脊椎インストゥルメンテーションが脊柱変形の分野を越えて，脊椎手術に一躍広範囲に使用されるようになり，その結果，学会でも脊椎インストゥルメンテーションの適応・手術手技に対する様々な是非が取り上げられるようになりました。

広く応用され初めてから15年以上経った今では，その有効性を考えた適切な適応が確立しつつあります。正しい適応のもとに，正しい手技で使用された脊椎インス卜ウルメンテーションの有用性の高さは周知のところです。

単一の手術法ですべての疾患を解決することはできません。同じ疾患でも病態は千差万別といえ，同じ手術名でも，種々の工夫と応用が必要です。脊椎インストゥルメンテーションを不要と考える医師も多数見うけられますが，その人々は，脊椎インストゥルメンテーションなしでは問題を解決できない，あるいはより良い結果を期待できない病態が厳然と存在することに対して目を閉ざしていると考えざるを得ません。保険医療において，将来的にはDRGによる「まるめ医療費」の方向に向かっているようですが，その基本的な時点では，以上の点を十分にくんだ医療費を決定していただきたいものです。脊椎疾患の治療では，現在のところ保存的，手術的の2大別で検討されているようですが，手術的をインストゥルメンテーション無しと有りに分けた3大別とし，検討されるべきでしょう。そうでない場合は，脊椎手術を，現在のレベルで、保っていくことはもはや不可能となるでしょう。

一方"適応決定""手術法選択""手術操作"が不適切に行われた場合には，従来法にはない，一層重篤な，取り返しのつかない合併症が発生する危険があることも事実です。現在の社会情勢の中でこそ，基本を重視し，地に足のついた勉強と修練が必要と考えます。合併症を防ぎ，より良い手術結果を得るには，まず正しい適応と手術手技であることは言うまでもありません。細かい手技やインプラントの種類は変わっても，脊椎手術において絶対変わらない基本的手技というものがあります。脈々と続く，基本的事項の伝承は非常に大切と考えます。また，インストゥルメンテーション手術の常識的知識と手技があります。との基本的部分をきちんと把握できるような内容の本ζ そ，今必要なのではないかと考えました。

本書は，脊椎インス卜ゥルメンテーションの特徴を最大限生かすために必要な基礎知識・基本手技を再確認できる内容とすること，脊椎インス卜ゥルメンテーション手術を正しい適応と正しい手技のもとで行うためのポイントを理解できる内容とすること，を基本方針としました。脊椎インス卜ゥルメンテーションの現在の位置づけを怖轍し，その特徴を生かした手術を行うため"手術適応決定のポイント" "手術手技のポイント"さらに"起こしやすい合併症や機能障害に対する予防法""起きてしまった場合の対処法"について，ご自身が多数の経験をもっ諸先生方に執筆をお願いし，解説していただきました。手術手技は，自分の信じる方法が万人に通じるわけではありません。しかし，術者自身が慣れた方法で一番良い成績がでているのであればその方法がベストと言えます。術者の自信と結果で裏付けられているのであれば，独断と偏見が強いほどむしろ価値があるとも考えられます。

本書が，脊椎インス卜ゥルメンテーションのさらなる進歩の一助となりますことが，編者一同の心からの願いでございます。

2002年4月

鈴木信正