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- 本当に使える症候学の話をしよう とことんわかる病態のクリニカルロジック
商品情報
内容
●患者の訴えを鵜呑みにしない「聞く」テクニック
●総合診療の目線で日々全身を診ている医師が教える新しい症候学
症状を手がかりに疾患や病態を探る症候学。しかし、実際の臨床ではシンプルに「この症状ならこの病気」とはいかないものです。そこで本書は、解剖学、生理学、組織学、免疫学などを駆使して症状をとらえ、判断に困ったときの考え方や現場で使える診かたをわかりやすくレクチャーします。
病態生理を掘り下げることで、これまでより深い病歴・身体所見の診かた、患者さんにポイントを突いた聞き方ができるようになります。
総合診療の目線で「全身を診ること」にこだわってきた医師が教える、これまでになかった病態推論。医師、薬剤師、看護師問わず、わかりやすく現場に役立つ1冊です!
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序文
発刊にあたり
初期研修医1年目,ともに研修に励む仲間たちが「将来何科に進むべきか?」と,近い将来の進路に迷い毎日のように議論を交わしていた研修医ロッカー室で,私は日々「自分はどんな医者になりたいか?」を模索していた。行く先々でローテート科の人間関係にも恵まれ,医学的にはどの診療科も魅力的に感じていた私にとって,“進むべき診療科”の選択は二の次だった。
15年後の現在に至っても,気づけば「自分はどんな医者になりたいか? 今日はどんな医者だったか? 明日はどんな医者になりたいか?」,そんなことを自分自身に問いかけ続け,日々の診療と臨床教育を続けている。
当時の雑記帳を開くと,調べなければいけない山のような課題のほかに,自分がなりたい医師像に関するメモ書きが並ぶ。「ロジカルにものを考えられる医者」「圧倒的な知識!」「急変に対応できる医者。の前に急変させない医者」「患者さんにへつらわない。偉ぶらない」「患者さんの家族にまで配慮できる医者」「ありがとうの数」「説教をせず,患者さんとの妥協点を見出せる医者(食事制限など)」「内科の枠を超えた内科医(内科以外の専門家の分野までしっかり)」……こんな文言が乱雑に並んでいる。
初期研修が終わる頃,私は一つの実にシンプルな結論にたどり着いた。『自分が患者だったら診てもらいたい医者,自分の家族を診てもらいたい医者』,そんな医者を目指そう。
本書は,2016年から3年近くにわたり,じほうの月刊誌に連載させていただいた内容をもとに構成されている。そして,それはもともと私が卒後3年目に上司と立ち上げた院内研修医向け勉強会「レジスタ症候学」で行ってきた講義を中心に,日々のベッドサイド教育回診,講演会での話,そこで繰り広げられたディスカッションの内容をまとめたものである。
臨床教育は真に自分自身に向けられる教育でもある。臨床的疑問を見つけ,調べ,考え,臨床的な価値を見出し,実践し,検証し,それを教える。教えることではじめて知識は定着し,新たな疑問が芽吹き出す。私は15年間,臨床教育を一つのツールとして自分自身の智を深めてきた。そして,本書の“智”は,私が「どんな医者になりたいのか」と思い悩んだ日々をともに歩んできた“智”であり,教育コンテンツということになる。
アカデミックな内容から,時に患者さんとの間で繰り広げられる心理戦,生理学の存在意義論に至るまで,本書が実用的な臨床医学の指南書となり,若手医療従事者が「何科に進むべきか」などを考える前に自分が「どんな医療者になりたいか」を“考える”きっかけになる教科書であってほしいという願いを込めてまとめた。
「病気とは正常ではないこと」(p.190),このシンプルな定義から,日々さまざまな“病気”と向き合い立ち向かう私たち医療者が学ばなければならないことが見えてくる。それは,“病気”を学ぶ前に,まずヒトの身体の“正常”を学ぶことであり,かつて医学部で学んできた基礎医学を臨床に活かすこと,である。「“正常”からどこがズレているのか?」「ここがこうズレているから病的なんだ」。本書では特に重要な生理学,解剖学,免疫学の3軸に重きを置き,さまざまな症候における身体の神秘ともいえる構造やメカニズムについて多くの紙面を割いている。
簡易的なマニュアル本があふれる臨床医学の世界。思うようにいかないケース,なかなか診断がつかないケース,つまづくケース……,マニュアルどおりにいかないケースはいくらでもある。そんなとき,この“正常なヒトの身体から病態生理をひも解く力”こそが私たちの思考の引き出しを開いてくれると信じている。
マニュアル本は読んでも忘れる。基礎医学に立ち返る深い学びにより,ヒトの身体の神秘に触れ,小さく感動することで,その知識と思考ははじめて臨床医のなかに深く根付き,真の記憶となり武器となる。
本書の発刊には実に多くの方々の力をお借りしたのは言うまでもありません。生意気だった私に臨床魂を注入し続けてくださった恩師,かつて勉強会資料作りにいつも徹夜で付き合ってくださった矢嶋宣幸診療科長に,そして5年間,まさに二人三脚,あうんの呼吸で連載から本書発刊までしぶとくお付き合いくださったじほうの吉岡陽一氏に,いつも支え続けてくれる皮膚科医でもある最愛の妻と執筆妨害担当のふたりの愛娘たちに,そして最後に,素晴らしい時間をともに学び,笑い,泣いた多くの研修医たちに最大の感謝を。
昭和大学リウマチ膠原病内科
高橋 良
目次
第1章● 腹痛編
1 腹痛のタイプによって病態を見分ける
診断を迷わす『悪魔のささやき』は一度引っ込める
OPQRSTはclosed questionとセットで使う
内臓痛と体性痛の違いとは?
