期待されるチアゾリジン薬 改訂版

  • ページ数 : 328頁
  • 書籍発行日 : 2013年5月
  • 電子版発売日 : 2019年8月16日
5,280
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商品情報

内容

●初版発行から6年,新たに15項目を追加した大幅増ページの改訂版。
●新たなエビデンス,安全性,インクレチン関連薬等との併用,ひとくちコラムなど,チアゾリジン薬(ピオグリタゾン)の最新知見から効果的な使い方までを網羅。

序文

改訂の序

糖尿病は,わが国で現在約890 万人の患者が罹患し,なお増加している。また,合併症も深刻である。2 型糖尿病の増加は,日本人やアジア人のインスリン分泌低下の体質に加えて,環境因子,特に欧米型の生活習慣の普及による肥満・内臓脂肪蓄積に基づくインスリン抵抗性,いわゆるメタボの病態が直接の引き金になっている。また,合併症の中でも,糖尿病は動脈硬化を基盤とした心筋梗塞,脳卒中の最大の原因となってきた。この中で,インスリン抵抗性改善薬の役割に対する治療上の期待が増大している。

「期待されるチアゾリジン薬」の初版が刊行されて,6 年が経過した。その間,チアゾリジン薬をめぐって,心血管イベント抑制についてのエビデンスや膵保護作用による糖尿病発症・進行抑制のエビデンスが集積されてきた。また,ACCORD 研究などにより,低血糖を起こさない治療の重要性が極めて明確になった。そこで,SU 薬など従来のインスリン分泌促進薬に比して,インスリン抵抗性改善薬の初期治療における重要性が増している。同様に,DPP-4 阻害薬などインクレチン薬の位置付けも高まっている。このような状況を踏まえ,ADA/EASD ガイドラインでは,以前はビグアナイド薬の次の選択肢はSU 薬や基礎インスリンが薦められ,エビデンスが不足しているという理由で次の選択肢に入っていなかったチアゾリジン薬やインクレチン薬が,SU 薬やインスリンと同列の次の選択肢に位置付けが引き上げられた。また,チアゾリジン薬とインクレチン薬との併用は,低血糖を惹起せず,日本人の糖尿病の二大病態のインスリン分泌低下とインスリン抵抗性を治療しうる併用療法として注目されている。また,わが国の糖尿病や合併症の病態からみて,チアゾリジン薬の炎症改善やアディポネクチン増加などの作用に対する期待は大きい。

一方,ロシグリタゾンで心血管リスクについて問題が報告され,チアゾリジン薬全般に対する懸念が増大したが,幸いわが国で用いられているピオグリタゾンは心血管リスクを有意に抑制するというデータが多く,現在では心血管リスクはロシグリタゾンに特徴的な問題と理解されている。また,チアゾリジン薬全般に共通な作用として体液貯留があげられるが,わが国では潜在性のものも含め心不全にはピオグリタゾンを禁忌とする適正使用が行われており,ピオグリタゾンによる心不全が欧米に比し非常に少ない。また,いくつかのデータベースで膀胱癌との関連が報告され,膀胱癌の患者やリスクの高い患者には,それぞれ禁忌,慎重投与となっている。ピオグリタゾンと膀胱癌との関連については相反する報告が多く,今後の研究の中で速やかに結論が出されることを期待している。

本書は,このような状況の下で,糖尿病治療における位置付けの高まっているチアゾリジン薬に特徴的でユニークな作用特性や臨床的有用性を十分踏まえ,同時に安全性についても十分考慮した適正使用を推進する必要性が高まったことから,初版の内容は踏まえつつ新たに企画され,執筆されたものである。この間,HbA1c の国際標準化もなされ,本書の記述もそれに従っている。本書は,全部で45 の項目からなり,糖尿病患者の診療にあたる臨床医やインスリン抵抗性・動脈硬化について興味を持つ研究者の方々に是非とも読んでいただきたい。大変ご多忙な中脱稿いただきました執筆者の方々に心より御礼申し上げる。


2013年3月

東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 教授

門脇 孝

目次

1.糖尿病におけるインスリン抵抗性と薬物療法

1)わが国の2型糖尿病の特徴

○ひとくちコラム:KCNQ1

2)2型糖尿病におけるインスリン抵抗性

3)チアゾリジン薬の作用機序

4)経口糖尿病治療薬の種類と特性

2.各種疾患におけるインスリン抵抗性

1)循環器疾患におけるインスリン抵抗性

2)高血圧とインスリン抵抗性

3)脂質代謝とインスリン抵抗性

4)認知症とインスリン抵抗性―アルツハイマー病を中心に

5)臓器別のインスリン抵抗性

3.チアゾリジン薬が期待される理由

1)血糖改善作用(長期の血糖管理)

2)膵保護作用

3)糖尿病発症抑制

4)腎保護作用

5)脂質代謝異常改善作用

6)抗動脈硬化作用

7)アディポカインに対する作用―アディポネクチンをはじめとして

○ひとくちコラム:オスモチン

8)脂肪肝に対する作用

○ひとくちコラム:肝臓での酸化ストレス・小胞体ストレスへ及ぼす作用

4.チアゾリジンのわが国における臨床研究

1)炎症および酸化ストレス軽減作用

○ひとくちコラム:PI3Kγ阻害によるインスリン抵抗性改善の可能性

2)IMTの減少作用および血糖低下に依存しない抗動脈硬化作用

3)冠動脈疾患病態改善作用

4)微量アルブミン尿への影響

5.大規模試験から

1)PRACTICAL

2)PROactive Study

○ひとくちコラム:Legacy effect

3)CHICAGO Study

4)PERISCOPE study

5)J-DOIT3

6)ACT NOW

6.チアゾリジンの安全性

1)浮腫

2)体重増加

3)骨折

4)ピオグリタゾンとロシグリタゾンの相違(安全性)

5)膀胱癌

7.チアゾリジン薬の効果的な使い方

1)単独投与

2)他剤との併用

SU薬,グリニド薬

ビグアナイド薬

インクレチン薬,α-グルコシダーゼ阻害薬

インスリン製剤

3)心疾患合併例

8.PPARγの最新動向

1)PPAR標的薬の開発動向

2)PPARγをめぐる基礎研究の進展 ―エピゲノム解析をはじめとして

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書籍情報

  • ISBN:9784862700315
  • ページ数:328頁
  • 書籍発行日:2013年5月
  • 電子版発売日:2019年8月16日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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