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- 猪俣 泰典
- 放射線医学 放射線腫瘍学
商品情報
内容
序文
放射線治療はより治療による侵襲が小さく,より治療後の生活を快適に過ごすことが可能となるばかりではなく,根治的にはもとより術前・術中・術後,症状の緩和などさまざまな目的に応じて行うことができる.そのために高齢化社会が加速しつつある現代において放射線治療が癌の治療に果たす役割はますます大きくなっている.欧米ではすでに癌患者の3人に2人は何らかの状況で放射線治療を受けている.しかし,わが国では4人に1人とまだまだ少ないのが現状である.その大きな理由は最新放射線治療の事情に対する患者・医師双方の認知度が低いことであろう.放射線腫瘍医の絶対数が少ないこともこれに拍車をかけている.
このような状況下で放射線医学シリーズのなかの1巻として新たに「放射線腫瘍学」を上梓することができたことは大きな喜びである.日進月歩の医学において放射線治療の領域もまたその例外ではない.特にこの10 年から20 年間における放射線治療装置・治療法の進歩は著しく,従来の放射線治療と比較すると次元の異なる革命的と言ってもよい変化が生じている.
放射線治療の領域は広範に及ぶ.部位別では文字通り頭のてっぺんから足の先までをカバーし,年齢では乳幼児から100 歳を超える超高齢者までが対象となる.治療装置は,ライナックはもとより,サイバーナイフ,ガンマナイフ,トモセラピー,粒子線治療装置,強度変調回転放射線治療(VMAT)装置,密封小線源治療装置など多彩である.治療法では体外から放射線を照射する外部照射では通常の照射法に加えて定位放射線照射や強度変調放射線治療(IMRT)などがあり,体内に線源を挿入して行う密封小線源治療では腔内照射や組織内照射が,さらにホウ素中性子捕捉療法など多岐に及んでいる.
本書はこの膨大な放射線治療の領域のエッセンスを簡潔・明瞭にまとめたものである.執筆は放射線治療に長年従事して十分な経験を有し,優れた見識をお持ちである気鋭の先生方にお願いした.本書を通読して頂ければ最新の放射線治療の動向が短時間で把握できるように編集している.医学生,研修医はもとより,放射線治療を専門とされていない上級の先生方にもご一読いただければ幸いである.ひとりでも多くの方が放射線治療の良さと面白さを理解し,さらには放射線腫瘍医を志して下さる方が現れれば編者としてこれにまさる喜びはない.
なお,本書のタイトルを「放射線腫瘍学」として「放射線治療学」としなかった理由は,放射線治療が単にどこそこにどのような方法で何Gy 照射して治療成績がどのくらいであるといったものではなく,腫瘍・放射線に対する生物学的・物理学的理解を基礎とし,治療対象患者の年齢,基礎疾患の有無,他治療との関係などを考慮して総合的に組み立てられるものであるとの考えからである.より深い理解のために本放射線医学シリーズ「放射線医学総論」のうち,放射線治療の基礎知識,放射線生物学,放射線物理学,放射線障害の項目を併せて通読していただきたい.
