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- ビジュアル薬剤師実務シリーズ 3.病院調剤と医薬品管理の基本
商品情報
内容
序文
監修の序
2006年に薬学教育6年制がスタートした.以前の薬学教育は,知識重視で,技能や態度教育はほとんど施されてこなかった.病院や薬局に就職した薬剤師は,自己学習や経験によって,足りなかった技能の部分と態度の部分を補ってきた.しかしこのような薬学教育が医療現場で活躍する薬剤師を求める社会のニーズに合わなくなったことから,臨床教育の充実が必要となり,学部の修業年限が6年となった.現在はモデルコアカリキュラムに従って教育が行われている.そして大学には,現場で経験を積んだ実務家教員が多く配属されることになった.しかし技能や態度の教育については,教科書や参考書がまだ少なく,実務家教員といえども大勢の薬学生を教えるのに苦慮している.
私が羊土社から本シリーズの発刊の話をいただいた時,いよいよ薬学も医学と同じような教育ができると確信した.それは羊土社から発行されている医師向けの『臨床研修イラストレイテッドシリーズ』を見た時,医師向けの臨床教育ではイラストを多用した書籍によって手技までもがわかりやすく解説されていたからである.それが大学だけでなく現場の医師に利用されていると聞き,このシリーズが実務中心であり,知識に偏らず細やかな手技にスポットを当てていることに注目した.近年,医学の飛躍的進歩と共に製剤技術や調剤機器も新しくなった.調剤手技もそれに合わせて進化したが,市販の解説書では旧来の調剤方法を踏襲するものでしかない.医師の臨床教育の世界で定評のある『臨床研修イラストレイテッドシリーズ』にならい,ビジュアルを重視し,実務のコツを解説した薬剤師向けの参考書を発刊できることは,この上もない喜びである.
本シリーズは1,2巻の「薬局編」と3,4巻の「病院編」からなる4冊構成であり,薬学生にとってはもちろん,病院や薬局で勤務する薬剤師にとって座右の書となることを希望する.6年制薬学教育では,実務実習前に共用試験が実施される.OSCEは知識ではなく技能と態度を評価するものであるが,本書はそのOSCEにも活用していただけるものと思う.本来ならば,OSCEに合格するためだけの参考書にした方が,薬学生諸君にはありがたいかもしれない.しかし,OSCEに合格するための手技と実際に現場で行われている手技では若干の違いがある.筆者はOSCEに充分活用できることと併せて,将来就職してからも役立つ参考書にしたいと考えた.薬学生や指導薬剤師のためにモデルコアカリキュラムの方略(LS)をリンクして示してある.さらに執筆者の多くは病院や保険薬局で実務をされている薬剤師であるため,手技を写真やイラストを多用してわかりやすく解説することだけでなく,それぞれの作業を行う上での心構えや倫理観についても考慮し,OSCEにありがちなロボットのような画一的な動きではなく,人間としての正しい動作を解説した.
将来薬剤師過剰時代を迎えることになるが,この"ビジュアル薬剤師実務シリーズ"がすべての薬剤師の質の向上に貢献することを願って止まない.最後に,執筆のお手伝いをいただいた阿部宏子先生,伊藤由紀先生をはじめとするすべての執筆者と羊土社の秋本佳子様に心より感謝する.
2008年 9月
上村 直樹
編集の序
病院薬剤師は,患者さんの薬物療法が適正かつ安全で効果的に行われるよう,さまざまな業務に携わっている.病院薬剤師の活動により,死亡率,薬剤費,医療費,入院日数,医療事故や医療過誤などを軽減できることが報告されている.病院薬剤師には,チーム医療の一員として臨床現場における医薬品の適正使用の推進および安全性を確保するリスクマネージャーの役割が期待されている.
薬学教育6年制への移行の必要性が出てきた背景には,医療技術の高度化,複雑化および専門化により,質の高い薬剤師の誕生を社会が望んだことがある.医療現場で活躍する薬剤師を育てる必要がある.医療現場で必要になる知識や技能・態度を身につけた薬剤師を育てるため,薬学教育6年制では長期実務実習が必須となり,実務実習を充実させる必要性がある.
本書は,ビジュアル薬剤師実務シリーズの「病院編」の「病院調剤と医薬品管理の基本」である.病院薬剤師の業務の理解やレベルアップにつながるものと確信している.目次の構成は,実務実習モデル・コアカリキュラムの病院実習方略に準拠しており,薬学生の実務実習に活用しやすいよう配慮した.各項目には対応するLS番号を記載し,実習に臨む学生も指導する側も実習内容や到達目標が一目でわかるようにした.
内容は,調剤,注射調剤,院内製剤,医薬品管理,医薬品情報など病院薬剤業務のコアとなる重要な部分について学生・初心者にもわかりやすく丁寧に解説した.病院薬剤業務を広く理解するため,モデル・コアカリキュラムにない内容であっても必要な内容を追加してわかりやすく記載した.病院薬剤師の役割を明確にするため,病院内における薬剤師の位置づけや薬剤師の職能が十分発揮できるPK/PDに基づく処方支援についても触れた.
