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- 猪股 雅史
- 消化管がんに対する 腹腔鏡下手術のいろは
商品情報
内容
腹腔鏡下手術の入門書かつ技術認定制度資格試験に合格するための解説書。消化管がん(胃がん,大腸がん)に対する腹腔鏡下手術の操作を「動詞」から分類し、基本操作を解説。最初に最重要ポイントを「3つ」呈示し、その他にも要所要所にポイントを必ず3つ「い・ろ・は」で呈示している。また正しい手技、誤った手技を、カラーイラストで解説し、項目の最後にはチェックポイントを掲載。
序文
監修のことば
1990年,初めて腹腔鏡下胆嚢摘出術を行ったとき,外科領域の新しい時代の夜明けを感じた。以前は"Big Incision,Big Surgeon"と言われる時代であり,腹壁の創長や術後疼痛への外科医のこだわりは少ないものであった。しかしながら,腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた患者の術後経過をみたとき,"低侵襲手術"による術後患者の回復の早さと疼痛軽減に驚いた。そのような腹腔鏡下手術の恩恵を早期胃がんの患者にも供与できないかと,1991年に腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(LADG)を開発した。
早いもので,以来20年が経過した。この間,社会のニーズや外科医の研鑽,さらには新しい手術機器の開発のおかげで,腹腔鏡下手術は急速に普及した。この安全な普及のかじ取りをした学術団体は,言うまでもなく日本内視鏡外科学会(JSES)である。また,JSES関連研究会である腹腔鏡下胃切除術研究会や腹腔鏡下大腸切除研究会などの功績も大きい。
本書の著者である大分大学医学部地域医療学センター(外科)白石憲男教授や同大学消化器外科 猪股雅史准教授は,これらの研究会に最初から参加し,胃がんや大腸がんに対する腹腔鏡下手術の定型化に関与してきた。また,教室においても,日常診療の一環として,若い外科医に対して熱心に内視鏡外科手術の指導を行っている。その両氏が,内視鏡外科を志すものの役に立ちたいという気持ちから執筆した本書は,若き内視鏡外科医たちの知りたいという欲求に十分応えるものになっていると確信している。本書物が,これからの内視鏡外科を支える若き外科医の成長の一助となることを期待している。
患者本位の"低侵襲手術"を実践するためには,腹壁の創長のみならず,"組織の愛護"を心がけた腹腔内操作が求められる。内視鏡外科の拡大視野のもと,"組織の愛護"を心がけた基本操作の習得の重要性を,日頃から教室員に指導している。基本を大切にし,解剖学や組織学に裏打ちされた手技こそが,"組織の愛護"を実践するコツと考えているからである。本書を通じて,その"いろは"を少しでも感じていただければ,幸いである。
最後に,このような書物を出版していただいたメジカルビュー社編集部の宮澤進氏に心から感謝したい。
平成24年5月
北野 正剛
序
消化管がんに対する腹腔鏡下手術が始まって約20年が経過した。この間,新しい術式の開発・標準化・評価など,日本内視鏡外科学会(JSES)を中心に,さまざまな取り組みが行われてきた。なかでも,我が国独自の取り組みとして注目すべきものは,内視鏡外科技術認定制度である。
腹腔鏡下手術は,2Dモニター観察下の手術であり,トロッカーを支点とするテコの運動を基本とした鉗子操作,触覚のない操作など,従来の開腹手術に比べ,手技上の困難性が指摘されている。ラーニングカーブなどが議論されるのもその所以である。それゆえ,JSESの技術認定制度は,安全な内視鏡外科手術を実践し普及させるための指導者の養成を目的として設立された。
安全な手術操作の基本は,臨床解剖の熟知,組織の特性や手術機器の特性を生かした愛護的操作,である。しかしながら,技術認定制度の低い合格率をみると,残念ながら,このような基本操作をおろそかにしている外科医が多いのではないかと懸念している。
従来,外科教育における手術手技の習得は「手術を見せて,やらせて,そして指導させる」ことにより成されてきた。腹腔鏡下手術は,手術チーム全員がモニターに写し出される同一術野を見ながら操作を行うため,手術手技の教育効果も期待できる。そうしたなか,内視鏡外科の初学者たちが陥る過ちは,①手順ばかりに注目して内視鏡外科に特徴的な基本手技を習得していない,②誤操作のくりかえし,③解剖,組織,手術機器に対する特徴を手技に生かせていない,ということであろう。