限局性の比較的はっきりした痛みは要注意と心得る
判断に悩む症例をどう考えるか?
患者の言葉を鵜呑みにしないほうがよいもの
2 痛みの病歴聴取とOPQRSTの質を高める
痛みの表現は無理に引き出さない。曖昧な答え自体に意味がある
痛みの突然発症は重症サイン。どう確かめる?
P(増悪・緩解因子)の聴取から緊急性を見極める!
病歴を聴き直す。そして虫垂炎の診断スコアを使う
カルテに「±」は極力書かないこと
3 危ない腹痛を見極める,誰でもできる腹痛フィジカル
“右下腹部の圧痛”よりもはるかに大切なこと
押すと生理的に痛みを感じるのはどこか
丁寧で繊細な診察こそが病態を絞り込む
3人の腹痛患者。見た目で危なそうなのは?
ベッドサイドで危ない腹痛を見抜く他の手
症例を振り返る──EBM,生かすも殺すもやり方次第
聴診による腹部蠕動音の評価は慎重に
第2章● 頭痛編
4 危ない頭痛の共通点と聴き出し方を学ぶ
軽症に見える頭痛に潜むくも膜下出血
悪魔のささやきに注意! 患者の言葉に引きずられない
病態推論につながる脳特有の構造
危ない頭痛を見極めるために何を聴くか
5 病態生理から見抜くよくある頭痛の特徴
見逃しを防ぐための片頭痛の特徴的な病歴
くも膜下出血で神経症状はあまりみられない
意識障害患者では必ず血圧をチェック!
慢性硬膜下血腫を拾い上げるためのポイント
頭痛+意識障害+血圧低下で考えられる病気は?
危ない頭痛のまとめ
第3章● 意識障害編
6 明日からできる意識障害はじめの10秒
意識障害時の対応「ABC」
3秒でできる重症意識障害のスクリーニング
AIUEOTIPSとカテコラミンリリースの関係
敗血症はちょっと複雑。興奮することもあれば傾眠傾向のことも
カテコラミンが放出されなくても危険な病態はある
7 ワンランク上のAIUEOTIPS使いこなし術
病歴から意識障害を絞り込む
真の意識障害と精神疾患を鑑別しよう
ここまでをいったん整理。さらにレクチャーは続く
「脳症」という視点でAIUEOTIPSを見てみよう
タイムリミットがあるStrokeとInfection
補講 迅速に対応すべき疾患の代表格『敗血症』
第4章● 浮腫編
8 むくみの基本と病態生理をトコトン学ぶ
浮腫を診るにはどの部位?
浮腫とヒトの体のおさらいをしよう
血管内外の水分移動と浮腫の関係
スターリングの法則でカギを握るσの意味は?
毛細血管膜の透過性の違いが意味するもの
9 Commonな原因による浮腫を病態生理から見抜く
浮腫の原因は決して1つではない
毛細血管の仕組みがわかれば浮腫の原因が見えてくる
静脈側が引き起こす浮腫
他にも静脈が絡む浮腫:腎不全,心不全,DVT,etc.
第5章● 胸痛編
10 絶対見逃したくない胸痛のOPQRST
心筋梗塞患者の約3割は心電図異常なし
ACSの病態,狭心症の分類を押さえておこう
胸痛患者で見逃せない重篤5疾患
「一過性・再発性」が特徴の病態を考える
11 心電図正常のACSを見抜くための胸痛レッスン
胸痛で受診する患者の原因は筋骨格系のことが多い
筋骨格系疾患鑑別のさらなる手がかり
胸膜疾患とACS/心筋梗塞の鑑別ポイント
心筋梗塞による痛みは左肩だけとは限らない
胸痛のOPQRST総まとめ!
第6章● 初心に戻って考える編
12 関節痛ってホントに悪ですか?