実務は文章だけの説明ではイメージしにくいことがあるので,本書はイラストや写真を多用することで非常にわかりやすい内容になっている.実務ですぐに使える内容を心がけ,薬剤師業務に必須の知識や手技を基本からしっかり学べる充実した内容にした.知識の修得に加えて,技能および態度の修得も可能にした.
実務実習に望む薬学生のみならず,これから病院薬剤師として出発する新人薬剤師,薬局や病院で指導する立場にある薬剤師の方々,薬学生の教育に携わる薬学部教員の方々が参照するテキストになることを期待している.本書が薬学生のみなさん,指導薬剤師や薬学部教員など多くの方々の参考になれば幸いである.
2009年 1月
編者を代表して
伊藤 由紀
目次
第1章 病院の組織と薬剤師
1. 病院の機能と役割【阿部宏子/伊藤由紀】
1.第5次医療法における病院薬剤師の責任
2.医療機関の種類
3.病院の経営主体
4.外来診療の流れ
2. 病院薬剤師の役割【阿部宏子/伊藤由紀】
1.病院薬剤師の役割
* 薬剤師の業務
* 薬物療法の安全確保
* リスクマネジメント
* 薬学的ケア
* チーム医療
2.病院薬剤師の歴史的変遷
3.病院の組織
* 診療部
* 看護部
* 事務部
* 中央診療部
* 各種委員会
3. 病院薬局の構造と主な業務【阿部宏子/伊藤由紀】
1.病院薬局の構造
2.病院薬局の各部門
* 調剤業務
* 製剤業務
* 注射剤調剤
* 医薬品管理業務
* 医薬品情報管理業務
* 薬剤管理指導業務
* 治験管理業務
第2章 病院調剤の流れ
1. 入院患者に与薬されるまでの調剤の流れ【嶋田修治】
1.中央業務と病棟業務
2.病院薬剤師の現況
3.入院患者に与薬されるまでの調剤の流れ
* 医師による処方せんの作成
* 処方せんの受付
* 処方の鑑査・書記業務
* 薬剤の調製(計数調剤・計量調剤)
* 調剤薬・薬袋の鑑査
* 患者さんへの与薬
* 服薬指導
4.持参薬の管理
5.薬剤管理指導業務
2. 内用調剤(病院に特有な内用調剤)【嶋田修治】
1.内服薬と注射薬との薬物間相互作用
* 具体例
2.臨床検査値の処方鑑査への活用
* 腎機能に応じた投与法
* 医薬品適正使用に伴う添付文書の「警告」遵守性の確認
* therapeutic drug monitoring(TDM)の確認
3. 外用薬調剤の流れ【阿部宏子】
1.外用薬の種類
2.処方鑑査
3.ラベルの作成
4.計数調剤(取り揃え)
5.計量調剤(混合)
4. 注射剤調剤とは【杉浦宗敏】
1.注射剤の種類
2.注射剤と医療事故
3.注射剤調剤の定義
4.計数調剤と計量調剤
5. 注射剤調剤の流れと解説【杉浦宗敏】
1.処方せんの受付と処方鑑査
2.薬剤の取り揃え(計数調剤)
3.調剤薬の鑑査
4.薬剤の混合調製(計量調剤)
5.計量調剤後の鑑査
6.薬剤の払い出し(病棟への供給)
6. 注射剤処方せんの記載事項【杉浦宗敏】
1.注射剤処方せんの読み方
2.注射剤処方せんの形式および記載事項
3.薬 名
4.分 量
5.用法(投与方法,投与経路,投与回数,投与日時,投与速度)
* 投与方法
* 投与経路
* 投与回数
* 投与日時・投与速度
6.用量(投与総量)
7. 注射剤計数調剤と解説【杉浦宗敏】
1.処方せんの受付
2.処方鑑査
3.処方医への疑義照会
4.薬剤の取り揃え
5.輸液などの取り揃え
6.中間鑑査
7.最終鑑査
8. 高カロリー輸液の混合調製と解説【青山隆夫】
1.高カロリー輸液(中心静脈栄養輸液)とは
2.高カロリー輸液の構成成分と基本的な処方指針
* 糖質
* アミノ酸
* 電解質,ビタミン,微量元素
3.混合調製に使用する器具
* シリンジ(注射筒)
* 注射針
* 連結管
4.ブドウ糖とアミノ酸を一剤化した輸液
5.高カロリー輸液の混合調製の実際
* 無菌室への入室手順
* 無菌室入室後の準備
* 基本操作
* 混合パターン
* 作業後の片付け,清掃,消毒
* その他
6.鑑 査
9. 注射用抗がん剤の混合調製と解説【青山隆夫】
1.はじめに
2.抗がん剤の混合調製に伴う危険性
3.抗がん剤の混合調製環境
4.混合調製に使用する器具
5.注射用抗がん剤の混合調製の実際
* バイアルからの薬液採取
* アンプルからの薬液採取
* 携帯型ディスポーザブル注入ポンプへの充填
* PhaSealRSystem〔カルメル・ファルマ・ジャパン(株)〕の実際
* 安全キャビネットの管理
第3章 院内製剤
1. 院内製剤設備・機器【奥山 清】
1.製剤を実施する環境
2.クリーンな環境のための施設と手技
3.クリーンベンチと安全キャビネット
4.滅菌機・洗浄機
