改訂第4版の序
本書が世に出てから13年が経った.満を持して初版を発刊したのが2005年,「内視鏡所見を切り口にした面白い本が出た」と好評を得た.2007年には当時急速に進歩しつつあった「特殊光による内視鏡像」の項を追加して,早くも第2版を刊行した.2011年には編集者に武藤 学教授を加え,咽頭・食道の分野を充実させて第3版が刊行された.
それから6年半が経った.この間,2012年には「日本食道学会拡大内視鏡分類」が作成され,研究が進んでいる.また,2013年に「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」が除菌適応に追加されるとH.pylori除菌は急速に進み,2014年に「胃炎の京都分類」が提唱されたことと相まって,H.pylori陰性およびH.pylori除菌後胃疾患の研究が急速に進んだ.さらに画像強調観察(IEE;Image‒Enhanced Endoscopy)による新たな上部消化管内視鏡診断学が急速に進歩し,今やIEEはごく当たり前の検査として普及しつつある.多くの規約・基準も改定された.『頭頸部癌取扱い規約』(改訂第5版,2012年),『胃癌治療ガイドライン』(改訂第4版,2014年),『食道癌取扱い規約』(改訂第11版,2015年),『胃癌取扱い規約』(改訂第15版,2017年),『消化器内視鏡ハンドブック』(改訂第2版,2017年)などである.
そこで今回は,急速に変貌を遂げつつある上部消化管内視鏡診断学を見据え,第4版改訂を行った.上述の事柄はすべて盛り込んだつもりである.また,飛躍発展したIEEの項を充実させ,IEE画像をふんだんに取り入れた.
既存の消化管内視鏡診断に関する書籍の多くは,「疾患ごと」に項目立てされ鑑別診断に終始している.これに対し,本書は「所見ごと」に項目立てされているのが特徴である.隆起あるいは陥凹といった所見をみて,その所見から質的診断に至るプロセスを,多くの内視鏡写真と簡潔な説明,そしてフローチャートを用いて懇切丁寧に解説している.また,執筆は現在内視鏡分野の最前線で活躍中の先生方にお願いし,生命線といえる内視鏡画像も美しい最高のものとなっている.さらに,疾患ごとに大切な事項は疾患別内視鏡像の項にまとめて示し,最新のトピックス,技術的なコツは充実したコラムの中に包み隠さず盛り込まれている.
本書は内視鏡専門医を目指す若手医師が手に取ってすぐに役立つきわめて実践的な内容となっている.一方で,拡大内視鏡をもたない一般内視鏡医にも配慮した内容構成になっている.また,すでに専門医を取得し指導医を目指す先生方が,知識を整理するにおいても役立つ質の高い本になったと自負している.この本が,内視鏡診療に日夜研鑽を積まれている諸先生方の座右の書となれば望外の喜びである.
最後に,大変お忙しいなか快く改訂執筆をお引き受け下さった先生方に厚く御礼申し上げるとともに,このようなすばらしい企画を組む機会を与えて下さった日本メディカルセンター諸氏に感謝いたします.
2018年立春
長南 明道
田中 信治
武藤 学
田尻 久雄