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- 失神外来を始めよう!―失神のリスク評価の考え方・進め方
商品情報
内容
失神は複数の分野に及ぶ多数の疾患が鑑別疾患として考えられるため,診断・治療へ進めることが難しい.一過性意識消失における失神とてんかんなどの非失神の鑑別法や,見逃してはいけない心原性失神のリスク評価に必要な問診・身体所見のとり方,検査の適正な選択法,適切な診療科への紹介,その後のフォローアップまでを解説.この1冊で失神診療の進め方が初歩から学べて身につく.
序文
失神は全人口の0.6%が1年間で発症する症状といわれており,まれではない症状の一つです.失神患者の多くが,来院時には何の自覚症状も持ち合わせていないことが多く,さらに複数の分野に及ぶ多数の疾患が鑑別疾患として考えられるため,診断・治療と進むことが非常に難しく,筆者も以前は一抹の不安を持ちつつ失神患者の診療に当たっていました.
循環器内科の研修を開始した横浜南共済病院循環器内科では,西崎光弘先生が精力的に失神の診療を行っていましたが,他の業務に忙殺され傍から見ていただけでした(あの時期から失神を学んでいればと悔やまれます).失神診療に初めて本格的に触れたのは東京医科歯科大学の大学院に入学してすぐでした.当時の指導教官であった平尾見三先生(現在の東京医科歯科大学循環器内科教授)に失神についてのデータをまとめるように指示されたことから始まります.失神の診療を調べれば調べるほど,これまで持っていた不安の原因は失神についての無知であると思い知りました.また,当時発行されていたヨーロッパ心臓病学会(ESC)の2004年のガイドラインから失神診療の奥深さを学び,海外には「Syncope Unit」と呼ばれる失神専門の診療部門の存在を知るに至りました.大学院では主に心房細動の基礎研究を行っていましたが,いずれは臨床医として働くつもりでしたので,失神の診断システムを学び臨床に生かそうと考え,先のESCガイドラインの筆頭著者であるDr. Michele Brignoleの門を叩き,イタリアのLavagnaという小さな町(人口2万人程度)の160床の小さな病院に潜りこむことができました.大学病院でもなく,心臓外科の併設もない施設で外国からの留学生はいないという状況で不安もありましたが,逆にこの病院の規模でこれだけの成果が出せるのであれば,今後どんな小規模な施設でも可能な失神診療が学べると考え留学することを決意しました.2年弱の留学で多くのことを学び,帰国後の2012年より母校の聖マリアンナ医科大学にて「失神外来」を開始することになりました.
失神の診断機器は植え込み型心電図をはじめ,この5年で少しずつ進化をし,失神診療は行いやすい体制となりました.また,近年では意識消失患者による自動車事故などの影響もあり,失神診療の重要性が認識されつつあります.このような状況で2017年4月より聖マリアンナ医科大学循環器内科 明石嘉浩先生のご尽力もあり「失神センタ―」を開設し,失神の診療をさらに広くやらせていただくこととなりました.このような時期に本書が出版できることを非常にありがたく思います.
本書は一般内科,開業医の先生をはじめ,救急外来で失神患者を診療する研修医や若手医師,入院病棟で診療にあたる循環器や神経の専門医の先生方に失神診療の流れ・考えかたを学んでいただき,日常診療の参考にしていただければと思い執筆しました.本書を通じて失神の診療に興味をもっていただければ非常に光栄です.
2017年4月
古川 俊行
目次
I 失神とは〜定義と原因〜
A 失神の定義
B 意識消失・失神の分類
C 失神の頻度
D 危険な失神・意識消失?
E 失神の再発
F 失神患者の年齢と性別
II 失神診療の目的とガイドラインの使い方
A 原因疾患の診断の過程
B 失神診療における指標
C ガイドラインの使いかた
D 最終的な目標は?
III First touch〜失神患者が訪れたら〜
1.問診〜「てんかん」などの一過性意識消失との鑑別も含めて〜
A 一過性意識消失をきたす失神と失神をきたす疾患
B 一過性意識消失と失神との違い・その見分けかた
C 問診のまとめ
2.身体所見のとりかた
A 胸部の聴診
B 血管の聴診
C 血圧の測定
D 頸動脈洞マッサージcarotid sinus massage(CSM)
3.失神診療で必須の初期評価の検査
A 心電図
B 胸部レントゲン
C 採血
D 頭部CT・MRI検査
4.心疾患による失神(心原性失神)のリスクの層別化
A 失神における危険因子とは?
B 心原性失神におけるリスクスコア
5.心原性失神のリスクが高い失神の診療(リスクの層別化後の対応)
A 危険性が最も高く,緊急入院を含めた介入が望ましい失神
B 入院加療が必要であるが,早期の予定入院(1週間以内)が望ましい失神
C 通常の予定入院または外来での検査でも可能な失神
6.心原性失神のリスクが低い失神の診療
A 起立性低血圧による失神
B 反射性(神経調節性)失神
IV Second touch〜さらなる検査〜
1.さらに行う検査と適応
A 心エコー検査
B ホルター心電図
C 運動負荷試験
D 頭部CT・MRI
E 脳波・頸動脈エコー
2.専門的な検査
A 経食道心エコー
B 冠動脈造影・心臓カテーテル検査(冠動脈CT・心筋シンチグラム)
C 心臓電気生理学的検査(EPS)
D チルト試験
E 長期心電図モニター(植え込み型ループ式心電図,イベントレコーダー等)
V 失神の治療
1.薬物治療
A 起立性低血圧
B 反射性失神
C 心原性失神
2.ペースメーカー
A 起立性低血圧
B 反射性失神
C 徐脈性不整脈
3.カテーテルアブレーションと植え込み型除細動器
A カテーテルアブレーション(RFCA)
B 植え込み型除細動器(ICD)
VI 失神診療の発展〜Syncope Unitとは〜
失神診療の問題点
索引
Column
失神とてんかん
ガイドラインの重要性の再認識
患者さんの「失神」の表現
運転と意識消失
てんかんの患者さんに対する心電図検査
心房細動を伴う失神
失神診療は先入観を持たない!
起立性低血圧患者さんで高血圧を合併している場合の管理
チルト試験
患者さんへの反射性失神の説明
原因不明の失神における検査の有益性
クリップのような心電計
T-LOCを繰り返す60代女性の患者さん
失神のため頭部を打撲した40代男性の患者さん
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書籍情報
- ISBN:9784830619380
- ページ数:128頁
- 書籍発行日:2017年5月
- 電子版発売日:2018年11月23日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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