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- 藤野 元子
- その症状は"風邪"?―主訴から鑑別する・治療する
商品情報
内容
問診だけでなく、視診・触診による性格な所見をとり、そのなかで、その症状は“風邪”としていいものなのか、あるいはそうではなく別の疾患かということがわかりやすく、巻頭には本文と連動した診療フローチャートも掲載。
のどや鼻を見る際に気を付けること、日常診療に役立つポイントについても記載しています。
序文
はじめに
卒業して3年間の市中病院での研修医時代,その後4 年間の大学病院と20 年間の市中病院を経て現在に至りますが,"風邪"という疾患についてきっちりと勉強した記憶がありません.
また大学病院では,風邪の患者さんを診察した記憶がほとんどありません.やはり"風邪"くらいで大学病院を受診しようという人は少ないせいだと思います.市中病院では,地域の先生方との連携もあり,また地域医療にも貢献していたことから,結構,風邪患者さんを診察しました.ですが診察時間が午前中だったり,午後の診察もそれほど遅い時間までやっていなかったということもあると思いますが,開業して以後に診察しているような" 風邪" 患者さんは診ていなかったような気がします.
というのも,開業して地域に溶け込んできたかなと思った頃から,病院時代とは違った主訴で風邪の患者さんが来院されることに戸惑った経験があります.
「今朝からのどが痛くなって....風邪にならないように用心で来ました.」
「さっきから鼻水が出てきたんです.このままだと,いつも風邪になるので,早めに来ました.」
「4~5日前から風邪っぽく,治ると思って様子をみていたんですが,明日から旅行に行くのでこれ以上悪くならないように薬をもらいに来ました.」
などが主訴です.ホームドクターとして認められたと思い,喜ぶべきだと思いますが,多少困ってしまいます.
病院時代には,発症した当日に受診した患者さんを診察した記憶がありませんし,確実な症状がない段階で風邪患者さんを診るという経験がありません.言葉を変えると,同じ疾患を時間軸がずれた状態で診ているのではないかと思います.当然後から診察するほうが,いろいろな情報があり診断しやすいことはいうまでもありません.とはいえ早い段階で来院する患者さんに,確実な診断をし,納得のうえで治療を受けてもらいたいと思います.
この本を書くことになってから,いままでより風邪患者さんの訴えや経過をよく診るようになってきましたが,臨床をして30年たった今でも新しい経験を積むことがあります.咽頭痛の原因疾患はさまざまですが,咽頭痛のある患者さんを診察していても人によってその痛みの表現の仕方が異なります.また正確に所見をとることによって的確な治療ができます.問診だけでなく,視診・触診による正確な所見をとることが大事であることはいうまでもありませんが,そのなかで,その症状は"風邪"としていいものなのか,あるいはそうではなく別の疾患かということがわかりやすい,より日常診療に役立つ本を目指しました.
本書を書くのにあたり私一人では荷が重いので,幾人かの先生に手伝っていただきました.
鼻疾患については,大手前病院耳鼻咽喉科部長である川島佳代子先生にお願いしました.アレルギー性鼻炎の研究をはじめとして鼻疾患の研究をされており,大学病院のアレルギー外来も担当されています.
最近,咳症状で耳鼻咽喉科を受診される患者さんも増えているように感じますが,やはり咳の原因の多くは下気道にあると考えられますので,咳の疾患に関しては,呼吸器内科の山本佑樹先生にお願いしました.先生は現在京都大学で肺のiPS細胞の研究もされている若手の臨床医です.
また,風邪といえば幼小児に罹患率が高い疾患です.そこで小児の風邪の診かたや特徴があれば参考になるのではないかと考え,東京都済生会中央病院小児科の藤野元子先生に執筆してもらいました.先生は臨床だけでなく小児ワクチン研究の第一人者として活躍されています.
ここ数年前から漢方薬の効果がいろいろな方面から見直されるようになってきていますが,患者さんによっては風邪疾患で漢方薬を内服されている方や漢方薬を希望される方も多くなってきました.私が以前勤務していた北里研究所病院時代からの知り合いである漢方専門医の米田吉位先生,石井恵美先生に本書の漢方処方についてお願いしました.両先生ともに内科専門医です.北里研究所病院東洋医学研究所を退職された後,現在は開業され,お二人とも在宅医療など地域医療に積極的に貢献されています.
いずれの先生方も臨床経験豊富で,わかりやすい内容をご執筆いただきました.
本書では風邪および風邪疾患に関連する疾患について記載していますが,のどや鼻を診る際に気を付けていること,日常診療に役立つポイントについても記載しました.
最後に,本書の企画から編集まで行っていただいた中山書店企画室 桜井均さん,編集部 仲井麻理子さんに深謝いたします.
2016年1月
橋口一弘
目次
第1章 風邪診療の基本ルール
風邪診療の基本ルール (橋口一弘)
風邪または風邪症候群とは
風邪を診察する際に知っておくと役に立つルール
のどの痛みを訴えてきたら
鼻症状を訴えてきたら
咳症状を訴えてきたら
発症(症状に気づいてから)から受診までの日数による対応-症状緩和のための内服薬の有無も含めて
漢方を使おう 発症から受診までの日数による対応 (石井恵美,米田吉位)
漢方の副作用 (石井恵美,米田吉位)
第2章 その"風邪"の正体は?