5.院内製剤に使用する器具と機械
2. 院内製剤の法的位置づけ【奥山 清】
1.院内製剤の定義と種類
2.院内製剤に関する責任の所在
3.院内製剤の依頼から調製までの手順
4.院内製剤について検討する会議と必要な書類
3. 院内製剤の調製【奥山 清】
1.院内製剤調製上の注意事項
2.乾性製剤①~フェノバルビタール10%希釈散の予製
3.乾性製剤②~健胃散(M.M.散)の予製・分包
4.乾性製剤③~0.5gカリメートRのカプセルへの充填
5.湿性製剤①~Lミメントール入りレスタミンR軟膏の予製
6.湿性製剤②~ボスミンR液の希釈
7.無菌製剤①~生食点眼液の分注
8.無菌製剤②~10%パテントブルー注射液アンプルの製剤
9.院内製剤に関する書籍と文献
10.使用頻度の高い院内製剤
4. 院内製剤の品質と製造・管理【奥山 清】
1.院内製剤の品質を保証するために必要なこと
2.機器の検査とメンテナンス
3.製剤記録と受払い台帳
4.細菌汚染防止
5.院内製剤の保管
6.品質試験
* 重量偏差試験
* 含量均一性試験
* 崩壊試験
* 含量試験
* 異物試験
第4章 医薬品管理
1. 医薬品管理【影山惠美子】
1.在庫管理と品質管理および安全管理
* 在庫管理
* 品質管理
* 安全管理
2.医薬品の流れ
3.発注・納品・入出庫・在庫管理
* 在庫管理のポイント
* 検収時の確認事項
4.SPDの導入(外注化)
5.手術室・ICU・その他における医薬品の供給管理
6.保 管
7.保 存
8.使用記録
9.医薬品廃棄に際しての留意事項
2. 法的管理が義務付けられている医薬品【影山惠美子】
1.法的管理が義務付けられている医薬品
2.麻薬の取り扱いについて
* 麻薬処方せんの記載事項
* 麻薬の返納・廃棄
* 麻薬に関する届け出
3.向精神薬の取り扱いについて
4.覚せい剤原料の取り扱いについて
5.毒薬・劇薬の取り扱いについて
6.特定生物由来製品について
7.その他特殊な管理を必要とする医薬品
第5章 医薬品情報(DI)
医薬品情報の収集と提供【若林 進】
1.医薬品情報の収集
* 個々の医薬品に関する情報
* 副作用などの情報源
2.医療関係者からのQ&A(受動的情報提供)
* 医薬品識別に関するQ&A
* 医薬品から病名を考えるQ&A
* 病名から医薬品を考えるQ&A
* 配合変化・安定性に関するQ&A
* 副作用・相互作用に関するQ&A
* 薬物中毒などに関するQ&A
* 院内製剤に関するQ&A
* 一般用医薬品に関するQ&A
* 医事,薬事に関するQ&A
* その他のQ&A
3.医療関係者への情報発信(能動的情報提供)
* 院内定期刊行物(院内報)による情報提供
* 院内医薬品集の作成
* 院内ホームページなどによる情報提供
* オーダリングシステム,電子カルテシステムを利用した情報提供
4.患者さんへの情報提供
* 製薬会社が作成する患者さん向け医薬品情報
* 施設内で作成する患者さん向け医薬品情報
* その他の患者さん向け医薬品情報
5.副作用報告制度
* 市販直後調査制度
* 医薬品安全性情報報告書
第6章 PK/PDに基づく処方支援
PK,PDの基本と活用法【竹内裕紀】
1.はじめに
2.薬物体内動態学(pharmacokinetics:PK)
* TDMが必要な薬物
* 特定薬剤治療管理料
* 薬剤部での血中濃度測定
* TDMに必要な基本式
3.薬物投与設計
* 患者個別の情報がない場合で,薬物体内動態が正常であると考えられる場合
* 患者さんの薬物体内動態に影響を与える検査値,病態,その他の情報がわかっている場合
* 血中濃度が1点測定されている場合
* 薬物血中濃度が2点以上測定されている場合
4.薬力学(pharmacodynamics:PD)
* ワルファリンの投与設計(用量調節)
* 抗菌薬の感受性に基づく投与設計
5.PK/PD解析
* 抗菌薬のPK/PD
6.これからのPK/PD
* 遺伝子診断によるPK/PDに基づく薬物療法の個別化
* ワルファリンの投与量調節の可能性
* イリノテカンの投与量調節の可能性
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書籍情報
- ISBN:9784758109222
- ページ数:218頁
- 書籍発行日:Invalid date
- 電子版発売日:2011年5月31日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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