不明熱を減らすための[外来発熱診療ガイド]

  • ページ数 : 256頁
  • 書籍発行日 : 2012年8月
  • 電子版発売日 : 2013年8月10日
3,960
(税込)
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商品情報

内容

発熱は、頻度の高い、そしてそれだけではとらえどころのない、非特異的な症候です。本書では一次医療機関の外来での発熱の診療について「発熱+特定の症候」ごとに各論としてとりあげます。

日夜、発熱患者を診療しながら、その診断の進め方や抗菌薬の使い方をブラッシュアップしたいと感じている医師、これから外来診療を始める若手の医師、またプライマリ・ケア医を目指す学生さんに、必ず役立つ発熱診療ガイドです。

序文

本書は、診療所や小規模病院など、一次医療機関の外来で発熱の患者を診療する医師のための参考書です。そうした診療の場面で実施可能な診断や治療の要点と、後方病院に紹介あるいは搬送する基準などを中心にまとめました。一次医療機関で日夜、発熱の患者を診療しながら、その診断の進め方や抗菌薬の使い方をブラッシュアップしたいと感じている医師、病棟診療が中心だった研修期間が終わって一次医療機関で外来診療を始める医師には、ぜひお読みいただきたいと思います。また、研修病院などでこれから感染症の診療に取り組もうという若手の医師、臨床実習でいろいろな診療現場に向かおうとしている医学生にも、入門書としておすすめします。

本書の主な特徴は二つです。

一つめは、一次医療機関の外来で可能な診療内容に限定して記述している点です。外来診療には入院診療と異なるさまざまな制約があります。特に一次医療機関では、特殊な検査や治療はほとんど不可能で、しかも、その場での迅速な判断が必要になる場面が多く生じます。本書では、ありふれた疾患や病態にすぎない大多数の症例の中から、重症例や緊急性のある症例を短時間で的確に見つけだすために役立つ情報や所見について、わかりやすく具体的に記述することを目指しました。

二つめは、「発熱+特定の症候」という区分を中心に編成した点です。発熱は、頻度の高い、そしてそれだけではとらえどころのない、非特異的な症候です。発熱の患者と聞いただけで、いくつもの鑑別診断が頭をよぎり、何から手を付けたものかと迷ったり、あるいはすぐに「風邪だろう」と考えてしまったりすることは、私も含めて多くの医師が経験していることでしょう。そこから診断を詰めていくには特異的な情報が必要ですが、「発熱+特定の症候」として症例をとらえなおすことで、ある程度範囲を絞って鑑別診断を挙げられるようになります。

このような考え方を、当たり前のことと思われるかもしれません。あるいは普段は意識していなかったものの、同様のことをやっていると気づく人もあるでしょう。診断を詰めていく、つまり臨床推論を進める中で、このように診断に役立つ枠組みと表現で情報をとらえなおす過程が注目されています。診断に用いることを意識して、類型化しやすいように抽象化し、かつ特異的な要素を拾い上げた情報は、臨床推論の研究領域ではsemanticqualier と呼ばれています。特徴的で見慣れた疾患であれば、すぐに診断を思いつくかもしれませんが、発熱のように幅広く診断を考えなければならない症候については、このように情報を加工して利用することが有効な場合が少なくありません。

たとえば、「いつも高血圧で通院していて血圧のコントロールは良好な75 歳の一人暮らしの女性が、二日前の朝から熱が出はじめて最高38.2℃になり市販の鎮痛解熱剤を飲んでみたが症状は変わらず、肩から腰にかけて痛くなり体を動かすのがつらくなってきたため、近所の人に連れられてかかりつけ医を受診した」場合であれば、「高齢の女性に比較的急に生じた高熱と背部痛」といった形に情報を整理すると、鑑別診断を挙げやすくなります。このあとの鑑別診断の挙げ方についてはここでは詳しくは述べませんが、通常は、頻度の高い疾患や緊急性が高い疾患、そしてすぐに治療できる疾患などから数個程度の鑑別診断リストをつくります。

「発熱+特定の症候」の区分で構成した各論(2章)に加えて、1章には、発熱の患者を診療する際の総論を入れました。ここには発熱の診療に共通する考え方や対処が書かれていますから、各論の前に目を通していただけると、発熱の患者に対する診療の全体像とそれぞれの各論の関係を把握しやすくなるでしょう。

後半には発熱の原因疾患で最も多い、感染症の診療に関する総論として、「感染症診療の原則(3章)」「外来で行う抗菌薬療法(4章)」「培養・検査について(5章)」が載っています。各論の中で感染症や抗菌薬、培養の話が頻繁に出てきますので、その共通点や背景にある考え方を整理して理解するのに役立つと思います。

この本は、東京医科大学病院の若手医師で、それぞれ総合診療科と感染制御部に所属している赤石君と中村君が企画して編集したものです。赤石君と中村君は文字どおり毎日、数多くの発熱の患者を診療しています。東京医科大学病院の総合診療科の外来には新患が連日50 ~ 70 人も受診しますが、発熱を主訴とする患者がとても多く、前医からの紹介で受診される例もかなりの数にのぼります。「後医は名医」といいますが、それを考慮しても、初期診療での情報収集や判断、そして抗菌薬の使い方に疑問を感じる例が繰り返しみられます。こうした環境と問題意識からこの本は企画されました。

感染症を扱う本は数多く出版されています。しかし、かなりの検査ができる比較的大きな病院での診療が前提になっているものが大半を占め、一次医療機関向けにつくられている本は多くありません。本書は一次医療機関での診療にすぐに役立つよう、そして感染症かどうかもわからない段階からの診療を想定して、感染症以外の疾患も含めた「発熱」という症候からまとめました。ユニークな構成であることも関係して、記述が不十分な箇所があるかもしれません。お気づきの点がございましたらご指摘いただけると助かります。

執筆していただいた先生方には、本書の企画をご理解いただき、それに沿う形で執筆してくださったことに、あらためて御礼申し上げます。

最後に、若い医師たちのこのような提案を受け止め、企画と編集の作業を辛抱強く進めてくださった、丸善出版株式会社の安井美樹子さんには、長期間にわたりいろいろとご負担をおかけしました。編者の二人とともに深謝申し上げます。


2012年 8月

大滝 純司

目次

1章  発熱診療 総論 成人の発熱に関する診療を中心に

2章 発熱診療 各論

1 発熱と頭痛

2 発熱と咽頭痛

3 発熱とリンパ節腫脹

4 発熱と呼吸器症状(咳嗽、呼吸困難)

5 発熱と下痢

6 発熱と泌尿器症状(排尿時痛、STD など)

7 発熱と皮疹

8 発熱と耳痛(副鼻腔炎含む)

9 発熱と関節痛

10 発熱と背部痛・腰痛

11 在宅診療、診療所での発熱診療

12 高齢者の発熱

13 小児の発熱

14 微熱

15 薬剤熱

16 膠原病を疑うとき

3章 感染症診療の原則

4章 外来で行う抗菌薬療法

5章 培養・検査について


索引

2章 発熱診療 各論 項目ページ一覧表

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書籍情報

  • ISBN:9784621085899
  • ページ数:256頁
  • 書籍発行日:2012年8月
  • 電子版発売日:2013年8月10日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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