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- 安保 雅博
- rTMSと集中的作業療法による手指機能回復へのアプローチ―脳卒中上肢麻痺の最新リハビリテーション
商品情報
内容
序文
脳卒中により身体に障害が生じた場合,「歩けますか?」「しゃべれますか?」「手が使えるようになりますか?」の3つに患者・家族の質問は,集約されるといっても過言ではない.むずかしく答えにくい質問である.脳卒中による上肢の麻痺に関していえば,発症から4か月が過ぎると,その95%はプラトーになってしまう.6か月つまりは180日を過ぎると,ほとんど改善は見込まれないというのが,世の定説である.利き手の麻痺なら早急に利き手交換をするのも世の定説である.
発症から数か月経っても上肢麻痺のレベルが,Brunnstrom stage(Br. stage)でⅡ,Ⅲの患者で痙性が強ければ,実用手まで戻るのは,経験上,困難であると容易に予想することができる.しかしながら,Br. stageがⅣ,Ⅴの人がなぜそれ以上よくならないのかと疑問に思ったことは,なかっただろうか?
医療保険適応の180日越えという一言で,もう少しよくなるのではないかと思いながらも,診療報酬13単位内では麻痺のレベルを維持するしかないからと,安易に患者を介護保険下に投げてしまっていないだろうか?
介護保険のもと,脳卒中の麻痺による機能障害の人たちがマンパワーの不足から機器に頼らざるを得ない訓練や筋力低下が主体となる人たちと同様の画一的な訓練を施行され,外来で久しぶりに患者を見たときに,せっかく苦労して出現させた分離動作が,すっかりなくなって悲しくなったことはなかっただろうか?
Br. stageがⅣ,Ⅴの患者が,利き手の麻痺の回復にこだわって,社会復帰が遅れに遅れてしまい,挙句の果てには鬱状態に患者が陥ってしまったことはなかっただろうか?
上記のことは,私をはじめ脳卒中の上肢麻痺のリハビリテーションに真剣にかかわる者たちが感じていることだと思う.しかしながら,これらは決して誰も悪くないのである.定説が改善しないといっているからだ.
東京慈恵会医科大学附属病院は,特定機能病院であるため急性期が主体である.しかしながら,維持期の患者にもリハビリテーション専門医が中心になってintensive neurorehabilitative approachを試み,「よくなるものをよくして維持期に返す」「間違った訓練法を指導修正して維持期に返す」使命があると考えている.集中訓練,経頭蓋磁気刺激,経頭蓋電気刺激などの普及で,今までプラトーだといわれていた障害がよくなる可能性が出てきたからだ.
維持期の患者に訓練をしているのかと聞くと,“週1回ないし2回デイで...”という回答がほとんどである.訓練は毎日,自分でできるようにすべきである.今の状態から麻痺の改善をさせるためには,どのような訓練が必要なのかきっちり理解してもらわなければ前に進めないのである.段階を踏まないと麻痺はよくならないからである.また,生活に密着した訓練でなければ意味がない.機能が上がれば,必然的に使用頻度も上がるからである.この点から考えても,作業療法士の役割は非常に重要である.脳卒中上肢麻痺のリハビリテーションは,QOL,つまりは生活のレベルで何ができるようになるかに主眼を置いて対応しなければならない.最も大切なことは,全人的に考えリハビリテーションを施行しなければならないのである.
よって,今回この本で,わかりやすく,参考にしていただけるように,東京慈恵会医科大学で強力に推し進めている上肢麻痺に対するリハビリテーション・NEURO―6・15(Novel Intervention Using Repetitive TMS and Intensive Occupational Therapy―6・15 Days Protocol)を紹介することになった.
全国の作業療法士の諸君,NEUROのOはOTのOなのである.全人的視点に立った作業療法士として上肢麻痺の新しいリハビリテーションを進め,今までよくならないとされていた人たちに光を与えようではありませんか.
2010年 7月吉日
安保 雅博
目次
序 作業療法の役割の重要性
Ⅰ章 脳卒中の現在
1.脳卒中の病態と危険因子
2.脳卒中の症状とその画像診断
3.脳卒中の急性期治療
4.脳卒中の後遺症にはどのようなものがあるのか
Ⅱ章 脳卒中上肢麻痺のEBM
Ⅲ章 新たな治療手段TMSとは
TMSによる刺激の原理
1)TMSが大脳皮質を刺激する原理
2)TMSが大脳に与える影響―刺激頻度によって効果が異なる
3)低頻度rTMSによって大脳半球間抑制を減弱させる
4)治療手段としてのrTMS―直接的アプローチと間接的アプローチ
5)rTMSの安全性
Ⅳ章 慈恵医大方式 rTMS+集中的作業療法(NEURO)の考え方
1.NEUROとは
1)独自の治療戦略―NEUROの考案
2)NEUROの適応基準
3)NEUROを行うためのスタッフ・施設の体制
4)NEUROの治療スケジュール
5)当科で用いているNEURO患者に対する上肢機能の評価スケール
2.rTMSの適応方法
1)rTMSの機器
2)刺激部位と刺激強度の決定
3)rTMSの施行
4)rTMSに関する注意点
3.脳卒中における障害機能の回復メカニズム
1)神経組織の可塑性・再生と機能的再構築
2)fMRIから考えられる機能の可塑性とリハビリテーション
3)われわれの基礎的研究から得られた知見に基づく磁気刺激療法
4.集中的作業療法のオーバービュー
1)集中的作業療法の現状―CI療法のこれまで
2)CI療法の課題
3)NEUROのために当科で考案した集中的作業療法
5.NEUROにおける集中的作業療法
1)随意運動のメカニズムとそれが障害されたときの回復過程
2)脳卒中後上肢麻痺に対するリハビリテーションのこれまで
3)NEUROにおける随意運動を引き出すための作業療法プログラム
6.当科におけるNEURO-15の現状と今後
Ⅴ章 症例シリーズ
症例(1)NEURO-15により調理動作が自立
症例(2)CI療法を行った後にNEURO-15を施行
症例(3)NEURO-15により生活上の役割を再獲得
症例(4)若年性脳卒中に対するNEURO-15
症例(5)NEURO-6により麻痺側上肢機能が顕著に改善
症例(6)外来通院下でNEURO-6を施行
症例(7)重度感覚障害を伴う症例に対するNEURO-15
Ⅵ章 脳卒中上肢麻痺の回復に限界はあるのか
1.適応基準の変遷
2.上肢麻痺にプラトーはあるのか
3.攻めるリハビリテーションの勧め―Intensive Neurorehabilitationとは
4.rTMS治療のさらなる発展を目指して―rTMS治療のこれから
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書籍情報
- ISBN:9784895903646
- ページ数:162頁
- 電子版発売日:2011年6月1日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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