1 のど(咽頭)の症状が主訴 (橋口一弘)
上咽頭炎
急性咽頭炎
咽頭炎のガイドラインいろいろ
急性扁桃炎
慢性扁桃炎
急性扁桃周囲炎
咽頭口内炎・外傷・熱傷
扁桃周囲膿瘍
急性喉頭蓋炎
咽後膿瘍
付録 Lemierre 症候群(含む 内頸静脈血栓症)
番外咽頭炎
クラミジア咽頭炎および淋菌咽頭炎
咽頭梅毒・扁桃梅毒
番外の番外 虚血性心疾患
漢方を使おう 咽頭:痛みの程度,喀痰の性状 (石井恵美,米田吉位)
2 鼻の症状が主訴 (川島佳代子)
急性鼻炎
急性副鼻腔炎,急性鼻・副鼻腔炎
急性副鼻腔炎のガイドライン (橋口一弘)
アレルギー性鼻炎
嗅覚障害
好酸球性副鼻腔炎
副鼻腔真菌症
漢方を使おう 鼻:時間的経過で変化,慢性化,くしゃみと合併,鼻の中が痛い,熱いなどの自覚症状 (石井恵美,米田吉位)
3 耳の症状が主訴 (橋口一弘)
小児急性中耳炎
成人急性中耳炎
4 喉頭の症状が主訴 (橋口一弘)
急性声帯炎
漢方を使おう 喉頭:感染後に痛みと声が出ない,しわがれ声 (石井恵美,米田吉位)
5 咳症状が主訴 (山本佑樹)
急性咳嗽
ウイルス感染症による急性上気道炎に伴う咳
急性気管・気管支炎
感染後咳嗽(postinfectious cough)
肺炎
遷延性咳嗽または慢性咳嗽
漢方を使おう 咳:喘鳴,熱の有無,症状のでかた,一日中か,昼間に悪化,場所で悪化,夜間に悪化,慢性的な咳嗽 (石井恵美,米田吉位)
付 発熱症状が主訴
漢方を使おう 発熱:高熱,微熱,初期か5 日目くらいか,再燃か (石井恵美,米田吉位)
第3章 小児の"風邪"の正体は?
1 自ら症状を語れない小児をどう診るか (藤野元子)
小児の特徴を知ろう
まずはトリアージをする
親からの情報をいかに引き出すか
呼吸数,脈拍,血圧は年齢によって正常値が変わる
2 乳幼児期によくある"風邪"
鼻汁先行型
咳先行型
発熱先行型
嘔吐先行型
3 学童期によくある"風邪"
鼻汁先行型
咳先行型
発熱先行型
嘔吐先行型
4 小児期の"風邪"とワクチン接種の意義
Hibワクチン
小児用肺炎球菌ワクチン
4 種混合ワクチン(DPT . IPV)もしくは3 種混合ワクチン(DPT)
インフルエンザワクチン
MRワクチン
ムンプスワクチン
ロタワクチン
漢方を使おう 小児の"風邪"への漢方対応 (石井恵美,米田吉位)
抗菌薬投与とアレルギー性疾患 (橋口一弘)
付録 風邪を予防する
風邪を予防する (橋口一弘)
まずは食生活から
日常生活での風邪予防
うがい・手洗い・マスクの効果
未病 風邪をひきやすい患者への東洋医学的指導,養生法 (石井恵美,米田吉位)
column
"風邪"の語源
体が冷えると風邪をひく?
扁桃の診かた
風邪症候群に対する抗菌薬処方に関する考察
風邪の治療法:温熱療法
風邪の治療法:温かい飲み物
プラセボ/ プラセボ効果(placebo/placebo effect)
後医は名医?
風邪を引き起こす代表的なウイルス① ライノウイルス
ルゴール塗布は効果があるか?
抗菌薬の必要な咽頭炎:クラミドフィラ・ニューモニエ感染
抗菌薬を処方するタイミング① 初診当日ではなく後日処方する
扁桃
A 群β溶連菌感染後の疾患
抗菌薬を処方するタイミング② 初診当日ではなく後日処方する
扁桃膿栓
咽頭うがい液の採取方法
風邪を引き起こす代表的なウイルス② コロナウイルス
鼻粘膜の生理作用について
風邪の鼻汁に対する処方:抗ヒスタミン薬の効果について
鼻閉の治し方
鼻風邪は鼻汁が黄色くなったら治るのか
nasal cycle について
ラピラン®肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔炎)
老人性鼻漏について
たくさん出る鼻汁:skier's nose
たくさん出る鼻汁:gustatory rhinorrhea(摂食性鼻漏)
風味障害
後鼻漏について
咳と血液検査
感染症における迅速診断法とPOCT(Point of Care Testing;臨床現場即時検査)
典型的な低血糖
肺炎入院のシーズン
保育園,幼稚園が始まった1 年間の"風邪"
罹患後の気道過敏
異常行動とタミフル®
決して侮れない突発性発疹
小児の咳には"はちみつ"を?
大人型の百日咳
インフルエンザウイルス検査
小児用肺炎球菌ワクチンと成人用肺炎球菌ワクチンの違い
海外のインフルエンザワクチンについて
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書籍情報
- ISBN:9784521743295
- ページ数:212頁
- 書籍発行日:2016年1月
- 電子版発売日:2016年10月28日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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