本書では,内視鏡外科手術を志す外科医に,消化管がんに対する腹腔鏡下手術の安全な基本手術手技をより効果的に習得していただくことを目的とした。それゆえ,各章を「動詞」でまとめ,それぞれのポイントを3つずつに「いろは」としてまとめた。これらのポイントは,教室で多くの初学者を指導しつつ,感じるところをまとめたものであり,時には筆者たちの独断的な内容であるかもしれない。しかしながら,施設は異なっても,手技の基本は同じであり,学習には繰り返しが重要と考えている。多くの内視鏡外科医に目を通していただき,少しでも安全な手技の習得にお役に立てれば幸いである。
最後に,本書の出版に際し,ご指導いただいた大分大学長の北野正剛先生,ならびにすばらしい原稿構成をしていただいたメジカルビュー社編集部の宮澤進氏,大分大学消化器外科秘書の古田さやかさん, 佐藤未希さん, 宇津宮靖子さんに感謝いたします。
平成24年5月
白石 憲男
猪股 雅史
目次
Ⅰ.基本編
1.技術認定取得を目指して
2.術者の手を「動かす」
①左手(非優位側)の役割
②右手(優性側)の役割
③右手と左手の協調操作
3.場を「設定する」
①安全な気腹の作成法
②操作用トロッカーの位置決めのための基本
4.手術野を「観察する」
①手術野の良好な観察法の基本(斜視カメラの使用法)
②見えないところまで見る技
5.手術野を「形成する」
良好な手術野形成のための基本
6.手術器具を「使う」
①超音波凝固切開装置の特性を生かした使用法
②超音波凝固切開装置によるアプローチ:組織の取り扱い方
③血管シーリングシステムの特性を生かした使用法
7.組織を「切離する」
腹腔鏡下手術における組織切離の基本
8.組織を「剥離する」
腹腔鏡下手術における組織剥離の基本
9.血管を「処理する」
腹腔鏡下手術の血管処理の基本
10.臓器を「切離する」
リニアカッターを用いた胃や大腸の切離のコツ
11.出血を「止血する」
腹腔鏡下手術における止血法の基本
12.臓器を「つなぐ」
吻合部トラブルを起こさない吻合法のコツ
Ⅱ.実践編
腹腔鏡下幽門側胃切除術
1.手術手順
2.操作器具を「挿入する」
操作用トロッカーの位置決めとトロッカー留置法
3.手術野を「形成する」
①良好な手術野の作成法1(膜状構造物[大彎・小彎など])
②良好な手術野の作成法2(索状構造物[主要血管])
4.組織を「切離する」
大網・小網の切離法
5.組織を「剥離する」
①膵頭部前面の剥離法
②No.12aリンパ節郭清
③膵臓上縁のリンパ節(No.8a)郭清
④膵臓上縁のリンパ節(No.11p)郭清
6.血管を「処理する」
①胃主要血管の処理法(1.大彎:左胃大網動脈とNo.4dリンパ節郭清)
②胃主要血管の処理法(1.大彎:右胃大網動静脈と幽門下動脈)
③胃主要血管の処理法(2.小彎:右胃動脈)
④胃主要血管の処理法(2.小彎:左胃動脈)
7.出血を「止血する」
胃切除時の出血しやすい部位の処理
8.臓器を「つなぐ」
①胃部分切除後の再建のコツ
②胃全摘術後の再建のコツ
9.困った場面を「解決する」
胃切除術で困ったときの解決法
腹腔鏡下大腸切除術(S状結腸切除術/前方切除術)
1.手術手順を「確認する」
2.術前に「準備する」
十分な準備なくして成功なし
3.トロッカーを「挿入する」
4本のトロッカー操作のコツ
4.手術野を「形成する」
①小腸排除および子宮・腹膜反転部の腹壁固定
②内側アプローチ
③中枢側リンパ節郭清
④外側アプローチ
⑤骨盤内操作
5.組織を「剥離する」
①内側アプローチ
②中枢側リンパ節郭清
③外側アプローチ
④直腸剥離(TSME:tumor specific mesorectal excision)
6.血管を「処理する」
①下腸間膜動静脈(IMA/IMV)
②中直腸動静脈
7.組織を「切離する」
①S状結腸間膜
②直腸間膜
8.直腸を「切離吻合する」
①DST(double stapling technique)法
②反転法(prolapsing法)
③経肛門法
④機能的端々吻合法(FEE:function endo to endo)
9.器械吻合を「科学する」
器械吻合は器械と生体の調和
頻用される「技術認定試験合格への鉄則」一覧
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書籍情報
- ISBN:9784758311731
- ページ数:312頁
- 書籍発行日:2012年7月
- 電子版発売日:2013年11月8日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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