平成24年 3月
編集 猪俣 泰典
目次
1章 放射線治療装置と照射方法
1 放射線治療装置
2 照射方法
2章 放射線治療計画
1 放射線治療計画
2 標的体積
3 線量分布
4 品質管理/品質保証
3章 密封小線源治療
1 腔内照射
2 組織内照射
4章 定位放射線治療・強度変調放射線治療(IMRT)
1 定位放射線治療
2 強度変調放射線治療(IMRT)
5章 粒子線治療(陽子線,炭素線)
1 粒子線治療(particle radiotherapy)とは
2 粒子線治療の方法
3 粒子線治療の適応疾患と治療成績
4 粒子線治療の問題点と将来展望
6章 ホウ素中性子捕捉療法
1 BNCT の原理
2 いかにしてホウ素を癌細胞に集めるか
3 治療スケジュール
4 BNCT の利点
5 将来展望
7章 放射線治療における医療事故防止
1 わが国における放射線治療事故
2 誤照射事故に対する対策
8章 放射線治療の副作用と対策
1 副作用について知っておくべき基本的事項
2 急性期有害事象
3 晩期有害事象
9章 脳・脊髄腫瘍の放射線治療
1 低悪性度神経膠腫
2 高悪性度神経膠腫
3 髄芽腫
4 脳室上衣腫
5 頭蓋内胚腫
6 聴神経鞘腫
7 髄膜腫
8 脊髄腫瘍
10章 頭頸部(眼窩・顔面を含む)腫瘍の放射線治療
1 喉頭癌/2 上咽頭癌/3 中咽頭癌/4 下咽頭癌/5 上顎癌/6 舌癌/7 口腔癌(舌癌を除く口腔底,頬粘膜,歯肉・歯槽,硬口蓋の癌)
11章 肺癌の放射線治療
1 肺癌の特徴
2 治療方針と放射線治療の適応
3 胸部放射線治療法
4 特殊な照射法
5 有害事象
12章 縦隔腫瘍の放射線治療
1 縦隔腫瘍の特徴
2 上皮性胸腺腫瘍(胸腺腫・胸腺癌)
3 悪性縦隔胚細胞腫
13章 乳癌・乳腺腫瘍の放射線治療 (乳房温存療法を含む)
1 概 説
2 Ⅰ,Ⅱ期乳癌の治療と推奨グレード
3 非浸潤性乳管癌(DCIS)(0期)に対する乳房温存手術後放射線治療
4 乳房温存手術後放射線治療でのその他の項目
5 進行乳癌に対する乳房切除術後放射線治療
6 有害事象に関して
7 転移に対する放射線治療
8 ザンクトガレン2009 の要点
9 米国の乳房温存療法施行基準(1990 年)
10 放射線治療の手順
11 放射線治療の有害事象(副作用)
12 新しい増感放射線療法KORTUC の非手術乳癌治療への応用
14章 消化器癌の放射線治療
1 食道癌/2 胃癌/3 肝細胞癌/4 胆道系腫瘍/5 膵癌/6 大腸(結腸・直腸癌)/7 肛門癌の放射線治療
15章 女性生殖器腫瘍の放射線治療
1 子宮頸癌/2 子宮体癌/3 腟癌・外陰癌
16章 泌尿生殖器腫瘍の放射線治療
1 前立腺癌
2 その他の泌尿生殖器癌
17章 悪性リンパ腫の放射線治療
1 ホジキンリンパ腫
2 ホジキンリンパ腫以外
18章 血液腫瘍の放射線治療
1 放射線療法の目的・意義
2 TBI
3 全脳照射
19章 皮膚・軟部・骨腫瘍の放射線治療
1 皮膚癌/2 軟部肉腫/3 原発性骨腫瘍
20章 小児腫瘍の放射線治療
1 小児腫瘍の特徴と放射線治療の役割
2 小児腫瘍に対する放射線治療
21章 良性疾患の放射線治療
1 良性疾患に対する放射線治療の適応
2 代表的良性疾患の放射線治療
22章 緩和療法としての放射線治療
1 緩和医療とは
2 転移性骨腫瘍
3 転移性脳腫瘍
23章 放射線治療と化学療法(分子標的剤を含む)
1 総 論
1 放射線治療と化学療法併用の目的と放射線生物学的背景/2 化学療法のタイミング/3 分子標的薬
2 各 論
1 頭頸部癌/2 肺小細胞癌/3 肺非小細胞癌/4 子宮頸癌/5 悪性膠腫/6 悪性リンパ腫
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書籍情報
- ISBN:9784765315241
- ページ数:176頁
- 書籍発行日:2012年4月
- 電子版発売日:2012年12月15日
- 判:A4変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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