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- なぜ子どもは自殺するのか その実態とエビデンスに基づく予防戦略
商品情報
内容
世界で最も子どもが自殺する日本。今、何ができるかを考えます。
日本は世界で最も子どもが自殺しているといわれています。なぜ、子どもが死を選ばざるを得ないのでしょうか。実態を詳細に検討し、子どもたちが自分らしく生きるためにできることを考えました。自殺リスクのある子どものスクリーニングと介入プログラム、学校における自殺予防プログラム、再企図防止のケース・マネージメント介入プログラムは必読です。付録に児童・青年期のうつ病の治療ガイドラインも収載しました。子ども・若者に向き合う医療従事者、地域の支援者、学校関係者、ご家族に知ってもらいたいすべてを凝縮した1冊。
序文
はじめに
子ども・若者の心の問題にかかわる者は,子どもたちがその人らしく成長し,生きていくことを支援しています。その役割は,医療的,保健的,教育的,福祉的立場などさまざまですが,子どもたちが自分らしく生きていくことを願う思いは同じです。
一方,自殺はすべてを終わらせる行為であり,私たちが目指すところと最も対極にある行為であると言えます。その意味で私たちには,少なくとも子どもたちが自ら死を選ぶことを何とか食い止めることが至上命題として与えられていると言えます。
ところが,「わが国は世界で最も子ども・若者が自殺する国である」という実態はほとんど認識されていないのではないでしょうか。わが国では,1998年より自殺者数が毎年30,000人を超えるという異常事態が続いていました。2012年の自殺者数は15年ぶりに30,000人を下回り,2016年の自殺者数は21,897人まで減少しました。
しかし,その実態を年代別にみると,中高年の自殺者は2005年頃を境に減少傾向に向かっていますが,若い世代の自殺者は横ばいで推移しています。近年,急激な少子化により子ども・若者の人口は40年前の約半分になっていることを考えると,子ども・若者の自殺死亡率は増加していると考えられます。
2015年のわが国の10〜19歳の自殺者は554人で,自殺者総数の2.3%を占めるにすぎません。しかし,この年代の死亡者総数の約半数を占めているのです。先進7ヵ国の若い世代(15〜34歳)の死因をみると,ほかの国々の死因の1位は事故死ですが,わが国のみが自殺です。また,ほかの先進国の若者の自殺率は減少傾向にありますが,わが国は増加し続けており,世界で最も高い値なのです。
このように,わが国における若い世代の自殺はきわめて深刻な状況にあると言えます。少子化傾向には拍車がかかり,かつ人生が始まったばかりの貴重な将来ある若い世代の自殺率が増えているのです。本来なら成長して自分の人生を生きていくはずの子どもが,自ら死を選ばなくてはならないことは,何とも痛ましく悲しいことであり,わが国にとっても多大な損失と言わざるをえません。
以上のような背景から,わが国の子ども・若者の自殺の実態と予防対策を論じてみたいと考えました。本書では,子どもの自殺の実態,自殺の心理,自殺企図者への対応,心の病と自殺との関係,および自殺予防に関するエビデンスについて論じ,最後に子どもの自殺予防においていま私たちにできることは何かについて述べました。また,巻末に付録として,「児童・青年期のうつ病に対する治療ガイドライン」を載せました。ここには私なりに,死にたいと思い,自殺を企図する子どもや若者と向き合う医療従事者,地域の支援者,学校関係者,そしてご家族に知っておいてもらいたいと考えていることが,すべて詰め込まれています。
本書が子ども・若者の自殺予防にいくらかでも寄与し,援助活動をしている多くの方々の一助となることを心より祈念しています。
2018年2月
北海道大学大学院保健科学研究院
傳田 健三
目次
第1章 子どもの自殺の実態
Ⅰ.わが国の自殺の実態
1.自殺者数の推移
2.戦後の自殺者数の長期的推移
3.自殺者数の超長期的推移
4.自殺死亡率の年次推移
5.年齢別自殺者数の年次推移
6.年齢別自殺死亡率の年次推移
7.年齢別にみた死因
8.原因・動機別の自殺者数の推移
Ⅱ.世界の自殺の実態
1.世界の自殺
2.世界と地域の自殺死亡数
3.WHOメンタルヘルスアクションプラン2013─2020
Ⅲ.わが国における子ども・若者の自殺の実態
1.わが国の子ども・若者における高い自殺率
2.原因・動機別自殺者数
3.自殺の手段,場所
第2章 自殺の危険因子
Ⅰ.自殺の危険因子とは
1.自殺企図歴
2.精神障害の既往
3.サポートの不足
4.性別,年齢,性格
5.喪失体験,他者の死の影響
6.事故傾性
7.児童虐待
