はじめに
勉強は順序が大切
この本は、心電図の初学者(特に医大生、初期研修医、循環器病棟ナース)が効率よく勉強するために作った本です。
私は臨床医として働きつつ、医師国家試験予備校の講師もしており、研修医や医大生に教えています。その際に私がいつも気にしているのは、教える順序です。心電図に限らず勉強は何でもそうなのですが、順序が大切です。同じ内容を勉強するにしても、順序が違うだけで、理解度やヤル気がものすごく変わってしまいます。
入門書と専門書
参考書は大きく2種類に分かれます。薄くて通読しやすい入門書と、分厚い専門書です。「どちらの本で勉強すべきか?」ということがよく議論になりますが、どちらを読むかではなく、読む順序が大切なのです。
まずは入門書で全体の流れをつかみ、それから専門書を読む、というのが良い順序です。入門書だけで満足してもいけませんし、最初から専門書を読もうとするのもお勧めしません。
専門書は(すぐに覚える必要のない)細かい内容や例外を含んでいます(それが専門書の良さなのですが)。初学者がまず勉強すべき内容を優先的に書いているわけではありません。ですから、専門書を1ページ目から読んでいっても、理解すべきページにたどりつく前に「良くわからない」「難しい」となり、途中で挫折してしまう可能性が高いです。それでは意味がありません。
これは私だけの意見ではありません。様々な勉強法について調べましたが、それらに共通するのが、まずはさらっと読める入門書で全体像を把握し、それからくわしい専門書を読んでみるというやり方です。最初から難しいボリュームのある本を読みましょう、なんて意見は聞いたことがありません。
入門書を選ぶ上での注意点
ここで、入門書を選ぶ上での注意点について考えてみたいと思います。私が考える良い入門書の特徴は次の4つです。
●初学者が学ぶべきことを、
●初学者が学ぶべき順に書いてあり、
●(読みやすく楽しいため)最後まで通読することができ、
●(読み終えた後は)もっと勉強したい、専門書にも挑戦してみたいと思わせる本
ページ数が少なく、なんとなく読みやすそうに見える心電図の本はいくつかあります。しかし、ただページ数を減らしただけで、上記の特徴を備えていなければ意味がありません。前著『看護の現場ですぐに役立つモニター心電図』を執筆するにあたり、類書はほとんど読んでみましたが、残念ながら内容や順序に関してあまりよく考えられていない本が多かったのです。「読みやすい」「もっと勉強してみたい」と思わせる入門書はなかなかないようです。
実際の場面がイメージできるか?
分厚い本を見ると、心電図の様々なバリエーションが載っています。今の私はそれを見て、「こんな心電図変化もあるんだ。こんな患者が来たら気をつけよう。勉強になったな」と思うことができます。しかし、昔の私は「はぁ~、こんなにたくさん覚えられないし、覚えたところでどう役に立つんだろう?」と思っていました。初学者の皆さんも同じ疑問を持っておられると思います。
そこで、以下の点についてできるだけ具体的に記載するようにしました
●この心電図はなぜ学ぶ必要があるのか?
●どのような場面で出くわすのか?
●この心電図を学ぶとどんな良いことがあるのか?
●どのように対処すればよいのか?
実際の臨床でどのように役立つか、リアルな場面がイメージでき、よりモチベーションを持って勉強できるはずです。
本書は、これから心電図を学ぼうとする人のことを徹底して考えて作られています。ですので、1ページ目から順に読んでいただくだけで、心電図について効率よく系統的に学ぶことができます。しかも、短期間で通読できるボリュームなので、大事な内容を漏れなく学ぶことができます。ぜひ本書で心電図の勉強をスタートしましょう。