,PMX‒DHPは有効なのか?

セプザイリスって何?

エンドトキシン・サイトカイン吸着療法の未来

COLUMN ウロセプシス!

CHAPTER 28 輸血

赤血球と敗血症

凝固因子と敗血症

血小板と敗血症

CHAPTER 29 栄養

栄養が敗血症に及ぼす影響

敗血症患者には栄養が必要か?Permissive underfeedingを理解しよう

栄養はいつ,どこから投与するの?

栄養療法は予後を変えるか?

敗血症と栄養のトピックス

CHAPTER 30 血糖コントロール

敗血症と血糖

なぜ血糖を調節する必要があるのか?

至適血糖値はどのくらいか?

どのような方法で血糖をコントロールするか?

敗血症に人工膵臓を用いるか?

CHAPTER 31 敗血症と補体

補体経路と敗血症病態における変化

敗血症における補体活性化によるDICの発症

敗血症性DICと血栓性微小血管症

補体制御による新規治療薬の可能性

CHAPTER 32 敗血症性DIC

敗血症性DICの病態

敗血症性DICの診断

敗血症性DIC治療の変遷

ヘパリン類投与

リコンビナント・トロンボモジュリン補充療法

アンチトロンビン補充療法

敗血症性DICの未来

COLUMN 重症患者と成長ホルモン

CHAPTER 33 ステロイド補充療法

なぜ敗血症にステロイドなのか?

ステロイド補充は有効か? 無効か?

ステロイド投与による副作用

実際にステロイドを投与するか?

CHAPTER 34 高気圧酸素療法

高気圧酸素療法とは?

敗血症に高気圧酸素療法は有効か?

敗血症に高気圧酸素療法を行う場合,その設定はどうする?

高気圧酸素療法の安全性を意識しながら

CHAPTER 35 深部静脈血栓症予防

DVT発生のメカニズム

敗血症はDVTができやすいのか?

D--DimerでDVTを早期発見する?

敗血症にDVT予防は必要か?

DVT予防のためにすべきこと

COLUMN DVTの身体所見と超音波検査

CHAPTER 36 上部消化管潰瘍の予防

敗血症と潰瘍形成のリスク

抗潰瘍薬投与による敗血症患者への影響

抗潰瘍薬投与は敗血症患者に必要なのか?

抗潰瘍薬の種類による違い(PPI vs H2受容体拮抗薬)

COLUMN アカデミックキャリアの築き方

CHAPTER 37 社会復帰と再発

敗血症とPICS

敗血症とICU--AW

社会復帰に向けた取り組み

社会復帰後の敗血症の再発率

敗血症生存者のがんリスク

COLUMN 敗血症で認知機能障害は悪化する?

CHAPTER 38 小児敗血症

小児敗血症は何が難しい?

小児敗血症の定義はSepsis--3を使用すべき?

小児敗血症の1時間バンドル

小児敗血症のカテコラミンは何を使用すべき?

小児の敗血症は呼吸の評価が重要

COLUMN 小児敗血症の初期治療って誰がやるの?

CHAPTER 39 人工知能と敗血症治療

AIって何?

AIと敗血症

敗血症治療戦略においてAIドクターは人間を上回るか?

AIが人間を俯瞰する

COLUMN エンターテイメント エデュケーションと敗血症教育

CHAPTER 40 敗血症バンドル治療の変遷

EGDTとは?

EGDTからELGTヘ

敗血症とHour--1 bundle(1時間バンドル)

CHAPTER 41 医学英語論文の書き方

医学論文を書く前に準備すべきこと,大事なこと

論文のどこから手をつければいいの?

敗血症の臨床論文作成の特徴と注意点

COLUMN ナッジ理論を用いた臨床研究

CHAPTER 42 これからの敗血症の行く先

COLUMN 海外留学で世界と競う力をつける


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  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

  • ISBN:9784498166141
  • ページ数:216頁
  • 書籍発行日:2019年9月
  • 電子版発売日:2019年9月24日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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特記事項

※今日リンク、YNリンク、南山リンクについて、AndroidOSは今後一部製品から順次対応予定です。製品毎の対応/非対応は上の「便利機能」のアイコンをご確認下さいませ。


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