Ⅱ.児童・青年期症例における心理学的剖検
1.フィンランドの研究
2.アメリカの研究
3.ノルウェーの研究
4.まとめ
第3章 子どもの自殺の心理
Ⅰ.人はなぜ自殺するのか
1.自殺に認められる共通の心理的特徴
2.自殺の対人関係理論
Ⅱ.自殺念慮に気づくには
1.自殺のリスクアセスメント
2.自殺念慮に気づく
3.「自殺したい」と打ち明けられたら
第4章 自殺企図者への対応
Ⅰ.自殺企図者との面接
1.自殺企図者は望まない状況でそこにいる
2.「死にたい」と打ち明けることは容易ではないことを理解する
3.自殺企図直後は介入の絶好の機会である
4.この人には話してもよいのだと思わせる
5.治療者のネガティブな感情に注意する
Ⅱ.自殺の危険度のアセスメント
1.自殺の危険度の評価
2.自殺と自傷の鑑別
3.自殺の動機と背景要因
4.社会生活環境の評価
5.社会資源との調整
Ⅲ.自殺イベントの時系列アセスメント(CASEアプローチ)
1.情報領域1:現在の自殺イベントと行動を探る
2.情報領域2:最近の自殺のイベントを探る
3.情報領域3:遠い過去のイベントを探る
4.情報領域4:切迫したイベントを探る
第5章 子どもの心の病と自殺
Ⅰ.疾患別の自殺の危険性
1.気分障害
2.統合失調症
3.境界性パーソナリティ障害
4.発達障害
Ⅱ.子どもの心の病と自殺に関する近年の研究
1.Sheftallらによる米国の児童・青年期自殺者データの解析
2.Bridgeらによる若者の自殺に関するレビュー
第6章 子どもの精神症状および自殺意識に関する調査
Ⅰ.子どもの抑うつ症状,躁症状,自閉傾向,自己効力感に関する実態調査2016
1.調査の概要
2.2016年度調査結果
3.2011年度の調査結果との比較
Ⅱ.自殺意識調査2016
1.調査の概要
2.調査結果:10のファクト
3.自殺対策の方向性への提言
4.自殺意識調査のまとめ
第7章 自殺予防の実際:エビデンスのある自殺予防戦略とは
Ⅰ.Mannらによるレビュー(1966~2005年)
1.自殺の気づきと教育:Awareness and Education
2.高リスク者のスクリーニング
3.精神疾患への治療的介入
4.致死的な自殺手段へのアクセス制限
5.メディア戦略
6.まとめ
Ⅱ.Zalsmanらによるレビュー(2005~2014年)
1.自殺の気づきと教育:Awareness and Education
2.スクリーニング
3.治療的介入
4.致死的な手段へのアクセス制限
5.メディア戦略
6.電話およびインターネット介入
7.自殺予防の併用戦略
8.まとめ
第8章 子どもの自殺予防において私たちにできること
Ⅰ.スクリーニングと介入プログラム
1.スクリーニングと介入の有効性と問題点
2.2016年度 児童生徒の心の健康に関する調査
3.千歳市における自殺予防対策
4.被災地の高校生に対するスクリーニングと介入
Ⅱ.学校における自殺予防プログラム
1.SOSプログラム
2.ACTプログラム
3.わが国における自殺予防教育の実施可能性
Ⅲ.自殺企図者に対する再企図防止のためのケース・マネージメント介入プログラム
1.ACTION─Jの概略
2.ACTION─Jの成果
3.子ども・若者に対するケース・マネージメントの可能性
4.今後の課題
Ⅳ.児童・青年期のうつ病の治療ガイドライン
付録 児童・青年期のうつ病に対する治療ガイドライン
はじめに
Ⅰ.児童・青年期のうつ病の基本的特徴
1.発症年齢,有病率
2.臨床像と分類
3.児童・青年期うつ病の診断
Ⅱ.推奨される治療
1.治療の概観
CQ1:すべての治療ステージに行う基本的な介入は何か
2.治療計画
CQ2:児童・青年期うつ病に対する初期の評価とマネージメントは何か
CQ3:英米のガイドラインではどのような治療法が推奨されているか
CQ4:重症度に応じた初期の治療的アプローチは何か
3.精神療法と薬物療法
CQ5:児童・青年期うつ病に対する有効な精神療法は何か
CQ6:児童・青年期うつ病に対する有効な薬物療法は何か
4.わが国で推奨される児童・青年期うつ病に対する治療法とは何か
CQ7:わが国で推奨される児童・青年期うつ病に対する治療法とは何か
まとめ
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書籍情報
- ISBN:9784880027715
- ページ数:120頁
- 書籍発行日:2018年4月
- 電子版発売日:2020年5月13日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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