「病を診ずしてヒトを診よ」の意味
血管や膜により物質の透過性が違うのはなぜ?
一過性・再発性の病態のおさらい
免疫システムから読み解く自己炎症性疾患
13 腹痛ってホントに悪ですか?
その腹痛,どちらがより重症に見える?
内臓痛の特徴,胃と胆嚢の許容量
第7章● めまい編
14 眼振所見が教えてくれる耳石のキモチ
BPPVに紛れ込む危険なめまい
平衡感覚のメカニズムを知ろう
患者はどんな症状を「めまい」と表現するのか
自信をもってBPPVを診るための4ステップ
めまいを理解するためのカラダの仕組み
15 最も多いめまいBPPVの“病態生理”がまるわかり!
BPPVを知るには半規管の角度を知ること
一からわかるDix-Hallpikeと後半規管型BPPV
解剖生理がわかればEwaldの法則はカンタン
16 絶対に帰してはいけないめまい
中枢性めまいの診断が難しい2つの理由
小脳が障害されるとどんな異常が現れる?
小脳疾患によるめまいの特徴
中枢性めまいを疑う経験的ヒント
脳幹障害によるめまいに関わる前庭神経核
第8章● 関節痛編
17 「関節が痛い!」診断に結びつく病歴聴取の秘訣は“炎症”と“P”にあり
その痛みは関節痛か,それとも関節周囲の痛み?
関節痛を考える…の前にそもそも“炎症”とは?
○○炎と聞いたら,○○の機能を考えてみよう
関節炎の評価に可動域チェックは欠かせない
関節痛と関節周囲痛の見極めにはProvocative
18 免疫システムから迫る関節痛の鑑別,病歴の違い
その発症は急性か,慢性か
突然発症の関節痛から考えられる病態は?
関節痛に関わる免疫の仕組みをおさらい
リンパ管からリンパ節へ,さらにリンパ球の抗体産生
痛風の病態と臨床でのポイント
急性発症・自然軽快の病歴では自己炎症性疾患を特に想起しよう
19 結晶性関節炎と感染症による関節痛の特徴をつかむ
軟骨から迫る偽痛風の病態,リスク因子
感染性関節炎は単関節炎? 多関節炎?
冒頭の症例を診断する手がかりはどこに?
第9章● 発熱編
20 不明熱は本当に不明?発熱+αを探すようにしよう!
不明熱の定義,いつ作られたか知っていますか?
発熱は最もよく遭遇する症候だが最高の脇役
発熱患者を診るときの5つのポイントとは?
経過が長い症例では,本来の病態が“修飾”されていないか疑おう
症状が複数存在するなら,「疾患特異性」に注目しよう
肩こり=痛み。OPQRSTをとろう!
不明熱と思っても,基本は丁寧な病歴聴取
21 敗血症とSIRSの病態から学ぶ発熱+αの探し方
感染症では発熱の数日前から脈が速くなることも
発熱と脈拍がキーワードの病態,敗血症
SIRSの基準はもう不要? qSOFAの意外な落とし穴
高齢者で感染症を疑ったら想起すべき3つの臓器
脱水が肺炎の重症度と関連するのはなぜか?
浸潤影がない≠肺炎ではない
22 不明熱+αの症状が出やすい病態とそうでない病態の捉え方
不明熱の経過を追うとき,2つ注意しよう
IEとスティル病からみる不明熱のタイプ
不明熱+αの症状が目立つ疾患,目立たない疾患
症状に乏しい不明熱では痛覚がない or 予備能が高い組織に注目しよう
動脈の種類によって異なる血管炎の特徴
23 病原体の特徴から迫る不明熱になりやすい感染症
不明熱となりやすい感染症の共通項
ウイルスと宿主との攻防戦
不明熱になりやすいヘルペスウイルス
細胞内増殖する細菌は不明熱を起こしやすい
第10章● 心不全編
24 病態生理から心不全を定義する
心不全と切り離せない浮腫のおさらい
心臓のポンプ機能が下がると何が起きる?
左心不全と右心不全の病態生理
ヒトの体液量を調節しているのは心臓と腎臓
夜間の呼吸苦は心不全の重要なサイン!
日頃のストレス・睡眠不足を予防しよう
25 体液量のモニター係,腎臓の病態から心不全を定義する
体液量増加に働くホルモンたち──臨床への活かし方
糸球体濾過量を調節するメカニズム
心不全と血圧の深い関係
心不全におけるRAASの分泌と調整
心不全のバイオマーカーANP,BNPの正体とは?
心不全の定義のまとめ
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書籍情報
- ISBN:9784840752954
- ページ数:434頁
- 書籍発行日:2020年9月
- 電子版発売日:2020年12月2日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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