第3版を刊行するにあたって
国は法を定め,がん医療の推進・均てん化に努めており,2017 年には「第3 期がん対策基本計画」が策定された.その全体目標に「患者本位のがん医療の実現」が追加され,「分野別施策」の「がん医療の充実」として「がんの手術療法,放射線療法,薬物療法,免疫療法」「チーム医療」「支持療法」「小児がん,AYA 世代のがん,高齢者のがん」などが掲げられている.
放射線療法は,がん治療における治療効果はもとより,臓器の機能温存,患者のQOL の維持・向上,手術困難な患者に対する治療法などとして,「患者本位のがん医療の実現」のために今後ますます広く行われ,発展していくだろう.
このように,がん治療において放射線療法はますます重要な位置にあるが,放射線療法に関する用語は難解なものが多く,治療は放射線治療部内で行われるため,外来・病棟看護師にとっては馴染みにくいところがある.また,外来治療が増え,患者は毎日来院するものの10 分程度で帰ってしまうため,タイムリーなケアを行うことが難しい.さらに,放射線療法では「再現性」も重要である.同一体位の確保だけでなく,食事時間や排泄時間などを考慮して臓器の位置の再現性も確保する必要があり,患者が積極的に治療に参加してセルフケアをすることが治療効果・副作用にも影響する.そのため,看護師に求められる知識や技術は広がり,果たす役割もますます重要になった.
本書は2009 年に初版を刊行した.当時,看護の視点を大切にして看護師らが編集・執筆した放射線療法看護に関する書籍がほとんどなかったため,その内容が評価された.2013 年に改訂したものの,放射線治療装置や治療方法がさらに進化し,放射線療法看護も進歩してきたこと,放射線療法による長期生存者が増えて晩期有害事象の問題も表面化してきたことから,今回,第3 版を刊行し,最新の知見を追加した.また,6 章「照射部位・対象に応じたケア」ではケアマップ,放射線量(総線量)ごとに起こりうる有害事象と行われるべきアセスメント,看護ケア,セルフケア支援をさらに具体的に記述した.これにより,看護師は予測に基づいた先取りしたケアができるようになると確信している.さらに,治療部位ごとに,がんの状況(進行度)別の標準治療を記載して放射線療法の位置づけを明確にし,有害事象(共通用語規準ver5.0 日本語訳JCOG 版)を掲載して,高精度放射線治療法の解説や,子どもの発達段階に合わせた放射線療法ケア,放射線療法を受ける患者に特化した心理的なケアなどの内容を充実させた.
本書の特徴は,放射線療法ががんに効くメカニズムや,放射線の種類と特徴,治療計画や有害事象の考え方などについて,がん看護専門看護師が解説しているため,難解な内容を理解しやすいだけでなく,これらの知識を看護や患者・家族に対する説明に活用できることである.
また,がん看護専門看護師,がん放射線療法看護認定看護師,放射線治療専門医などが中心となって執筆にあたり,できるだけケアの内容を具体的に解説し,そのポイントと根拠を記載した.
本書は,どこから読み始めても理解できるが,ぜひ2 章「がん放射線療法の原理と実際」には目を通して,放射線療法の基本となる知識を理解することをお勧めする.
第3 版をケアに活かしていただき,患者・家族ケアの質の向上につながれば幸いである.
2019年7月
編集者を代表して 濱口恵子